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キラ

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第二章

「それに顔もいいからな」
「こうしてなのね」
「着てもらってるんだ」
 店で一番のキラをというのだ。
「そしてこれからも着てもらうからな」
「わかったわ、じゃあこれからもね」
「着てもらうぞ」
「ええ、ただね」
「ただ??」
「一つ思うことは」
 ここでだ、こうも言ったジツェンだった。
「今私が着てる服かなりいい服よね」
「そのクシュラタ何だと思ってるんだ」
 その織物はというのだ。
「王家のだろ」
「王家伝来のね」
「それだけに違うからな」
 それこそというのだ。
「そうよね、こんないい服ないわよね」
「キラの中でもな」
「それだけに値も張るし」
 つまり高いというのだ。
「それこそ。ただ」
「ただ?」
「値が張るから」
 ジツェンが言うのはこのことだった。
「私が着てる服みたいなのは売れないでしょ」
「だから看板なんだよ」
 カルマの返事は実に明快なものだった。
「売れない位高いからな」
「私がこうして着てるのね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「クシュラタ、それもその織り方と生地になるとな」
「それこそよね」
「お金持ちじゃないと買えないからな」
「爵位持ってる人でも相当な人でないと」
「買えるものじゃない」
 こう言うのだった。
「そいじょそこいらの人がな」
「それじゃあ若し売れたらどうするの?」
「決まってるだろ、その売れた金でな」
「もっといいキラ買うのね」
「そうだ」
 これまたはっきりとだった、カルマは娘に答えた。
「それでまた看板にするぞ」
「私が着て」 
 ジツェンが学校から帰ったら彼女が着てだ、いない時は母であり娘にそっくりで童顔のサリーが着ているのだ。兄がいるが彼は店の手伝いだ。
「そうしてよね」
「そうだ、わかってるじゃないか」
「わかってるけれど高いから」
 その黄色いキラはというのだ、今着ているそれは。
「売れないわよ」
「そうだろうな、やっぱり」
「けれど若し売れたら」
「もっといいキラ買うからな」
 こう言うカルマだった、だが彼もそのキラが売れるとは思っていなかった。しかしその中で。
 ジツェンは学校でクラスメイト達にだ、こんな話を聞いた。その話はというと。
「国王ご夫妻日本に行かれてね」
「凄い歓待受けたそうよ」
「あっちの国でね」
「ブータンのことが注目されてるみたいよ」
「あれっ、そうなの?」
 学校でもキラだ、この服を着ることが決められているからだ。だが今は質素な緑のアクセサリーも付けていないキラを着てだ、ジツェンは友人達に応えた。 
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