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オズのカエルマン

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第九幕その五

「参ったなあ」
「よりによって出口のところにいるなんて」
「もう少しなのに」
「あんなところにいられたら」
「どうしようもないじゃない」
 こう言うのでした、そして。
 カエルマンもです、困った顔で言いました。
「これは厄介だね」
「このままだと」
 魔法使いも弱り果てたお顔です。
「森を出られないよ」
「それじゃあ」
 ケーキがです、眠り薬をかけたクッキーの袋を自分の手に持ったうえで言いました。
「これを使いますか」
「そうだね、その時だね」
 魔法使いもケーキのその提案に頷きます。
「今は」
「それじゃあ」 
 ケーキがクッキーの袋を開いてその中身を熊に投げようとしました、ですが。
 ここでふとです、神宝が言いました。
「あれっ、何か」
「何か?」
「どうかしたの?」
「はい、あの熊ですけれど」
 神宝は熊を見つつ言うのでした。
「何か右の前足を見ていますよ」
「あっ、確かにね」
 カエルマンも言われて気付きました。
「何かいつもね」
「あれはどうしてでしょうか」
 その熊を見つつです、神宝はまた言いました。
「右の前足に」
「そうだね、その掌を見ているけれど」
「前足の掌に何かあるんじゃ」
「そこに不機嫌の理由があるのかな」
「そうじゃないでしょうか」
「若しそうなら」
 どうかとです、カエルマンはここで言いました。
「あの掌をどうにかしたら」
「不機嫌なのもなおりますよね」
「そうだね、確かに」
「眠らせてもね」
 魔法使いも言いました。
「その場をやり過ごしただけでね」
「熊は不機嫌なままですよね」
「そうだね、森の皆は熊に怯えたままで」
「問題の解決にもなりませんし」
「ここはね」
 それこそと言う魔法使いでした。
「森の皆の為にも」
「熊の機嫌をなおせれば」
「それがベストだよ、それなら」
 魔法使いはカエルマンにもお顔を向けて言いました。
「あの熊に聞いてみるか」
「それがいいね」
 カエルマンも賛成して頷きました。
「ここは」
「そうだね、それじゃあ」
「僕が聞くよ」
 カエルマンは微笑んで自分から申し出たのでした。
「彼にね」
「君が行くんだね」
「それでいいかな」
「僕が行こうと思ったけれど」
「いやいや、仕事がしたくてね」 
 カエルマンはこのことは悪戯っぽくジョークめかして言いました。この辺りはこの人のユーモアと言うべきでしょうか。
「行かせてもらうよ」
「それじゃあ」
 魔法使いとお話してでした、そのうえで。
 カエルマンは熊に少し歩み寄りました、急に襲われても大丈夫な様に近くまでは寄っていません。そこからです。 
 熊にです、こう声をかけました。 
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