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艦隊これくしょん!平和な鎮守府の日常?

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提督、刺繍をする

「提督っておタバコをお吸いになってるのですか?」
「んっ、偶には良いかなと思ってね」

久しぶりに秘書艦の仕事が回ってきて気持ちが乗っている榛名が出来上がった一部の書類の整理を終えて執務室に戻ってみるとこの鎮守府の提督としては余りに似合っていない煙草を口に銜えながら煙を吹かしていた。

「前は結構吸ってたんだけどね、今は2ヶ月に1本ぐらいのペースになってるかな」
「そうなのですか?何故お止めになったのは健康の為ですか?」
「んっ~まあ結果的にはそうかな?」

結果的という言葉に首を傾げる榛名、そんな彼女を見た提督は中半ばまで吸ったタバコを一度深く吸った後灰皿に押し付けた。

「こうやって吸ってた時に吹雪がタバコを吸ってると早く死んじゃうって言って電ちゃんに取り上げられた事があってね。その時、電ちゃんが私と長く一緒にいたいって泣いてさ、それを見て少しずつ止めて、何れは吸うのを止めようと思ってのさ」
「まあ」

それを聞いて電の可愛らしい理由に少しほっこりする榛名、電だけに言える話ではないがこの鎮守府の艦娘たちは提督の事が大好きである。健康に気を使っているのは鎮守府にとっても良い事である。

「まあ煙草をあと少しで止められる所まで来たお陰か、身体の調子が良くなってきてね。この前に2分ぐらい潜っていられたし」
「う、海に行かれたんですか!?」
「まあね朝早く。その時にちょっと泳いだんだよ」
「そ、そうなんですか……」

海で泳いだという言葉を聞いた榛名は何処か羨ましげな表情を浮かべていた、提督自身が其れなりに多忙であり執務室ぐらいでしか共に居られない事もあってか一緒に出かけたかったのかもしれない。

「ならさ榛名、一緒に今度泳ぎにでも行く?」
「えっ!?宜しいのですか!?」
「私はいいよ、時間作っとくからさ」
「あはっはい!光栄です!!」

先程の表情から一変してきらきらと顔を輝かせる榛名に提督も笑みを浮かべた、自分で誘った事で喜んでもらうと自分まで嬉しくなってしまう物だ。そんな時

「提督ー!失礼するネー!」
「失礼するぜ!」

執務室へと入ってきたのは金剛、そして木曾であった。

「おうどったの二人とも」
「提督ー確か裁縫がSpecialtyって言ってたよネー?」
「まあ裁縫は得意だけどどうしたの?」
「俺のマントがちょっと解れちゃってよ、俺はそっち方面苦手だし頼めないかなーって」
「おう任せんしゃい」

木曾からマントを受け取り引き出しの中から裁縫道具が入ったケースを引っ張り出して糸を針に通し、直ぐにマントを縫い始めた。

「(チクチクチクチク)この分だと15分もあれば出来るよ」
「おおっ!さすがだぜ提督!」
「本当に提督のSkilって凄いヨー」
「な、なんだか女性として負けた気が………」
「気にし過ぎだっての、どうせなら刺繍でも入れておこうか?」

刺繍という単語を聞いた木曾の瞳はキラキラと輝き始め、金剛は首をかしげた。

「ヘーイ提督ー」
「へーイ金剛さーん如何したましたーカー?」
「シシュウって、ナンデスカー?」
「簡単に言えば針と糸でやる装飾の事さ、糸を使って文字を入れたり絵を入れたりするのさ。まあ私は文字を入れることぐらいしか出来ないけどね」
「そんな技術があったんですか……」

純粋に感心する金剛は刺繍に興味を持ったようだ。

「んで木曾さんどうする?」
「勿論頼むぜ!"木曾"って入れてくれよ!」
「ついでに改二って入れとこうか?」
「マジか!?頼むよ!」
「うし、それじゃあ1時間ぐらい掛かるからそこに座って待ってな」

木曾は勢いよく頷き来客用のソファに腰掛ける、提督はケースから金色の糸を新しく取り出す。ほつれを直すと直ぐに刺繍に取り掛かった。かなり手馴れているのか凄い速度で縫われていく刺繍の光景にそれを見ていた榛名と金剛は目を丸くした。

「縁は金でいいとして、中は木曾さんの目に因んで碧にしようかな?え~っと確か碧色の糸が……あったあった」

中を縫う用の糸を見つけるとすぐにそれで名前を入れていく提督、木曾は完成を今か今かと待ち望み、金剛姉妹はその光景に感動している。

そして、あっという間に1時間がたった。

「うし出来た!」
「おおおおおっ!!!すっげえカッコいいじゃないか!!!それに綺麗だ!!!」

完成したマントを木曾に渡すと今まで以上の目を輝きを放つ木曾。マントに入れられた美しい金と碧の刺繍、"木曾改二"と入れられたマントは今まで以上に彼女専用の風格を出し彼女の凛々しい雰囲気を今まで以上に引き出しているようにも見えた。

「おおおっ!凄い気に入ったぜ!早速姉さんたちに見せてくる!!」

嬉しそうにマントを羽織りそのまま執務室から駆け出していく木曾を見送りながら裁縫道具をしまう提督。

「やれやれ、刺繍なんて久しぶりだから目が疲れたな。金剛さん、紅茶淹れてくれない?」
「紅茶なら任せてくだサーイ!」

金剛が張り切って紅茶を入れてくれている中、鎮守府中に提督の刺繍の凄さが知れ渡り、刺繍の要望が殺到するのであった。 
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