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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇

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31部分:第三十一章


第三十一章

 それまで動くことのなかった美女達だったが。ここでふと目を覚ましたのだった。
 そうして口々に。気付いた様に声をあげるのだった。
「あら、ここは」
「私は一体」
「どうしたのかしら」
「さて、この美女達だけれど」 
 沙耶香は気付いた彼女達を見ながら妖しい笑みを浮かべるのだった。そうしてそのうえで楽しげな言葉を出すのであった。
「何人か。それとも全員か」
「御相手にというのですか?」
「いいのではなくて?戦いは終わったし。それに」
「それに?」
「今は夜よ」
 速水に応えるその声はさらに微笑むのだった。
「わかるわね。それで」
「お好きですね。また」
「美しいものは好きよ」
 こう応える沙耶香だった。
「だからね。今から」
「それでは私はです」
 一歩沙耶香から離れたうえでの言葉だった。
「これで」
「帰るというのね」
「ホテルに戻ることにします」
 己の宿泊しているそのホテルにというのである。
「ですからこれで」
「そうなの。それで休むのね」
「はい。ではまた明日」
 こう沙耶香に告げて足を門に向けていた。その身体もだ。
「御会いしましょう」
「一晩でこれだけの相手は難しいかしら」
 既にそちらに考えを及ばせている沙耶香だった。既に美女の一人に近付いている。
「さて、何日かけようかしら」
「今から楽しみで仕方ないというのですね」
「その通りよ」
 そのことを隠すこつもりもない沙耶香だった。
「仕事の後のお楽しみね」
「そうですか。それでは私は」
「もう日本に帰るのかしら」
「明日モンテスさんと二人でここに来ますので」
「そう。それで終わりなのね」
「そうです」
 速水にとってはそれで終わりだった。そのことを変えることはない。そうして本当にその扉に手をかけてであった。宮殿を後にしようとする。
 その時にだった。沙耶香にこの日最後の言葉を告げた。
「ではお休みなさい」
「ええ。それではまたね」
 別れの挨拶を終えた沙耶香は早速近くの三人の美女に声をかけるのだった。一人はブロンドの背の高いゲルマン系を思わせる美女、一人は浅黒い肌に黒い髪のあだっぽい小柄な女、最後の一人は赤い髪と黒い目の気の強そうな美女であった。その三人に声をかけたのだ。それぞれタイプの違う三人にだ。
「いいかしら。貴女達で」
「えっ、私ですか」
「私にですか」
「そうよ。貴女達よ」
 その三人に妖しく、それでいて美しい笑みを浮かべての言葉であった。
「まずは貴女達と楽しみたいわ」
「はい、それでは」
「御願いします」
 その三人の美女達が沙耶香の手に誘われそのうえで二階に上がる。そうしてある部屋に入るのだった。彼女にとって夜ははじまったばかりであった。
 次の日の朝だった。沙耶香は絹の天幕に覆われた白いベッドの中にいた。その中で一糸まとわぬ姿で同じく美しい裸体を見せている美女達に囲まれていた。
 ブロンドの美女に己の身体を絡みつかせ黒髪の美女の唇を吸っている。そうして残る赤髪の美女の髪を丹念に愛撫するのだった。
 その中で金髪の美女が彼女に言ってきたのだった。
「朝になってしまいましたね」
「そうね」
 今気付いたというような声だった。
 
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