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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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女子(?)の時間(2016/03/31 一部加筆修正)

 
前書き
若干のスランプで何回も執筆しなおしていたこともあり、更新が遅れました。すみません。

あと、本編内容は女子の時間とはいいがたい内容です。そして、もう1つ。

今話で法田勇治は犠牲になりました。(出番的な意味で) 

 



【視点:樹】



普久間殿上ホテル、5階展望回廊を突破した俺達――出撃組を待っていたのは1階ロビーに次ぐ難所――6階テラス・ラウンジだった。

モバ律情報によると、このテラス・ラウンジは屋内がナイトクラブ風の店になっている上、客の半数以上は店内で違法ドラッグを平然と使っているそうだ。

客数も殆どが10~20代とはいえ多く人目に付き易い上、7階より上のVIPフロアに繋がる階段が店の奥にある。手取り早く階段に辿り着く方法は、階段のすぐ側にある6階屋外と繋がる裏口を使うことだが、当の裏口は鍵が掛かっていて使用不能。

しかも、VIPフロアに繋がる階段である以上、その前には見張りがいることは容易に想像できる。例え裏口の鍵が開いていても、見張りに気付かれず突破するのは不可能。

なら、どうするか?俺達の取れる手段は限られる。1つ、見張りをどうにかして階段&裏口近くから引き離す。2つ、VIPフロア利用客に成りすまし、擦れ違いざまに見張りの運動中枢である小脳にショックを与える打撃を加え、体を強制的に硬直させる。

まぁ、どちらの手段を取るにしても店内への潜入は必須。特に後者に至っては炎系暴風族(ライダー)の協力が必要不可欠となる訳なんだが……。

俺がどうやってこの難所を突破するか思い悩んでいると、片岡が出撃組の女子を代表して口を開いた。


「先生や男子はここでちょっと待ってて。私達女子が店に潜入して裏口を開けるから」
「いや。ちょっと待てよ、片岡。裏口開けるって言っても、VIPフロアに繋がる階段が近くにあるんだぜ。見張りの1人や2人いると想定すべきだろ。女子だけで如何にかできる問題じゃねぇよ」
「けど、全員で行って正面突破なんてできないでしょ?そんなことすれば騒ぎになって、脅迫犯に気付かれちゃうし」
「かと言って女子だけに行かせるのは危険だ」
「女子が危険、じゃなくて神崎さんが危険の間違いでしょ?イッキ君の場合」
「変な茶々を入れるな、茅野。兎に角、女子だけで行くなんて俺は反対だ。ナイトクラブなんて所を利用する客――特に男の大半は女客をお持ち帰りしようとするカスって相場が決まってる」
「流石にそれは偏見が過ぎるんじゃない?」
「いや、そんなことはない!客の大半が違法ドラッグキメてる様なナイトクラブなんだぜ!」
「けど、どれだけチェックが厳しい所でも若い女性客にはチェックが甘かったりするものなんでしょ?1階ロビーでビッチ先生が利用客として怪しまれなかったみたいに」
「だからと言って―――」
「感染組の皆を助ける為にも一刻も早く私達は10階に辿り着かなきゃいけないの。こんな所で言い争ってる暇はないわ」
「………」


片岡の言う通り、俺達の肩には9人の命が掛かっている。そのことを考えると、俺は何も言えなくなってしまった。

その後、俺の発言に同調した渚が男子代表として女装して女子達に付いて行くことになり、片岡が俺を含む残留男子組に屋外裏口前で待機している様に告げ終えると、女子組は全員で6階屋内へと入って行った。



【視点:有希子】



7階VIPフロアへと繋がる通路を確保する為、出撃女子組(+女装男子1名)だけで6階テラス・ラウンジ屋内に潜入した私達の視界に入って来たのは、何かのイベントが開催しているゲームセンターの様な光景だった。

端的に説明するなら10代から20代を中心とした世代の人達が店内に大勢いる光景です。ナイトクラブというものが良く分からないこともあって、私は集客率の高い24時間営業のゲームセンターの様だと思ってしまいました。

当然といえば当然ですが、店内には40代以降の人達も若い世代の人達程ではないものの大勢います。そういった人達はスーツ姿でロヴロさんの様な裏社会特有の雰囲気です。

いいえ。この場においては雰囲気を読まなくても判断できます。何故ならスーツの人達は例外なくアタッシュケースを持っていて、店の隅で何かの取引を行っているからです。きっと麻薬等の取引をしてるんでしょう。

そういった人達に絡まれない様にする為、私達はできる限り目立たない様に遊び慣れている様に振る舞いながら目的地に向かうことにしました。すると―――


「ねぇ。君ら、変わったインラインスケート履いてるけど、何の集まり?どこから来たの?あっちで俺と飲まねー?何でも奢ってやンよ」


私達の最後尾を歩いていた渚君が、私達と同年代っぽい男の子に声を掛けられてしまいました。かなり軽そうな――チャラ男っていうのかな?そんな感じの男の子です。

私達の大半が冷めた目を男の子に向けますが、男の子はそのことに気付きません。顔が赤いし、酔っ払ってて気付かないのかな?私がそんなことを考えていると―――


「はい、渚。相手しといて!」


片岡さんがあっさりと渚君を生贄にしました。流石に少し酷いとも思ったけど、私も相手をしたくなかったので何も言いませんでした。渚君、ごめんなさい。

そして、私達が渚君を犠牲にして目的地まで進んでいると、今度は2人組の男性が声を掛けてきました。今度は同世代ではなく20代の2人組です。


「よう、お嬢ちゃん達。皆可愛いね。今夜、俺らと遊ばねぇ?」


しかも、声を掛けて来た2人組は服装こそラフなものですが、一般人には考えられない大きな傷が顔に付いています。どう考えても裏社会の関係者としか思えません。

流石の片岡さんもどう対応すればいいのか分からず困惑しています。まさか、私達みたいな女子中学生がこんな危なそうな人達に目を付けられるなんて、片岡さんだけでなく全員が想定していませんでした。


(一体どうすれば……)


私がそんなことを考えていると、私達の背後から急に現れた第三者から声を掛けられました。


「おい、兄ちゃん達。うちのお嬢と学友にちょっかい掛けるとか、いい度胸してんな」
「あ゛ぁ゛!何だ、テメ……!?」
「俺らを講談組の者と知ってて……!!?」


私達の背後から現れたのは、オールバックのスーツ姿に長ドス、アタッシュケースを持ったイッキ君でした。


「へぇー、講談組ね。その講談組の兄ちゃん達がうちのお嬢達に何の用があるんだ?」


イッキ君がヤクザの2人組にポケットから取り出した代紋を見せながらそう告げると、2人組は顔から血の気が引き、真っ青になりました。


「そ、それは武闘派で有名な集英組の代紋!」
「いくら同業とはいえ、うちのお嬢とお嬢の学友にちょっかい掛けてタダで済むとは思ってねぇよな?講談組さんよぉ」
「す、すみませんでした!失礼します」


イッキ君が睨み付けながらそう告げると、2人は逃げる様に私達の前から去って行きました。いいえ。2人組だけでなく、周囲にいた男性客も私達から距離を取っています。どうやら、私達は完全にヤクザの娘とその学友と思われているみたいです。


「……イッキ君、ありがとう。助かったわ」
「どういたしまして」


そして、私達の周囲から他の利用客がある程度離れた所で、片岡さんが私達を代表してイッキ君にお礼を言った。


「さっきのイッキ君、威圧の仕方とか本物のヤクザみたいだったよ。本物に会ったことなんて無いけど」
「いや、本物に会ったことも無いのに適当なこと言うなよ。茅野」
「っていうか、そのスーツと長ドス(?)、アタッシュケースはどうしたの?」
「ああ、これ?お前らが心配で俺も店に入ったんだけど、丁度その時にトイレに行こうとしてるヤクザのおっさんがいてな。トイレで襲撃して剥ぎ取ったんだよ。
ちなみにアタッシュケースの中身は麻薬だったけど、中身は全部ヤクザのおっさんと一緒にトイレの個室に置いてきた。今、この中に入ってるのは俺が着てた服と炎の玉璽(レガリア)だ」
「アンタは追剥か!!?」
「安心しろ、岡野。背後から一撃で仕留めたから顔は見られていない。それに襲撃した相手も良かった」
「え?それってどういう意味?」


矢田さんがそう尋ねると、イッキ君はポケットから1枚のカードキーを取り出しました。


「襲撃した相手、どうやらVIPフロアの利用客だったみたいだな。VIPフロア専用のICカードキー。無論、モバ律にも本物か確認済みだ。
これさえあれば見張りを素通りできるし、通り過ぎる時に運動中枢である小脳にショックを与える一撃を加えて、立った状態で気絶させることもできる」
「………何か、私達が潜入した意味って無かったね」
「……まぁ、意味無くはないんじゃないか?ナイトクラブに1人で入って1人で戻るより、女連れて戻る方が自然な感じで怪しまれないだろうから、カモフラージュの為に2人くらい一緒について来てくれると助かるし。
ってか、俺の予想通りお前らお持ち帰りされそうになってただろ!あの2人組だけでなく、他の男性客も狙ってたっぽいし。お前ら、自分が男の標的にされ易い整った容姿をしてるって自覚しろよな」
「………イッキって、よくそんなこと恥ずかし気もなく言えるよね」
「うん。有希ちゃんって立派な彼女がいるのにね。もしかして、天然ジゴロ?」
「んな訳あるか。ってか、可愛いものを可愛いと言って何が悪い。お前ら女子だって可愛いゆるキャラとか見たら、普通に可愛いって言うだろ?」


……イッキ君、それは可愛いの方向性が全く違うと思います。他の皆も私と同じ思いみたいだけど、ツッコミするだけ無駄とも思っているみたいです。


「ところで渚の姿が見えないけど、あいつはどうしたんだ?」
「店に入ってすぐ、さっきの2人組とは違う同年代の男に声掛けられて、その男の子の相手をして貰ってる」
「……渚を真っ先に生贄にするとか、お前らも何気に酷いな。………まぁ、いいか。取り敢えず、俺が見張りを如何にかしとくからお前らは渚と合流して、階段近くの店内で待っててくれ。あっ、有希子と矢田はお持ち帰り役として付いて来てくれると助かる」
「何で私なの?」
「ビッチ先生から接待術や交渉術、演技力が高い上、意外と度胸もあるって聞いたことがあるから、お持ち帰り役を無理なく自然と熟せそうだと判断したんだけど、それがどうかした?」
「あっ、そういう理由で選ばれたのなら別にいいや」


矢田さんはイッキ君の話を聞くと、安心した顔で自分に与えられた役目を了承した。もしかしたら、余り良くない意味で選ばれたと思ったのかもしれない。

この後、私達は7階VIPフロアへと繋がる2つ目の店の出入り口へと向かい、イッキ君の作戦通り見張りの店員を立ったまま気絶させることに成功した。

そして、他の男子組も裏口から無事侵入することができた訳なんだけど、この時店内に残っていた片岡さんの方では一悶着あったみたいで、呼びに行った時には片岡さん達が若干疲れた様な顔をしていた。

私と矢田さんが離れた僅か数分の間に一体何があったんだろう?


 
 

 
後書き
今回の話でイッキは長ドス(白木拵の長刀:本物)をゲット!この長ドスは鷹岡戦で使う予定です。(笑)

あと、本編では触れていませんがイッキに追剥ぎされたヤクザさんは集英組の若頭だったりします。
(不意打ちでイッキにボコられ、翌朝まで気絶することになってしまったんですが……(笑))

また、本編に登場した講談組のヤクザさんのモデルは、エア●ギア原作に登場したイッキの先輩で先代ガンズの幹部だった牧さんとかがモデルだったりします。

見張り店員の立ったままの気絶状態は、アイオーンにやられた黒炎さんの更に酷い状態とでも思って頂けるといいです。

さて、次は少し過程を飛ばして銃使いの話に突入するかもしれません。その点をご了承して頂けると幸いです。

それではまた次回お会いしましょう。 
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