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雷神†無双

作者:ペペンヌ
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うんちょーさん、雷神を知るの巻

 
前書き
関羽さん視点です。世界観違うだろってレベルのオリシュは関羽さんから見てどんな存在か。 

 
かーんと安っぽい音を立てて武器が飛んでいく。
青竜偃月刀、わたしの半身。それが飛んでいった。これは現実なのか?
認めたくない。認められない。武は私の自信だった。主に誇れる、わたしの唯一の。

「俺の勝ちです。」

喉元に突きつけられた平凡な槍。おそらく量産品だろう。
わたしに興味を無くしたのか。すぐさま背を向けて去っていく彼の姿を見て、ようやく現実を受け止められた。




わたしの名は関羽、字は雲長。桃香さまの一の家臣。義妹たる張飛…鈴々とともに彼女に仕えてきた。
みんなが笑って暮らせる世界。それはわが主の願いでもあり、わたしたちの願いでもあった。

100を超える賊との戦いもあったが、わたし達は勝ってきた。
しかし、何万もいる悪鬼の中から100を倒しても何も変わらない。
個人でできることに限界を感じたわたし達は義勇兵をつくり、この地を平和に導くことを決めたのだ。

「でもどうやって集めよう?」

「わからないのだー。」

うんうんと姉妹で唸ってみたもののいい案は浮かばなかった。
わたしと鈴々はそれなりに名の通った武人であることを自負しているが、それでも何人集まるだろうか?
まず人を養う資金もない。土地がない。ないないずくしだ。
桃香さまの理想は尊いものだがわたし達にはそれを実現させる力がないのだ。

そんな時だった。あの男、絶郎殿に会ったのは……



「何者だ、貴様ら!賊の一味か!」

今思うとあれはやつあたりだったのだろう。
いつもならいきなり怒鳴りつけたりしない。あとで謝罪したが、本当に許してもらえたどうか?

200人いるかいないかの集団。
わたしはそれを賊と決めつけ、怒鳴りつけた。巨漢である次郎殿を勝手に賊だと思い込んでしまったのだ。

「我々は賊ではない。義勇兵だ。」

「何?」

てっきり大男が返答するものだと思っていたが、答えたのは別の男だった。
小さい男だ、素直にそう思った。自分は女の中では長身であるが、その男はわたしよりも小さい。
大男の隣にいるせいか、余計に小さく見えた。もしかしたら成人してないのかもしれない。
くりくりとした大きな目が特徴の小柄な少年、それが第一印象だ。

少し冷静になったわたしはその一団をまじまじと見つめた。
綺麗に整列され、どこか希望に満ちた顔をする彼らはとても賊に見えなかった。

一団の中から女性が現れ、自分たちが各方面の村から結集された義勇兵であることを告げられ
自分が単なる勘違いで言いがかりをつけたことを理解した。恥ずかしい。これでは単なる武辺ではないか。
名を名乗り、謝罪をしようとしたところ彼が馬から落ちてしまったので結局すぐには謝れなかった。
しかし何故落ちたのだろうか?



「我々は共に立ち上がった同志です。遠慮ならずにどうぞ。」

しばらくしてから絶郎殿が回復したと聞いたわたし達は店にまねかれ、その…何と言うか食事を奢ってもらった。
先ほどの無礼な振る舞いにも関わらずここまでしてくれた御仁に警戒心など持てるはずがない。
いや最初からする必要などなかったのだ。
聞けば彼は滅びかけた村を再興し、飢えている人々を救ってきたそうだ。
人を養う費用と土地、そして名声を得ている彼に尊敬念を抱いてしまったほどだ。

(世の中、捨てたものではないな。)

暴政を敷く太守や、弱い人間が集まりさらに弱い人々を襲っていくこの地で桃香様の様な方がまだいたとは……感動のあまりに目頭が熱くなってくる。
恥知らずにも追加の注文する鈴々が視界に入ったことで涙を堪えることが何とかできた。
何をやっているのだ貴様は。





200人ばかりの義勇兵を連れたわたし達は公孫瓉殿に謁見することに成功した。
大勢の兵を率いていることもあるだろうが、わが主と旧知の仲であることも大きいだろう。
それから数日たったある日、さっそく賊の集団が領の集団が現れたのだ。

早速、賊の討伐に出た我々だが絶郎殿の側近である次郎殿がこんなことを言い出したのだ。

「我々が一当てして参りましょう。」

「何?」

話はこうだ、まず正規兵には見えない絶郎隊が賊の目の前に現れぶつかる。
数が少ない集団を見たら間違いなく油断するから、前線を少し崩しワザと負けたように見せかけ完全に油断しきった賊を二つに分けた本隊で挟み撃ちにする。
どこか無理がある気がする…ぶつかる必要はないのではないか?しかし悪くない策だ。

「行けるのか?」

「我々は身軽です。いざとなったらすぐに離脱できます。」

「いや……しかしだな…」

しぶる伯珪殿。平気で捨て駒にする太守がほとんどだろうが、彼女はそれをしなかった。
しかし、成功すれば被害を最小限にして賊を討ち取ることができる。失敗しても被害は絶郎隊だけだ。
それから少しして、浮かない顔をしつつも何とか納得された。

鈴々やわたしを加えることも考えたが、要である兵を指揮する人間がいなくなってしまうとのことで
却下された。桃香様が行くとも言っていたが当然却下。結局、囮役は絶郎隊のみ。

「ご武運を。」

彼らが無事であることを祈るのみだ。




「関羽様ぁ!ぞ、賊の全滅を確認しましたぁ!」

「ファッ!?」

思わず奇声を発してしまった。
たしかに悲鳴やら奇声は聞こえなくなったが、それにしても信じられない。
早すぎる。敵は絶郎隊の数倍は確認されてたはずだ。それを全滅だと?

「これより、敗走した賊を捕えるようです。武器は捨てているそうなので、生かして捕えろと。」

「わ、わかった。すぐ行こう。」

一体、どのような策を使ったのだろうか?
後学のためにも、仕事を早く終わらせて絶郎殿に聞いてみよう。




「……彼らは策など使ってはいない。」

「何?」

賊の捕縛を終えたわたしは子龍殿に出会い、状況を教えてもらった。
どうやら伯珪殿がこっそり、絶郎達の近くに子龍殿を配置していたらしい。お優しい人だ。
だがどういうことだ?策もナシで一体どのようにやったのか。

「指揮官の絶郎殿が先陣を切り、雷光の如く槍を振るったかと思うと十数人の人間が吹き飛ばされたのだ。そしてそれに巻き込まれてさらに数十人がやられた。ほとんどの賊達が戦意を失ってしまったよ。」

静かに話しているものの、興奮しているのか一息ついた。
わたしも冷静でないのか指揮官が突っ込んで行ったことに何も言えなかった。

「それからだ。大男の…次郎殿と言ったか?彼が兵をまるで手足のように操り、賊に立て直す隙も与えずに叩きのめしたのだ。…あとは繰り返しだ。立て直しかけたところに絶郎殿が切込み、それの後始末を次郎殿達がする。…3度繰り返したあたりで賊はもう散り散りになっていたよ…」

「…とても信じられん。」

「私もだ。号令をかけるのも忘れ、ただ茫然としていたよ。…これでは将失格だ。」

だが彼女ほどの武人が嘘言うとも思えない。彼女の実力は本物だ。
それに捕えた賊達は顔真っ青にしながら逃げていた。我々を見るや「助けてくれ」と言った者もいる。
やはり真実なのか?やはり己の目で確認しないと判断できない。

「どこへ行く?関雲長。」

「たしかめに行く。」




これからの結果は言うまでもないだろう。



「商人達とは仲が良くてね。援助してくれる人もいるだろうし。補給面は心配ないだろう。」

「しゅ、しゅごいでしゅ…」

「あわわ…」

彼はいったい何者なのだろうか?
あの日、初めてとも言える惨敗を味わってからというモノの彼のことばかり考えてる。
武に長け、人望もある。さらに才能を見極める力もあるのか、彼女たちが智謀の持ち主であることも
見切ってしまった。

それにこの兵糧。数か月の行軍は可能だろう。
村を立て直したと言う話だが、これだけの量をすぐに用意したという事は豊かな村なのだろう。
そして多くの協力者。一体、どんな人生を歩んで来たのだろうか?

(いつか、ゆっくり話を聞こう。)

聞きたいことは多々ある。
そのためにもこの乱を早く終わらせよう、頼れる同志と共に。

 
 

 
後書き
何かカッコいい言い回しは無いものか…

あ、感想等お願いします。 
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