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炎の中の笑み

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第五章

「それは違いますね」
「そうだ、おそらくな」
「いつも通りですね」
「最後の最後で厄介なことになる」
「俺達の仕事はいつもそうですからね」 
 本郷は苦笑いになった、それはビールの苦さによるものではない。
「最後の最後で」
「奇怪な事件の結末は常に奇怪なものだ」
 役はアテの柿の種を食べつつ答えた、二人共シャワーを浴びて上はホテルのガウン、下は京都から持って来た寝巻きのズボンになっている。
「私達の仕事はな」
「そういうことですね」
「だからだ」
「一戦交えるか」
「相当なことは覚悟しておくべきだ」
「そうなりますね、まあいつものことって思えば」
 本郷は飲みつつ軽く言った。
「いいですね」
「そうなるな」
「はい、東京でも」
「この街は魔都だ」
 役は達観している目でこうしたことも言った。
「栄えているがそれだけにだ」
「闇も多いですね」
「昔からな。人以外の存在も多くいる」
「そして人から化けものになった奴も」
「多い」
 それが東京という街だというのだ。
「化けものは姿形じゃない」
「その心ですからね」
「心が化けもののそれになればだ」
 例えだ、姿形が人間であってもというのだ。
「化けものになる」
「俺達もそのことは散々見てきましたね」
「仕事でな」
「そうですね、人は化けものにもなります」
 その心次第でだ、そうなるものだというのだ。
 そしてだ、こう言うのだった。
「多分」
「そうだな」
「それも見ますか」
「覚悟しておこう」
 こう二人で話しつつだった、二人はこの夜は飲んだ。ただ高篠には連絡をしておいたので翌朝早くにだった。
 彼と歌舞伎町前で合流した、その周りにはだ。
 密かに私服の警官達もいた、その彼等も見てだ。
 二人は高篠にだ、こう言った。高篠もスーツだ。
「夜のうちにはですか」
「行かなかったんですね」
「はい、監視役はつけていましたが」
 それでもとだ、高篠は二人に答えた。
「夜は案外捕まらないです」
「起きてますからね、頭も身体も」
「だからですね」
「捕まえるならです」
 外はまだ暗い、月も見える。高篠はその白い半月を見上げてから二人に話した。
「こうした時間です」
「まだ暗い朝」
「この時間ですね」
「犯人は寝ています」
「そこを不意討ちして」
「そのうえで」
「昨日仕事に出ていれば違いました」 
 その時はというのだ。
「その時にお二人も呼んで、です」
「捕まえていた」
「そうしていましたね」
「それで私も警視庁に詰めていました」
 仮眠をしていたがそれでもというのだ。 
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