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ドリトル先生と森の狼達

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第五幕その七

「いるかどうか」
「いるんじゃない?」
「いや、いないよ」
 ここで動物達はこぞってネッシーについてお話しました。
「ネッシーはいるって」
「あんなのいないよ」
「ネス湖はあまり生きものが棲めない湖だよ」
「あんな大きな生きものがいる訳ないよ」
「一匹だけじゃいられないよ」
「最低でも二十匹はいるよ」
 その生物が存続していくには最低でもそれだけの数が必要なのです、このことは先生もよくわかっています。
 ですが今はです、先生は黙って動物の皆のお話を聞きつつ先に進んでいます。
「あんなところに何メートルもの生きものが何十匹もいたらいつも見られてるよ」
「ネス湖は海とつながっているから海から来てるんじゃないの?」
「近くにもそうしたお話があるじゃない、モラグとかいう」
「流木を見間違えたんじゃないの?」
「サーカスの象がお水飲んでたのを見間違えたんだよ」
「そもそもネッシーは恐竜じゃないんじゃない?」
「アザラシかもね、それか大きなお魚か」
 こうしたお話を皆でしますが。
 結局答えは出ませんでした、トミーがここで先生に言いました。
「あの、実際のところネッシーは」
「トミーはどう思うかな」
「いないかも知れないですけれど」
「否定しきれないね」
「見たっていう証言は確かに多いですし」
「偽の写真があってもね」
「他にも一杯写真はありますから。ただ」
 それでもというのです。
「ネス湖にはずっといないですね」
「僕もその可能性が高いと思うよ」
「じゃあ海から来た生きものですか」
「そうじゃないかな。海では不思議な生きものが多いからね」
「そうですよね。ですから」
「実際海に恐竜や昔鯨類、未知の生物もね」
「そうした生きものがいてもですね」
 トミーもしみじみとして述べます。
「不思議じゃないですね」
「人が今知っている知識はほんの少しのもので」
「そこから全てを判断してはいけない」
「科学でも生物学でもね」
「どういった学問でも」
「知っている知識で全てを決め付けることは学者のすることじゃないよ」
 先生はまたご自身の信条を語りました。
「そうしたものだよ」
「そうですね」 
 森の中を進みつつこうしたこともお話しました、そしてでした。
 森を先に先に進みつつでした。
 ふとです、先生は目の前に今度は穴熊を見付けました、その穴熊を見てです。 
 トートーは目を瞬かせてです、こう言いました。
「あれっ、穴熊だけれど」
「何かね」
 ポリネシアも応えます。
「違うわね」
「そうだね、狸?」
「狸さん達に似ていない?」
 チーチーとジップも応えます。
「そうした感じだね」
「イギリスの穴熊よりもね」
「ううん、本当にね」
「狸さんと見分けられないわ」
 ガブガブとダブダブも区別をつきかねています。
「注意して見ないと」
「わからないわ」
「うん、匂いもね」
「狸君達と似ているね」
 ホワイティと老馬はお鼻をくんくんとさせました。
「不思議なことに」
「同じ様な匂いがするよ」
「同じ森にいるから?」
「穴で暮らしているからかしら」
 穴熊も狸もとです、チープサイドの家族は考えました。
「だからかな」
「同じ様な匂いがするのかしら」
「これまで日本の狸さん達見たけれど」
「本当に穴熊さんと似てるね」
 オシツオサレツも二つの頭で穴熊を見つついぶかしむ感じになっています。
「違う生きものの筈なのに」
「似てるのがわからないよ」
「ははは、似てて当たり前だよ」 
 その穴熊君が笑ってです、いぶかしむ先生と一緒にいる動物の皆に言ってきました。それを当然と言うのです。 
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