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IS<インフィニット・ストラトス> 可能性を繋ぐ者

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"白式"

 
前書き
ちょくちょく出していく。そんな言葉を掲げたことが私にもありました

はいごめんなさい。しばらく更新放置してました...

ちゃ、ちゃんと続けますからそこだけは安心していただければ幸いです...

さて、今回でvsセッシー編終了。次でクラス代表決定です 

 
「お疲れクラルテ。やっぱりお前って凄いんだな」

「まあ、このくらいはな」

俺はピットに戻ってフェネクスを解除、そのまま近くにあったベンチに座る。一夏はすでにISを纏い出撃スタンバイをしていた

「それがお前の?」

「ああ。白式だ」

俺が戦っている間に無事、一次移行(ファーストシフト)を終えたらしく、先ほどとは打って変わり純白の機体となっている

「そっか。......うん、お前らしいな」

「俺らしい?」

思わず考えていることが口に出てしまったようだ。なんでもないと俺は一夏に向けて手をぶらぶらさせながら言う。一夏は首をひねり納得していない様子だが、千冬さんに呼ばれ発進場に白式を向かわせた

「一夏!」

篠ノ之さんが一夏に向けて声を掛ける。そのまま言葉を続けようとするが

「おう。任せとけ。行ってくる!」

全て言わずとも思いは伝わったようで、一夏は篠ノ之さんに向けてサムズアップする。そのまま右手に刀を持ち

「織斑一夏、白式行きます!」

アリーナへと飛んで行った






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

空に佇む二つの兵器

一方は青に染まり、少し顔を下げてなにかを考えている様子が分かる

そして、今まさに空に立ったばかりの方は白。何色にも染まっていない純白。剣を携え前を見据えているその姿はほんのわずか武士と重なっている



「来ましたわね」

「おう」

それだけしか言葉を交わさなかった。もうすでに試合は始まっている

一人は先程感じた違和感を拭うため、自分の価値観は間違っていないと証明するため

一人は約束を果たすため。勝ってくると誓ったのだ、言葉は交わさなくとも親友の想いは受け取っているのだから


ここに、幕は切って落とされた


初手はセシリアの射撃。ブルーティアーズの適正レンジはアウトレンジからの狙撃か長距離、中距離での射撃戦である。本来この形式での戦いは不利であるにも関わらずなにも言わなかった。なぜなら彼女は自分に絶対の自信を持っている。例えそれがクラルテによって揺るがされている今であっても、初心者かつほぼ初めての実戦と言ってもあながち間違いではない一夏に対して負けるイメージを持っていない

よってこの初撃、セシリアは相手に当たると思っていた。そして相手がバランスを崩した隙にさらに距離を取る算段だった。元々事前情報によると相手はこの一週間剣道などという児戯(・・)で戯れていただけと聞いていた。それならば射撃武器は使えないだろう。となれば相手のレンジはクロスレンジのみ。ミドルでもアウトレンジに当てはまるが、仮に相手が火事場の馬鹿力的なもので瞬時加速を使うとも限らない。なにせ相手はあの世界最強(ブリュンヒルデ)の弟、そのくらいは起こしても不思議ではない。しかし、引き金を引くその瞬間まで彼女の内には本当に当たるのかという不安が残っていた

方や一夏はブルーティアーズを視界に入れた瞬間からライフルの銃口と引き金にかかっている指先を常に意識していた。先の試合を見て思ったことはやはり自分に射撃戦などという器用なことは出来ないということ。姉に似たのか小賢しい真似ができないジ自分は相手を誘導するだの罠を仕掛けるだの出来ない。そういう意味ではこの白式はまさに自分を表していると考えていた。剣一つで道を開く。例え今はそれが叶わなくてもこいつと一緒ならどこまでも高みへ行けると思えるような。ただただ愚直に信じた道を突き進むと、こいつに触れた時に誓った想いを胸に乗せながら相手が動くのを待つ

二人の違いは、確固とした覚悟があるかないか。あやふやなまま放たれた一筋の光は、当たり前のように空に散った。初撃を織斑一夏は避けたのだ。想定していないことに対して人は耐性を持っていない。驚愕という隙ができたセシリアの動きは止まり、一夏はその隙を突いて相手に接近する。しかしセシリアも意地を見せて懐に完全に入られる前に射撃で牽制し距離を離す。一夏もそれを可能な限り避けながら剣の届く位置に届こうと前に進む

その様子を鑑賞している観客席からは戸惑いの声が上がっていた。それはそうだろう、なにせ初心者である一夏が代表候補生であるセシリアと接戦を繰り広げている。クラルテの時はアナハイム代表ということで納得はできたが、一夏の場合は疑う余地なくペーペーの初心者だ

これまでの動きを出来ているのはひとえにこの一週間の剣道のお陰だった。セシリアはそれを遊びと片付けていたが一夏からしてみればこの一週間でしっかり調整できていたのだ。彼は幼少の頃篠ノ之家が代々継いでいる篠ノ之剣道の門下生として稽古に勤しんでいた。ある時をきっかけにしばらくはその世界から距離を置いていたが、誘拐事件がきっかけで、いやこの言い方は良くないな。例え彼を助けたのが尊敬している姉であればこうはならなかったであろう。心の底で姉に心配をかけまいと思うのは思うだろう。それが織斑一夏の本質であるのは例えどのような道を歩んでも変わらない。しかし彼を助けたのは名も知らない、しかも同年代の男だった。そんな彼が繰り広げた室内戦闘、エアレイドは共に一夏の心に刻まれていた。憧れ、と言ってもいい。隔絶した存在であった姉ではなく、なにか身近なものを感じた(・・・・・・・・・)彼ーークラルテが助けたからこそ一夏はその後にもう一度篠ノ之流の技に足を踏み入れた。幸い彼が幼少期に取り組んだ技術は未だ微かに残っていた。故に姉が戻ってくるまでは基礎をもう一度固め直すことに集中し、さらに帰宅部ということが幸いしさらに熱を入れた。そして姉が帰ってきた後は頭を下げ、剣を教えてもらおうとした。最初は断られたものの、自分の意思を真摯に伝えこの一年間にしてきた集大成を見てもらうことで姉に認められ剣道、さらに篠ノ之流剣術を師範代である姉に教えてもらっていた。その努力は一夏を裏切らず、この場でフルに発揮されることになる

IS学園入学のゴタゴタで日課となっていた基本稽古が出来なかった分を箒との試合で取り戻し、久方ぶりの対人戦闘の勘を取り戻した一夏からすれば

(遅いな...。これなら千冬姉の一閃を避けるより楽だな)

一夏も剣の才能は確かに持っている。しかしそれは姉の織斑千冬と違い万能的に全てにある訳ではない。とりわけ彼は居合いに関してあまり才能がないのだ。そこは姉と似ていなかったのが残念らしい。だが、見切りに関しては姉以上に上手い

元々彼は目がいい。周辺視野しかり、瞬間把握しかり、動体視力しかり。さらに姉という別次元の実力を持つものと剣を合わせる内にまず大事なのは避けることというのを悟った彼は、他の何よりも見切りに重点を置いた。姉の攻撃は一撃必倒、躱せなければ戦うことすらできないのだ。そうして磨きに磨かれた彼のそれは一線級。体さえ動けばどんな攻撃であろうと見えているのなら避けられる

よってこの結果は必然。一夏の懸念はビットのみだった。しかしそれも先の戦いをみた結果相手を動かし続ければ問題ないという結論に至る。だから一夏はセシリアを追い続ける。距離を離され冷静になられたら確実にビットを使われる。何故かはわからないがちゃんと判断できていない今を逃せば勝てない、と

「届けええええええええ!!!」

一夏は願う。もっと早く、もっと遠くへ、もっと....。もっと!!!

一夏が一つの思いを追いかけているのに対してセシリアは戸惑いに溢れていた

なぜ、どうして。男のくせにどうしてそこまで素直な、なにも迷っていない純粋な目を、綺麗な目をしているのか

男は皆頼りなく、情けなくて、女である私達の下で頭を垂れしっぽを振るしか脳がない連中ではなかったのか

その前提が崩れていく。彼女の中で、この戦いの初めからあった違和感が膨れ上がる

そうして、セシリアはそれが何かを悟った瞬間に足が止まった。そうなれば必然、一夏の剣は届く

「ようやくわかりましたわ。わたくしは....」

「うおおおおおおおお!!」

一夏の剣が眩い光を放ち、セシリアのISを切り裂いた


『試合終了。シールドエネルギー両者ゼロにつき引き分け』 
 

 
後書き
.......あれ、なんか一夏君がはなから覚醒してるのは気のせいか...?

しょ、しょうがないんだ!!ニュータイプがいる中で彼をたたせるためにはこうするしかなかったんだ!

彼にはこれから先も剣一本で頑張っていただきたい。セカンドシフト?なにそれシラナイナー 
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