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魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石

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第7話


キュウべえから魔女の孵化が近い事を念話で聞かされたあたし達は先を急いだ。

「ハートスピーダー!!」

あたしは足に羽根の付いたローラーブレードを装着して空中を駆け回る。すると、使い魔達はあたしの方に寄って来た。

「マミさん、今!!」

「ええ!」

でも、マミさんのマスケット銃が次々と使い魔を撃ち抜いて行く。

「私も行くよ、スラッシュファング!」

キリカも、燕尾服の袖口から三本の鉤爪を出して、それで使い魔を切り裂いて行く。


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私の夢。そんなの、魔法少女としての使命で頭がいっぱいで、考えた事も無かった。ううん。私が夢なんて見ちゃいけないとさえ思っていた。でも、日奈森さんは私も夢を見ていいって言ってくれた。将来の夢なんて分からない。
でも、まずは小さな夢から叶えていこうと思う。だからまず、日奈森さんと呉さんに負けない素敵な変身の掛け声と名乗りを考えるわ!そう言えば、二人には変身後の名前もあったわね。“魔法少女マミ”じゃ味気ないし、何か考えないといけないわ。
うふふ。何だか、技の名前を考えている時より楽しいわ。戦っているのに気持ちもとても軽い。これも、日奈森さんのお陰ね。

もう、何も怖くない。


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魔女が孵化しそうになってきたから、私はグリーフシードから離れた場所で隠れていた。すると、そこへマミさん達がやって来た。あ、あむちゃんとキリカさんが変身してる。あれがキャラなりかな?

「まどか、大丈夫?」

その後に続いて入って来たさやかちゃんが私の所に寄って来た。

「うん、大丈夫だよ。」

そう私が言った時、グリーフシードが孵化して魔女が出てきた。今までの魔女はグロテスクだったり、現代アートみたいな前衛的な姿をしていたけど、今回の魔女はファンシーなぬいぐるみのような姿をしていた。

「鹿目さん、美樹さん、下がっていて。日奈森さん、呉さん、行くわよ。」

「うん。」

「いつでもいいよ。」

マミさんはあむちゃんとキリカさんと一緒に魔女へ突撃して行く。

「スパイラルハート・スペシャル!」

まず、あむちゃんが手に持ったハートの装飾付きのバトンを振るって、ピンク色の斬撃を飛ばした。魔女はそれを食らってあっさりと吹き飛ばされ、後ろの壁にバウンドして戻って来る。

「ステッピング・ファング!!」

次に、キリカさんが手から鉤爪を飛ばす。鉤爪はそのまま魔女に突き刺さって壁に縫い止めた。

「マミさん、今!!」

「分かっているわ。」

最後に、マミさんが大砲を魔女に向けて発射した。

「ティロ・フィナーレ!!」

発射された砲弾は魔女に命中。これで魔女を倒したと、私達が思った矢先。魔女の口から何かが飛び出た。それは、ピエロのような顔をした蛇のように長い身体を持つ巨大な魔女だった。魔女は大口を開けてマミさん達の方へ突っ込んで行く。そして、三人は突然の事態に固まってしまっていた。

「皆!!」

私は弓に矢をつがえて魔女に向かって発射する。それは魔女の目に命中して、魔女は痛みで動きを止めた。
それを見たあむちゃんがマミさんとキリカさんの腕を掴んで魔女から距離をとる。

「ありがとう、鹿目さん。さて、さっきは不意を突かれたけど、今度こそトドメよ!」

マミさんはそう言うともう一度大砲を出した。

「ティロ・フィナーレ!!」

そして、発射された砲弾は魔女の身体に命中して大穴を開けた。今度こそ終わったと思ったその時、魔女の口から同じ魔女が出てきて、元の魔女は消えた。これってまさか脱皮!?

「このっ!ヴァンパイア・ファング!!」

今度はキリカさんが何本も繋げて長くした鉤爪で魔女を切り裂くけど、また魔女は脱皮して再生する。

「これじゃキリがないよ!」

この有様にキリカさんも弱音を吐き始めた。でも、本当にどうすればいいの?


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どうしよう。マジでヤバい。ダメージ与えても直ぐ復活とかズル過ぎるじゃん!こんなのどうやってやっつければいいの!?

「あむちゃん。」

そうやってあたしが混乱している時、スゥが話しかけてきた。

「やっと分かりましたよぉ〜。ここのお菓子で足りない物が何か。」

「は?いや、今はそんなのどうでもいいし!!」

「そんな事はありませんよぉ。結界と言うのは魔女さんのお家。なら、そこにきっとやっつける手掛かりがあるのですぅ。」

「それが、ここに無いお菓子って事?」

「そうですぅ〜。」

「分かった。スゥに任せてみる。」

そして、あたしはキャラなりをランからスゥにチェンジした。あたしの髪型はツインテールに、服は緑のメイド服に変化する。頭にはもちろんクローバーの飾り。その名は・・・

「キャラなり!アミュレットクローバー!!」

「日奈森さんの姿が変わった!?」

それを見たマミさん達が驚くけど、それは置いておいてあたしは“お料理”を始める。

「特製チーズケーキ、召し上がれ♡」

そして、あたしは巨大なチーズケーキを出した。

「いや、何でチーズケーキ出してんの!?攻撃じゃないの!?」

すると、さやかがツッコミを入れて来た。

「スゥの話だと、この結界にはチーズを使ったお菓子が全く無かったの。だからきっと、この魔女はチーズが弱点なの。」

そう、あたしは可愛らしくウインクしながら言った。

「いや、何そのぶりっ子キャラ!あんたまた性格変わってない!?」

た、確かに他のキャラなりとは違って、アミュレットクローバーだけはいつもちょっとだけ性格が変わるけど。今はこれで魔女を何とかしないと。
そう思って魔女の方を見ると、魔女はヨダレを垂らしながらチーズケーキをガン見してた。え?何で?
そうやって首を傾げていると、魔女はまた大口を開けながら物凄い勢いで突っ込んで来た。

「って、嘘おおおおおおお!?」

あたしが慌ててチーズケーキから離れると、魔女はそのままチーズケーキに貪りつく。

「ちょっとスゥ!どうなってんの!!話が違うじゃん!!!」

『おかしいですねぇ?』

どう見てもあれ、チーズケーキが大好物じゃん!別の意味で弱点じゃん!!ああもう!これじゃあ、どうやったらやっつけられんの!!

「日奈森さん。」

その時、マミさんが私に話しかけてきた。

「チーズケーキ、もう一個出す事は出来るかしら?」

「え?出来るけど、意味が無いんじゃ?」

「大丈夫。私にいい考えがあるわ。」




マミさんの作戦通り、あたし達は魔女から遠く離れた所で魔女がチーズケーキを食べ終わるのを待った。そして、チーズケーキを食べ終わった途端、もう一度チーズケーキを出す。

「チーズケーキ、もう一ついかが?」

すると、魔女はこっちに向かって来た。それを確認すると、キリカがチーズケーキを鉤爪に引っ掛けて魔女に向かって投げた。

「そんなに欲しければ、あげるよ!!」

それを見た魔女は避けるどころか、むしろ大口を開けて待ち構える。でも、それがあたし達の狙い!

「ティロ・フィナーレ!!」

そして、マミさんが必殺の大砲を発射した。それはチーズケーキを貫いて、その向こうに居た魔女の口の中に飛び込んだ。そのまま、魔女の体内で爆発し、魔女は木っ端微塵になる。
やっと倒せた。ホント苦労したし、何度死ぬかと思ったことやら・・・

『チーズケーキ、勿体無かったですぅ。』

スゥは、チーズケーキをあんな風に使っちゃった事に不満があるみたいだけど。
そうこうしてる間に、結界が消えて景色が元に戻った。これで戦いは終わったと思ったんだけど、そんな事は無かった。何故なら・・・

「この、ちょこまかと!!」

結界の外では暁美さんがナイフ片手に✖️キャラと戦っていたから。

「✖️キャラ!?やっと終わったと思ったのに・・・」

キリカは何だかうんざりした様子だ。

「あれが✖️キャラなの?意外と可愛いらしい見た目ね。」

一方、マミさんは✖️キャラの見た目の感想を述べていた・・・って!?

「マミさん、✖️キャラ見えてるの!?」

「ええ。でも、しゅごキャラは見えないのに、何でかしら?」

ホントどう言う事?あれ?って事はさやかも?

「ねえ、何で転校生1号はナイフをめちゃくちゃに振り回してんの?」

と、思ったら見えて無かった。ホントどうなってんの?

「とりあえず、ここは私に任せて。」

あたしは✖️キャラと戦う暁美さんの所に向かった。


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✖️キャラとの戦いは魔女や使い魔とは訳が違った。✖️キャラの大きさは10cm程度と使い魔と比べてもかなり小さい。だから攻撃を当てにくい。そのくせ、向こうはバイオリンの音波による広範囲攻撃をしてくるのだから、とてもやりにくい。
そうやって苦戦している間に巴マミ達が結界から出て来た。グリーフシードが落ちていたから、魔女を倒して出てきたと言う事だろう。あと、呉キリカの姿が私の知る“魔法少女の呉キリカ”と同じであった事に驚いた事だが、今はそれどころではない。
そう考えていると、緑色のメイド服のような格好をした日奈森あむがこっちに来た。


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「暁美さん、大丈夫!」

「大丈夫よ。でも、かなりやりにくい相手だからダメージは与えられていないわ。」

あたしが声をかけると、暁美さんは✖️キャラから離れながらクールにそう返した。

「それにしても意外ね。あなた達で魔女を倒せるなんて。」

「あたし達って、そんな頼り無さそうに見える訳?」

「そうね。」

こいつ、はっきり言った・・・

「でも、こっちの方は専門みたいだから、任せるわ。」

そう言って暁美さんが後ろに下がって行くと、✖️キャラがあたしの目の前に来た。

「フォルテ、フォルテッシモ、クレッシェンド!!」

✖️キャラはバイオリンを弾いて音符を飛ばして攻撃してくる。音楽系か。それなら・・・

「ミキ!」

「うん。ボクとチェンジだ!」

あたしはミキとキャラなりをチェンジする。そうして変化したのはフリル多めの青い服にショートパンツ。あしには青と水色の縞模様のニーソックスを履いていて、腰には大きなリボンが付いている。そして、頭にはスペードマークの飾りの付いた帽子。その名は・・・

「キャラなり、アミュレットスペード!!」

「姿が変わった!?」

それを見た暁美さんが驚くけど、その間に✖️キャラはまた攻撃を仕掛けて来た。

「フォルテ、フォルテッシモ、クレッシェンド!!」

また音符がこっちに向かって来るけど、あたしは慌てずに手にト音記号型のタクトを出して、それを振るう。

「プリズム・ミュージック!!」

すると、そこからも音符が発射されて、✖️キャラの出した音符を相殺した。その時、✖️キャラの方から声が響いて来た。持ち主の子の悩む声だ。

“もう、僕の腕は治らないんだ・・・”

「嘘!?この声、上条君!?」

キャラ持ちのまどかにもこの声は聞こえているみたいだけど、知り合いなのかな?

“現代医学で治すのは不可能だって。もう動かないって。これじゃあ、もうバイオリンを弾く事なんて出来ない・・・”

「そんな・・・」

声を聞いたまどかの顔が驚愕に染まった。確かに、悲しい話だね。身内なら尚更だ。

“もう、僕には何も無い・・・この先、どうやって生きていけばいいんだ・・・”

この子、大好きな事が出来なくなって、それでこころに✖️を付けちゃったんだ。でも・・・

「何も無い?そんな事は無いじゃん。」

「!?」

私の言葉に✖️キャラは動きを止めた。私はさらに言葉を続ける。

「私は知ってるよ。怪我のせいで大好きでずっと一生懸命やって来た事が出来なくなっても、別の形でそれに関わって輝いてる人を!!」

ややと同じバレエ教室に通ってる女の子“マイティ”のママがそう。あの人は昔、プリマだったのに怪我が原因で引退したけど。今はバレエをやってる皆の為に衣装を作ってる。そうやって輝いてる!

「だからさ、君も見つければいいじゃん!別の形で輝ける方法を!!」

あたしがそう叫ぶと、✖️キャラは完全に動きを止めた。今だ!

「ネガティブハートにロックオン!」

あたしがそう言いながら✖️キャラを指差すと、✖️キャラは大きなハートに拘束される。

「オープンハート!!」

そして、あたしは手でハートの形を作ってそこから✖️キャラに向かってハート型の波動を撃ち出した。それを受けた✖️キャラは再び殻に包まれて✖️たまに戻った。そのまま浄化されて、王冠と白い羽根の描かれたこころのたまごに戻る。その直後、こころのたまごが上下二つに割れて、中からタキシードを着てバイオリンを持ったしゅごキャラが出て来た。

「もしかして、あなたは上条君のなりたい自分?」

まどかがしゅごキャラにそう聞くと、しゅごキャラはそう頷いた。

「うん。でも、恭介の腕の怪我は治らないみたいだから、叶わなくなっちゃったけどね。でも、あの子ならきっと新しい“なりたい自分”を見つけられるハズだから。それまで、僕はあの子を見守っているよ。」

そう言うと、その子はたまごに戻って持ち主の所に帰って行った。

「上条君、大丈夫かな?」

まどかが心配そうに聞いてきた。それに対してあたしは笑顔で答える。

「大丈夫だよ。あの子も言ってたじゃん。その子はきっと、新しいなりたい自分を見つけられるって。」

「ねえ、さっきから恭介の名前がずっと出てるけどさ、どう言う事な訳?」

その時、さやかが✖️キャラの件について聞いてきたので、まどかが説明をした。この時、私達はこの事が原因で後で大変な事になるとは思っていなかった。


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魔女もどきが浄化されるのを見届けた私はみらいと合流した。

「みらい。そっちはどうだった?」

「全然ダメ。浄化せずに普通に倒しちゃった。」

「なるほど。彼女達はまだ魔女の正体を知らない訳か。」

そこまでは考えていなかった。正体をしれば浄化するようになるだろうが、それを私達が告げたところで信じはしないだろう。

「あの黄色い魔法少女が“魔女化”すれば嫌でも気付く事になるだろうが、出来ればそういうのはしたく無いな。どうしたものか・・・」

「サキ、そろそろ帰ろう?」

「そうだな。皆も待ってるし、今日はこれで帰る事にしよう。」

そして、私達は“あすなろ市”へと戻った。


続く


 
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