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K's-戦姫に添う3人の戦士-

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1期/ケイ編
  K8 終わりの名を持つ者

 ケイはレーザーサーベルを握ってクリスへと駆けた。

「汚ねえ大人が、あたしに近づくんじゃねえええええッ!!」

 クリスが両手のガトリングを再び撃ち放った。

 ケイはとっさにその場に這いつくばり、弾丸を避けた。だが、ケイが立ち上がりまた走り出そうとするより早く、クリスは腰のパーツからミサイルを出し、発射した。

 レーザーサーベルで誘爆させようと身構えたケイの――目の前に、巨大な壁が落ちて来て立ち塞がった。

「盾?」
「――剣だ!」

 この声は。

 ケイも、そして響も、そそり立つ巨人の盾のような剣の一番上を見上げた。そこに立つのは、やはり、風鳴翼だった。

「風鳴……」
「安心しろ、小日向。お前の妹はすでに保護してある。だから――小日向、そして立花。力を貸してほしい」
「っ、はい!」

 オイシイとこ持ってきやがって、と頭では思いながらも、口元には笑みが浮かんだ。

 ケイはレーザーサーベルを解除し、再びレーザー砲へと戻した。

「死に体でお寝んねと聞いていたが、足手まといを庇いに現れたか?」
「もう何も、失うものかと決めたのだ」

 クリスが両腕のガトリングを発射した。しかし、翼に慌てる様子は欠片もなく、巨大な剣の上から飛び降りた。
 ほんの少しジャンプの軌道をバーニアで変えるだけ。それだけで翼はガトリング斉射を避けて着地してみせたのだ。
 着地してからも違う。刀を揮う音の鋭さは見ているこちらが斬られた気がするほどだ。
 動き、攻め、避け――全てが無駄なく流麗。

(何だよ。力を貸せなんて言っといて、フォローする暇もくれねえじゃねえか)

 翼が突きつけた刃から逃れ、クリスが再び両手のガトリング砲を構えた――その時だった。
 空からネジ型ノイズが飛来し、クリスのガトリングを刺し壊した。
 それだけに留まらず、3体目のネジ型ノイズがクリス自身を狙っている。

 ケイはとっさにレーザー砲を撃ったが、外した。ノイズの落下速度のほうが上回った。2射目のチャージも間に合わない。小日向ケイでは雪音クリスを救えない。

 早かりし後悔に囚われたケイの横を、オレンジの影が走り抜けた。

「立花!」
「立花ちゃん!」

 ネジ型ノイズに体当たりし、クリスを庇った響を、そばにいたクリスが受け止めた。

「お前何やってんだよ!」
「ごめん…クリスちゃんに当たりそうだったから、つい…」

 朦朧としながらも告げた理由に、ケイは改めて思わされる。
 ――そうだ、立花響はこういう女の子だった。他人のためなら我が身を省みない、見ていて空恐ろしくなる子。

「~~っ馬鹿にして! 余計なお節介だ!」

 翼が刀を構えて隙なく周辺を見回す。ケイは翼に倣い、プリズムレーザーを出して彼女と反対方向を見回した。
 見よう見真似の哨戒でどこまで役立てるかは疑問だが――

「! おい風鳴! あっち!」
「あれは…」

 ツバメ型ノイズが旋回する下、湖に突き出したテラスに凭れかかる、喪服の女。女の手にはソロモンの杖が握られていた。

「命じたこともできないなんて、あなたはどこまでワタシを失望させるのかしら」
「フィーネ…っ」

 クリスの声は怯えに染まっている。まるで親にイタズラを見咎められた幼子だ。

「フィーネ?」
「音楽用語で楽譜の終止記号。終わりを意味する名だ」
「終わり……」

 とにかくケイは翼ともどもアームドギアを構えた。ソロモンの杖を持つ以上、敵には違いない。ケイには響のような説得はできないから、せめて守りは固めなければ。響を、そして響が守ったクリスを。

「~~っこんな奴がいなくたって!」

 クリスが響を突き飛ばした。ふらつく響をケイは慌ててキャッチした。

「戦争の火種くらいあたし一人で消してやるッ! そうすればあんたの言うように人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろッ!?」
「――戦争の火種?」

 それがクリスの戦う理由、フィーネに従う理由なのか。
 何と無理やりな。動機としてはこれ以上ない素晴らしいものなのに、彼女のやっていることは。

「もうあなたに用はないわ」
「何だよそれ!」

 フィーネが掌をこちらに向ける。すると、あちこちに散らばっていたネフシュタンの鎧が粒子化し、フィーネの手に集まり、消えた。
 それで用はすんだとばかりに、それこそ本当に雪音クリスなどどうでもいいというように、フィーネは緑林地帯の中へと消えた。

「待てよ、フィーネ! フィーネッ!!」

 追おうとしたクリスに対し、ケイはとっさに声を上げていた。

「待ってくれ、雪音クリス!」

 クリスはこちらをふり返った。歯を食いしばり、今にも泣き出しそうな顔で。

「俺の友達で、NGO活動で紛争地帯に行った奴がいた。このギアもそいつから貰った物だ。メールもない、手紙だって出しても届かない率のが高いような国へ行った。武器なんて持たずに、体一つで飛び込んだ」
「……何が言いたいんだ」
「そいつを知ってるから分かるんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
「――ッッ!!」

 今日までの行動を否定されたクリスはショックを受けているように見えた。
 クリスはケイを睨み、踵を返して跳んで――消えた。 
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