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七星羊皮

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第四章

「それはまた」
「有り難うございます」
「ではさらにお聞きして宜しいでしょうか」
 また問うた彼だった。
「その七星羊皮のことで」
「どうぞ」
「名前と北斗七星のことはわかりました」
 それでこのことはいいというのだ。
「ただ」
「他にもですか」
「その七星羊皮から垂れている紐は」
「白くて模様のある」
「それも奇麗ですけれど」
「披星戴月といいまして」
「星や月が出るまで、ですか」
 夏姫にもその言葉の意味はわかった。
「そうですね」
「はい、朝早くから星が出るまで」
「長い時間ですか」
「働くことがいいとです」
 こう夏姫に話すのだった。
「私達ナシ族の教えでして」
「それを表している飾りですか」
「そうです」
 こう話すのだった。
「これは」
「そうなのですね」
「はい、ですから私達もです」
「その七星羊皮と披星戴月を身に着けて」
「働いています」
「朝早くから夜遅くまで」
「そうして頑張ろうっていうことです、ただ」
 ここでだ、お店の人は笑って夏姫に話した。
「最近中国でも労働基準が言われていますね」
「段々言われてきてるわね」
「ですからうちのお店もです」
「労働時間は守ってるのね」
「店長さんがそうしたことに敏感で」
 それで、というのだ。
「そこはちゃんとしています」
「労働時間は守ってるのね」
「そうです」
 実際にというのだ。
「そうしています」
「そうですか」
「ですから私達も働く時はです」
「ゆっくりと。休める時は休めているから」
「働く時は働けています」 
 夏姫にマッサージをしつつ話すのだった。
「朝早くから夜遅くまで」
「やっぱり休める時は休まないと」
「満足に働けないですよね」
「確かにそうですよね」
「それはそうとお客様」
 今度はお店の人から夏姫に言って来た。
「さっきから思っていたのですが」
「何か」
「随分と肩が凝っておられますね」
 夏姫のその肩をマッサージしつつの言葉だ。
「腰も」
「そうですか、やっぱり」
「結構重症ですよ」
 その肩凝りがというのだ。
「随分疲れてますね」
「それを何とかしたくて」
 それでとだ、夏姫もお店の人に答えた。
「ここに来ました」
「そういうことですか」
「大学とアルバイトが大変で」
「それはまた」
「いや、家はここなんですけれど」
 この街で生まれ育っているのだ。 
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