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夢のような物語に全俺が泣いた

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初めてのパーティ

数日経ったある日の事。
俺は魔石を換金するためにギルドを訪れていた。
全くと言って良いほどに通っていなかったため、魔石はあり得ない数になっていた。
そのため、換金する数を予め決めておくことで目立つことを回避する。

「あら、登録した日以来じゃない」

ふと声をかけられて振り替えれば何時しかのギルドの女性がたっていた。
確か…エイナさんだったな。

「ああ、どうも」

「こんにちわ。あれから見なかったけど…どうやらダンジョンには潜ってるみたいね」

「ええ。一応冒険者として登録しましたし、稼いでなくてはいけませんからね」

「そうね。ああ、そうだわ。
君の他にもう一人私の担当冒険者が居るんだけど…良かったらその子とパーティを組んであげてくれないかな?
一人にして置くといつも不安でしょうがないのよ」

エイナさんは頬に手を当てて言う。
まるで我が子を心配する母親のようだ。

「俺は別に構いませんけど…即席のパーティが戦果を残せるとは限りませんよ?」

「でも、死亡率は低くなるじゃない?
ね、お願い」

「まぁ…そのもう一人がOKを出すなら行きますけど」

「ホント!?じゃあここで待っててね!
今すぐ聞いてくるから!」

そう言って走っていくエイナさん。
そしてカウンターで待っていた一人の少年に話しかけて連れてくる。

「確か…ベルって名前だったか?」

「あ、はい。ベル・クラネルです。
確か酒場の…」

「ああ。ケイ・ウタルだ。
ミノタウロスの一件は大変だったな」

「い、いえ!僕の方こそすみませんでした!
あの時一人で逃げてしまって…酒場の時も…お金を払ってくれたみたいで…」

「あの時は仕方がない。
それに酒場でだって、結果的に犬野郎に一矢報いる事が出来たんだからな」

必死で謝り倒すベル少年に俺は手で制しながらそう言った。

「君達、知り合いだったのね」

「ええ、と言っても話すことなんてありませんでしたけど」

「そうなんだ…。
ところで、パーティの件はどうするの?」

「あ、はい!お願いします!」

「ああ。こちらこそよろしく頼む。
パーティなんて組むのは初めてだからな…至らないところもあるだろうが、頑張っていくと約束しよう」

と、こんな感じで俺の初めてのパーティは何時しか出会った白髪の少年、ベル・クラネルと組むことになった。









「はっ!てやぁっ!」

「ふっ!」

5階層にて、キラーアントやゴブリンを相手に俺達は立ち回っていた。
ベル少年の動きは常に基本に忠実と言うか、所々が危なっかしく腰が引けているところが多々ある。
産み出されたモンスターを一通り倒した後、魔石を集めながら話しかけてみる。

「少年……ベルは誰かに剣を教わったことはないのか?」

「え?あ、はい。
冒険者になったのも3週間ほど前でして」

「となると我流か」

「はい。それよりも強いんですね、ケイさん!
あんなに素早く動いて一網打尽にするなんて」

俺の先頭を見て興奮したのか、嬉々として話すベル。

「別に強くなんてないさ。
俺のファミリアは序列で言えば俺が一番下なんだからな」

「そうなんですか?あんなに強いのに…」

まぁ強く見えるのは特典があるからなんだけどね。

「君も頑張れば強くなれる。
見れば君はダガーしか持ってないみたいだし、何かアクセサリーは無いのか?」

「アクセサリー何てっ!とんでもない!
僕のファミリアは出来たばかりでそんなお金もありませんし…」

ああ、そうなのか。
なら記念に一つ何かプレゼントしても良いのかな?

「なら今回の換金は全部ベルに譲ってやるよ」

「ええっ!?ダメですよそんなの!」

「良いんだよ。俺は金が欲しい訳じゃないし、
何より君が強くなる方が楽しみだ」

「で、でも…」

「ならこうしよう。
暫く俺とパーティを組む。
その報酬として取り分は君に贈呈する。
パーティを組むのがこんなに楽しいとは思わなかったし、お互いにいい気分を味わえる」

「そ、そんな!
僕なんて助けられているだけなのに」

「良いんだよこれで。
別に良い装備を整えるために言っている訳じゃない。
君のファミリアがいずれ大きくなり、泰明を記して有名になる事も重要だろ?
そのためにも金はあって困るものじゃないし、な?」

「……ありがとうございます。
じゃあ、これからもよろしくお願いします!」

「ああ。
それと…これを首から下げとけ」

本当に純粋何だな…と思いながら背中に手を回して紋章を出現させる。
それをベルに手渡して言った。

「それはホーリィシンボル。
体の傷を徐々に直していくアイテムだ」

「そ、そんな!受け取れませんよ!」

「まぁたそんなことを…良いか?
ベルはまだ戦い方が危ないし、そのせいで怪我だってする。
その怪我が蓄積して動きが鈍り、結果死ぬことになってしまうこともあり得なくないんだ。
大体そのアイテムが高額だとか思ってるんだろうが、無料だからな?」

「これが…無料?
だって…市場で治癒アイテムは少なくても3000ヴァリスはするのに…」

「買い物なんて食材くらいしかしたことねぇから分からんが、
それはお前が着けることに意味がある。貰っとけ」

「………………はいっ!」

嬉しさいっぱい。
満面の笑みで首から下げる。

「あ…凄い」

ホーリィシンボルを首から下げたとたんに、先程の戦闘で受けたかすり傷等が徐々に消えていく。
それを見たベルが驚き、俺はその光景を暖かく見ていた。

本来ホーリィシンボルは戦闘中に一定時間毎にHP回復と言う効果なのだが、
この世界の場合は戦闘中でなくとも回復してくれる優れものとなっている。

「さ、どんどん行くぞ!」

「はい!お願いします!」

俺とベルは立ち上がり、再び奥へと歩いていった。

 
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