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夢のような物語に全俺が泣いた

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ファミリア

あの後訳もわからず案内されたのは談話室の様な場所。
非が炊いてあるにも関わらず部屋は然程暑くなく、かといって涼しいわけでもない温度。
そしてそこに集まる7人の男女。

「取り合えずかけたまえ」

ゼウス様?に椅子を出され、未だに混乱しながらもそれに従う。

「さて、取り合えず自己紹介か?」

「アホか。そんなのは後でもできる。
今は少年の混乱を解いてやる方が先だ」

ゼウスの言葉を否定で返す黒い髪の青年。
つーか神様に向かってアホって…。

「そうだな。
まぁいきなり口頭で説明しても穴が出来るだろうし…質問してくれ。
それに答えていこう」

「……じゃあ、ここは何処…ですか?」

「別に無理して敬語を使わなくて良いぞ。
さて、まずここだが…迷宮都市オラリオと言う場所の一角に位置する俺達のホームだ」

迷宮都市……?
まぁ、異世界と言うのはさっきの件で十分に体験したから良いだろ。

「…何で俺をここへ?
初対面なのに俺の事知ってたし」

「ああ。それは報告があったからだ。
お前もあっただろう?ここへ来る前、お前の母親に」

「母親……?何いってんだよ。俺の母親ならいない筈だぞ?
つーかここに来る前って…あの女神様か!?」

「…アイツ、説明しなかったな?
大方恥ずかしかったとかどういう顔をすれば良いかとかでパニクってたんだろ」

パニクってた?
凄いドライな対応されたんだけど…。

「ま、それは置いといてだ。
お前さんは転生者としてこの世界へとやって来た。
俺はその報告を受け、お前さんを迎えに行ったって所だな」

「……後は特に無い」

ホントはある。あの女神様が本当に俺の母親なのかとか、マザーなのかとか。
今はややこしくなるし、後で聞こう。

「なら自己紹介だな。
俺はゼウス。このファミリアの主神だ。呼び方は何でもいいしフレンドリーで接してくれ」

金髪の長い髪をした好青年。
体つきは細マッチョ?な感じに見れる。

「僕はさっき言ったけど、葵 蒼也。
この世界ではソウヤ・アオイね。辛いこととかあるだろうけど、頑張ってね」

さっきの迎えに来てくれた人。
青い髪に服装も青が基準。
洞窟での殺気といい、確実に強者だ。

「俺は風見(かざみ) (かける)
よろしく頼む」

黒髪の青年。髪をオールバックにして目付きも鋭い。
所見としてはクールな感じが見られるが…何処かで見たようなイメージがするが…。

「旧名は織斑一夏だ。君の疑問は最もだが、出来れば風見の方で呼んでくれ」

「あ、はい………はぁ!?織斑!?
何でここに織斑一夏が!」

「あー、そこは追々話していくから…次は才人だな」

「ああ。俺は平賀才人。
驚くのは無理無いだろうけど、君の思っている人物と同じだと思う。
よろしくな!」

織斑の次は平賀ですか。
どうなってんだよこの世界は…クロスオーバーか何かなのか?

「はいはーい!理子はぁ、峰理子って言うんだ!
初めましてでよろしくね!」

……もう、なにも言わない。
何でここにいるのかとかどうでもよくなってきた。

「あ、えっと…ユウ・E・ラドクリフです。
困ったことがあれば相談に乗りますので…よろしくお願いします」

オドオドと自己紹介するのは黒髪ロングのおしとやかな少女。
綺麗と可愛いが入り交じった可憐な少女だ。

「ん、俺か」

最後は先程ゼウスをアホ呼ばわりした青年。
ゆっくりと立ち上がり、俺を見据えるようにして見た。

「俺はユウジ・A・ラドクリフ。
日本国名は赤志ユウジで通っている。一応このファミリアの団長をしているが、基本暇をもて余している。
用があれば訪ねてきてくれて構わんし、悩みがあるのなら相談にも乗ろう」

黒い髪を逆立てるように整え、明らかに強者の風格を醸し出す。
この中で誰が一番強いかなんて、人目見れば分かるぐらいに強い…。

「さて、まだ紹介してないやつはいるが今は良いだろう。
取り合えずこの世界のチュートリアルを始めよう」

再びゼウスの音頭に戻る。

この世界迷宮都市オラリオは冒険者の集う町である。
この世界には様々な種族が存在し、冒険者達は日々ダンジョンに潜る。
そこで出現するモンスターは、狩ればお金に替わる魔石を落とし、奥にいけば行くほどモンスターは強くなる。
さらに、ダンジョンに潜るためには所属するファミリアを定め、ギルドへと告知しなくては入ることを禁止されている。因みに忍び込める位に警備は雑なのだそうだ。
ファミリアとは、主神となる神の下、眷族になることでこの世界の命あるかぎり神の恩恵を受けとることが出来る。恩恵とは基本的にステイタスと呼ばれる自分の技量を持つことが出来、更には努力することで経験値を蓄積し、強くなっていくと言う言わばRPGの様な感覚である。
ただゲームと違うのは、死んだらそのままゲームオーバーへとつながり、一生を終えること。
冒険者の少数はダンジョンに潜って帰らぬ人と変わり果てることも少なくはないらしい。

「っと、こんなところか?」

「…なら俺はゼウス…様の眷族になれば良いのか?」

「端的に言えばそうなるが、嫌なら別に構わない。
強制はしないし、無理強いもしない。だが、他のファミリアに行くよりかはここの方が居心地は良いだろうし同類だって存在する。強くなるにもここが一番効率的で最速だろうし、デメリットを見積もってしてもメリットが9割を占めるくらいだ」

「………なら」

そう言って俺は立ち上がる。
この談話室にいる全員を見渡し、言葉を告げる。

卯足(うたる) (けい)
正直まだ困惑してるし、目標だってまだない。
けど、少なくとも俺の未来を掴むために努力は続けていく所存…。
新顔ででかい面することもあるだろうけど、よろしくお願いします!」

取り合えずは決めた。
ここで俺は強くなり、自分の生き方を見つめ直す。
恐らく俺がこの中で一番弱い。ならこの中で一番になるとは言わないが、足を引っ張ることの無いように精一杯の努力をしよう。

「よし!早速契約をしよう。んでもってギルドに直行だ!」

「はい」

俺はなすがままに返事をし、上着を脱がされたうつ伏せになる。
ゼウス様が俺の背中をなぞり、髪を張り付けたと思ったら「もういいぞ」と声がかかる。

「ほら、これがお前さんのステイタスだ」

そう言って一枚の紙を手渡してくる。

ケイ・ウタル

Lv2

力: G 212
耐久: F 315
器用: H 154
敏捷: E 411
魔力: S 920
《魔法》

《スキル》

英雄碑(テイルズオブ)
ヘイトマスター



「………魔法高いな」

「でもフットワークが良いんだね。
格闘でもしてたのかな?」

「この英雄碑って何?」

「これは特典だろうな。もう一つは恐らく前世の引き継ぎだろうな」

「ヘイトマスターって…敵意の事だよね?
敵意を操作できるってことかな?」

「いや、一方的に稼ぐみたいだな。
無意識でも発動するみたいだから…こりゃ一種の呪いだ」

言われたい放題である。
このステイタスが良いのか悪いのかはさておき、ヘイトマスターには心当たりがある。

「取り合えずギルドに登録をしてこよう。
さて…じゃあ定番のユウジで」

「待てやコラ。
行くのは構わんが定番ってどういう事だ」

「ほら、団長だろ?」

「関係ねぇだろが。……まぁ行くが…」

ユウジさんがゼウス様に指名され、俺のところへと歩み寄ってくる。

「取り合えず明日はギルドにむかう。
その後はブラブラしながら戻ってくるとしよう」

「了解です」

俺とユウジさんはメンバーの方々から見送られ、ギルドがある場所へと向かっていったのだった。

 
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