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ティギーおばさんのお話

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第四章

「どうぞ」
「有り難う」
「こうすればね」
「もう使えなくなった上着も」
「そう、役に立つよ」
「いい使い方ね」
「服は着られなくなってもね」
 それで終わりではないのです。
「まだあるんだよ」
「こうしてなのね」
「雑巾にしてもいいし」
「他の使い方もあるのね」
「そして最後の最後まで使えるんだよ」
「やっぱり捨てなかったことはよかったのね」
「そうだよ、私もそう思うよ」
 おばさんはお母さんに確かな顔でお話するのでした。
「じゃあ最後の最後まで使ってね」
「そうさせてもらうわね」
 こうお話をしてでした、そのうえで。
 お母さんは新しい上着を着たピーターにです、その雑巾達を手にしてそのうえでこう言いました。
「じゃあ帰りましょう」
「うん、それじゃあね」
「いいものも貰えたから」
「雑巾がなんだ」
「そう、これがね」
 まさに雑巾がというのです。
「いいものよ」
「何か何でもない気がするけれど」
 ピーターにとってはです、雑巾といってもです。
「普通の」
「あら、そう思うの」
「だって雑巾なんて」
「幾らでも手に入るっていうのね」
「そうじゃないの?」
「それが違うのよ、いいものを貰えたから」
 また言う先生でした。
「だからいいのよ」
「そうなの」
「じゃあいいわね」 
 また言うお母さんでした。
「お家に帰りましょう」
「また来てね」
 おばさんが笑顔で見送ってでした、そのうえで。
 二匹はまた裏道を通ってお家に帰りました、お父さんと妹達は皆のんびりとお留守番をしていました。そのお父さんがです。
 お母さんが手にしている雑巾を見てです、こんなことを言いました。
「また雑巾なんか」
「貰って来てっていうのね」
「うん、どうなのかな」
「どうかなってね」
「何かあるのかな」
「いえ、あの子の上着をなのよ」
 もうお菓子を食べているピーターを見ながら言うのでした。
「もう着られないっていうから」
「新しい服を買って」
「それでね」
「その古い上着をなんだ」
「雑巾にしてもらったのよ」
「捨てればよかったんじゃないかな」
 お父さんは首を傾げさせてお母さんに言いました。
「雑巾なんて」
「市場で売っていてっていうのね」
「しかも安いじゃない」
 これがお父さんの考えでした。
「幾らでも買えるのに」
「いえ、違うのよ」
「どう違うのかな」
「何でも最後の最後までね」
 それこそというのです。
「使ってこそじゃない」
「そうなんだ」
「何でも最後の最後まで使う」
「無駄使いはしないんだ」
「そう、無駄使いは大敵よ」
 家庭の、というのです。
「だからしないの」
「そういうことなんだ」
「わかってくれたかしら」
「ううん、話は聞いたけれど」
 それでもと言うお父さんでした。
「何かね」
「違うっていうのね」
「これ位本当に買えばいいのに」
「そういうものじゃないの」
「少しでも節約しないとなの」
「そう、駄目なのよ」
 お母さんはお父さんに強く言うのでした。
「こうしたことから節約して」
「ちゃんとしてっていうのね」
「家計は成り立つのよ」
「主婦も厳しいね」
「厳しいけれど」
 それでもというのです。
「当然のことよ」
「主婦ならだね」
「これ位は当たり前のことよ」
「そいうなんだね、結婚前は」
 お父さんはここで二人が付き合いはじめた時のことを思い出してそれでこんなことを言ったのでした。
「そうしたことは言わなかったのに」
「結婚すれば変わるのよ」
「女の子は?」
「お母さんになるから」
 女の子からです、そうなるからというのです。
「そうしたことも覚えていくのよ」
「それで変わるんだね」
「そういうことよ」
「じゃあ雑巾のことは」
「何よりのことよ」
 こう笑顔で言うのでした、そしてその雑巾で早速テーブルの上を拭いてお掃除をはじめるお母さんでした。


ティギーおばさんのお話   完


                                2014・12・13 
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