| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

2部分:第二章


第二章

「ですからここは」
「うむ、御主に任せる」 
 そうすると答えた家康だった。
「我が徳川の忍の棟梁にな」
「有り難き御言葉」
「そうせよ。そしてじゃ」
「闇に葬ります」
 謀反が動く前にだ。そうするというのだった。
「そうしますので」
「ではな」
「お任せ下さい」
 こうしてだ。半蔵は今度は自身が束ねる忍の者達を調べるのだった。そしてわかったのは。
 部下達からだ。闇の中で聞くのだった。
 そこには光はない。闇だけがある。その闇の中でだ。話を聞いていた。
 半蔵はまずこう問い返した。
「それは真か」
「はい、真です」
「間違いありません」
 そうだとだ。部下達が闇の中で答える。
 お互いに姿は見えない。だがその中でだ。
 彼等は話をしている。そうしてであった。
 部下達はだ。半蔵にこうも話した。
「半蔵様の弟君のあの方がです」
「武田と通じてです」
「謀反を企てておられます」
「あ奴だったとはな」
 話を聞いてだ。今度はこう言う半蔵だった。
「まさかな」
「あの、それでなのですが」
「どうされますか」
「ここは」
「知れたこと」
 半蔵の返答は今では一言だった。
「消す」
「消されますか」
「そうされますか」
「今は戦国の世だ。例え肉親であろうともだ」
「弟君であられても」
「それでも」
「それがどうしたというのだ」
 闇の中でだ。半蔵は言うのだった。
「言った筈だ。肉親であろうともだ」
「謀反を起こすのならば」
「消すのですね」
「そして我等は忍だ」
 このことについてもだ。半蔵は話すのだった。
「それならばだ」
「左様ですか。それでは」
「今から我等が行きます」
「そしてです」
「務めを果たしに行って来ます」
「いや、いい」
 いいとだ。半蔵の声はこう言うのだった。
「今はいい」
「いいとは」
「いいといいますと」
「私が行く」
 他ならぬだ。棟梁の彼がだというのだ。
「私が全てを終わらせる」
「半蔵様がですか」
「そうされますか」
「御主達は手を出すな」
 半蔵は言う。毅然とした声で。
 それは闇の中でもはっきりとしていた。その中で言うのである。
「私一人でやる」
「ですが弟君です」
「それならば」
「半蔵様の御手を汚すことは」
「いや、あの男は手強い」
 強いからだと。それを理由にする言葉だった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧