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極短編集

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短編99「天使が見えた日」

 ある日、僕は営業の途中に、上空に浮かんでいる天使に気づいた。
 天使は2、3歳の子どもで、男の子か女の子か分からないが、とても愛らしい顔立ちをしていた。
 僕が立ちすくんでいると、余りに驚いた僕の表情からか……

「どうしましたか!?」

 と、周りにいた人たちが声をかけた。

「てっ、天使が浮かんでる」

 と、僕は空中を指差すが、周りの人たちからは……

「えっ!何もいませんよ」

 と、声があがった。振り返ると天使はいなかった。周りの人たちは、一人また一人と離れていった。
 その日から僕には時々、天使が見えていた。営業中の空、窓の外、そして……

「なんで家の中まで!?」

 僕は頭がおかしくなったのだと思い、急いで医者に行く事にした。

「天使が見えるんですね?」

「ええ、今は先生の頭の上に浮かんでいます」

 結局、医者からは、薬を飲んで静養するか、施設に入る事を勧められただけだった。
 僕は、このままでは気が狂いそうだと思い、ネットで呼びかけた。

『誰か天使が見える人いますか?』

 状況を説明すると、同じだ!と言う人が現れた。そして実際に会う事になった。

「えっ!?」

 待ち合わせに来たのは若い女性だった。
 僕は、本当に見えているのか?確かめたくなり、目の前に浮かんでいる天使の特徴を女性に聞いた。

「二重でクリッとしていて、笑うとえくぼがありますね。髪は少し切った方がいいかな?ご飯食べる時に一緒に食べそう!あっ、あなたのそばに来ましたね」

 と、僕が見ている特徴を言っていた。
 天使は僕の出した人差し指を握って、ニコニコしていた。すると、女性も人差し指を天使に向けた。

「ほら!私たちの指をつかんで笑ってる」

 それから僕と女性は付き合う事になった。デートの時にはいつもついて回っていた。そして分かった事なのだが、天使は僕らの所を行ったり来たりしていたのだ。
 そうそういつも側にいる天使だったが空気は読めるようで、いいムードの時には姿を消していた。そうして僕らは結婚した。

「もしかして出来たかも///」

「本当に!やったあ」

 妊娠と同じ時期に、天使は姿を消した。そして出産となった。産まれて来た赤ちゃんを見て……

「やっぱりそんな気がしたんだあ」

 と、妻が言った。

「もしかしたら実は、子どもが親を決めるのかもね!」

 と、僕は言った。なぜなら目の前の僕らの赤ちゃんは、二重でクリッとしていて、笑うとえくぼがある愛らしい顔立ちで……



 まさに(あの)天使そのものだったからだ。

おしまい


 
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