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飢えし少年

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逃亡

朝。
全てを吹き飛ばせそうな青空の下、草むらに寝転んだ少年は静かに目を覚ます。
その目には濁った闇を携え、青空をものともしないような感情を浮き出させている。
少年はゆっくりと空を見上げながら、深い溜息をついた。
「街から逃げてきたが、奴らは清々していることだろう。孤独は誰からも見られずにひっそり生きるしかないのだ。」
少しの笑みを浮かべ、少年はゆっくりと歩き出した。


時は2日ほど前のことである。
少年オルクは、今まで過ごしたメルレアという街を捨て、逃亡した。
理由は簡単。自分の存在価値を見出したかったからである。
物心ついた時には両親は他界しており、常に街の便利屋と称してこき使われ日がな1日の金を稼ぐ日々を過ごしていた。
人間とはおかしなものだ。何か一つ他人と境遇が違えば、周囲はそれを異質な物と判断して冷徹な目を向ける。
愛する者もいない。
愛されたこともない。
愛情を知らずに過ごしたオルクにとって、皆は敵だった。
「オレは何のために生きているのか?」
それは自分を生かすための鍵であり、その答えを見つけ出すことがオルクの今の存在価値だった。

死ね。
近寄るな。
カスが。
お前の居場所はない。

周囲が自分にかけてきた言葉の数は、いつしかオルクの中で復讐の種として成長した。
「オレはあいつらを絶対に許さない…いつかオレが力をつけたら、必ず…奴等を殺す。」
自分しか信じられぬ少年は、不敵な笑みを浮かべてまた空を見上げた。 
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