| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

旅行の時間(2016/05/16 加筆修正)

 
前書き
今話投稿に伴い、設定が若干更新されています。 

 



【視点:樹】



「イッキ。もう誰と班を組むか決めたか?」
「悠馬?班って、何の話だ?」
「先週の頭に殺センセーがした話聞いてたか?5日後から京都に修学旅行だ。班ってのは、その時の班だよ。班員は男女混合6名以上。あと、昨日も烏間先生が観光だけじゃなくて、殺センセーの暗殺も兼ねるって言ってただろ?」
「ああ。そういえば、そんなこと言ってたっけ?今やってる海外不動産のことで頭がいっぱいで、聞き逃してたわ」
「また金稼ぎしてるのか?お前、十分過ぎるほど貯金あるんだから、程々にしとけよ。それじゃあ、班が決まったら俺か片岡に言ってくれ」
「了解」


少し前に中間があったかと思えば、来週には修学旅行。椚ヶ丘中学3年次は、行事が目白押しの様だ。

あっ。言い忘れていたけど、つい先日あった俺の自宅訪問以降、それに参加したクラスメイトからは基本的に愛称で呼ばれる様になった。


「イッキ。組む相手決まってないの?」
「カルマか?ああ、まだ決まってない」
「なら、俺達と同じ班にならない?渚君や杉野もいいよね?」
「別に構わねぇけど」
「イッキならカルマより心配する必要が無さそうだしな」


カルマ、渚、友人の会話から3人が同じ班なのは分かる。この3人ならお宅訪問メンバーだから、気を使う必要もなさそうだ。


「他の班員は決まってるのか?残りのメンバーが女子ってのだけは分かってるけど」
「残りのメンバーは茅野ちゃんと奥田さん―――」
「そしてクラスのマドンナ、神崎さんだ!」


カルマと友人がそう言うと、カルマ達の後ろで姿が見えていなかった女子組が前に出て会釈してきた。


「班員のほぼ全員がお宅訪問メンバーか。奥田さんとは――余り話したことが無いよな?あっ、皆と同じ様に俺のことはイッキって呼んでくれ。今後ともヨロシク」
「は、はい。奥田愛美です。こちらこそ宜しくお願いします!」


俺が今更な挨拶をしつつ握手を求めると、奥田さんは少し焦りながら握手を返してくれた。


「イッキも奥田さんと打ち解けたみたいだし、早速観光経路と殺センセーの暗殺計画を練ろうか?」


こうして、班員が決まった俺達は修学旅行当日まで観光スポットや暗殺スポットを調べることとなった。そして、あっという間に時が過ぎ、修学旅行当日―――


「あれ?イッキ君、今日はいつもの変な靴じゃないんだね?まぁ、それも靴底に車輪が2つしか付いてない変なインラインスケートだけど」


JR東京駅のホームでA・Tの変化に気付いた倉橋さんの第一声はこれだった。


「変って何だよ。これはA・Tで最も一般的な形状のウィール式なんだぞ。むしろ、普段履いてる空の玉璽(レガリア)の方が特殊な形状なんだよ」
「ってか、南君。どうしたの、そのA・T?空の玉璽(レガリア)しか持ってないって話じゃなかったけ?」
「乗り物系の金属加工会社にオーダーメイドでパーツを製造して貰って、自宅の工作室で一から自作した。うちは地下室もあるから、近い内に工作機械とかも買って、自宅でパーツ製造できる様にしたいと思ってるんだよな。
ちなみに、超小型モーターや変速ギア、ベアリング、エアクッション、バッテリーは工業系の会社に発注したけど、モーターの出力制御を行うA.I.は自分で組んだ。
ってか、デモグラストポリマー流体金属が高過ぎだろ。まぁ、本来は一般市場に流通しない超希少金属だから仕方ないのかもしれないけど」
「南君、A・Tを自作したの!!?あっ。でも、契の王の技術があるなら、できて当然なのかな?」
「っていうか、デモグラなんとかって何?」


俺がA・Tを自作したことに不破さんが驚いたかと思えば、勝手に納得して自己完結し、中村さんがデモグラストポリマー流体金属について質問してきた。


「デモグラストポリマー流体金属な。さっきも言ったけど、一般市場じゃ流通しない超希少金属。取り扱ってる企業に直接交渉に行って手に入れたんだけど、それだけで俺の資産が数億消し飛んだ」
「数億!?」
「まぁ、消し飛んだ資産は海外不動産売買で既に取り戻してるんだけどな。取り敢えず、これが最も一般的なA・Tの形状って訳。完全オーダーメイド品だから、普通に販売したら製作費とか考えても最低で数百万はする代物なんだぞ」
「数百万!?これが!!?」
 
 
 デモグラストポリマー流体金属の入手金額やA・T価格に中村さんが驚きの声を上げるが、俺はそれを無視して話を続ける。
 
 
「デモグラストポリマー流体金属を使ってるってことは玉璽(レガリア)だよね?………この形状、もしかして炎の玉璽(レガリア)?」


玉璽(レガリア)、か。まぁ、間違いではないな。先に開発した試作型疑似玉璽(プロトタイプ・サブレガリア)をベースに、(コア)を組み込んで強化改修した試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)だけど。

ちなみに試験型玉璽(テストタイプ・レガリア)の性能は原作エア●ギアに登場した疑似玉璽(サブレガリア)より10%高い程度だ。重力子(グラビティ・チルドレン)の為に作られたオリジナルの専用玉璽(ワンオフ・レガリア)を開発には、もう暫く時間が掛かりそうだ。


「正解。不破さんは何でも知ってんだな」
「何でもは知らないよ。知ってることだけ。っていうか、A・T作れるんだ。いいな。玉璽(レガリア)じゃなくて、普通のでいいから私も欲しいな」
「……パーツ量産の目処がついたら、無料で作ってやってもいいぜ?殺センセーの暗殺成功率の向上にも繋がるだろうし」


俺がそう告げると、不破さんは目を見開きながら俺の手を両手で握って来た。


「本当!?絶対、絶対に作ってくれる!!?」
「へ?いや、まぁ……。パーツ量産の目処がついたらだけど」
「パーツの量産が可能になったら絶対作ってよ!私、一度でいいから漫画に出て来る道具とか使ってみたかったの!!」
「分かった。分かったから!」


俺は不破さんの余りの興奮っぷりに引きながら、握られている――というか逃がさんとばかりに捕まれている手を振り払い、不破さんから離れることにした。

そして、この不破さん達との遣り取りから十数分後。東京駅のホームにはE組のメンバーが全員揃い。更に30分後には3年の全クラスが揃った。

で、いよいよ新幹線に乗って京都に行く訳なんだが、椚ヶ丘の方針でA~D組はグリーン車、E組は普通車と差別がされていた。


「E組の人間に中間総合1位を奪われる様な低脳な獣が、優越感に浸った顔でグリーン車に乗り込む様は滑稽過ぎて寧ろ笑えないな」
「あ、相変わらず自然と毒を吐くよな。南は」
「う、うちの学校はそういう校則なんだよ。嫌なら本校舎に来れば良かったんだ」


菅谷が俺の吐いた毒にツッコミを入れたかと思えば、本校舎の生徒の1人が屈辱に顔を歪めながらそう言ってきた。


「俺、他者を見下すことでしか自分の地位を確保できない様な獣の集まる所に興味ないんだよね。何か、強者に挑むことを放棄した弱者の巣窟みたいだし、そんな所に身を置いてたら心身共に腐っちまうから、転級なんてこっちから願い下げだわ。
まぁ、牙を抜かれた飼い犬が群れる場所としては最高の環境なんじゃねぇの。他者を見下しながらも挑戦者という立場であろうとする俺には、全く魅力を感じねぇ環境だけどな」
「今日もイッキの毒舌は鋭さが半端無いな」
「見ろよ、磯貝。本校舎の奴ら、下唇噛みながら青筋立ててるぜ」
「言い返したくても、相手が中間総合1位だからな。何言っても負け犬の遠吠えになるって分かってるから、何も言えないんだろうな」


おいおい。悠馬も陽斗もそんな言葉責めしてやるなよ。本当のことでも、奴らが変な性癖に目覚めたらヤバいだろ?(笑)と、こんな遣り取りをしつつ、俺達は新幹線へと乗り、古都・京都へと向かうことになった。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧