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我輩は逃亡者である

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第二章 世界からの逃亡者三人。
  18.たまにはゆっくり

いつも通り束先輩のラボで朝食を食べ終わったあと束先輩がふと言った。

「今日は学園で専用機持ちのタッグトーナメントが行われるんだって、かーくん」
「行きませんよ?」
「だよねぇ、まあ今回はモニターハッキングして観戦しよう」
「また覗き見ですか束様……」
「ち、違うよ?妹の成長を見るための観戦だよ!断じて盗撮じゃないよ!」

いや、それを一般的には盗撮って言うんだよ。まあ撮影のためにまた単身で行くのはなるべく避けたいから今回はなにも言うまい。

「ささ、今日は皆で観戦だよ!」
「そうですね、まあこれくらいなら覗き見しても問題ないでしょ。束先輩解説よろしくです。」
「解説は任せなさいっ!このIS博士の束さんが出てきたISの機能を余すとこなく全裸にしてお伝えするよ!」
「一応IS学園を覗いてる時点でかなり駄目なんですが……まあ束様ですし大丈夫でしょう」

そうして始まったIS観戦……何試合か進んだあと遂に束先輩の妹が出てきた。タッグの相手は――

「ヤンキー生徒会長じゃないか!」
「ヤンキー……ですか?」
「うん、髪が水色ってなんか染めてるのかと思って……対戦相手の織斑一夏の相棒も水色だと……!?」
「あー、あの水色たちは姉妹みたいだね。因みにあの水色は天然だよ、それも日本人」
「え……?ナニソレどんな覚醒遺伝子?」

何が起こったら日本人の髪が天然で水色になるのだろうか……どっかで何か覚醒してそうだ。


「姉妹と言うことはこの試合は同門と姉妹対決になるのですね」
「そうなんだ?織斑一夏と妹さんって同門だったんですね」
「そうだよー。篠ノ之流っていう束さんちの流派」
「……束先輩の流派?全身改造で機械人間にしてロケットパンチとかドリル使えるようにするとか?」
「違うよ?束さんをどういう風に見てるかそろそろ真剣に話そうか?」
「さーせーん、いや束先輩の流派とかホント想像つかないんで」
「かーくんさん、束様の流派じゃなくて束様の家の流派です。束様のうちは神社でしっかりとした流派ですよ」
「ああ、そういうことね」

ふう、ビックリした。束先輩が開いた流派とかあってもまともな訳がないし。基本皆が改造人間になってそうだ、飛蝗ライダーみたいに。

「へーまともな流派なんですね。お、織斑一夏の剣が光セイバーみたいになって全身も輝いた……掠った妹さんも金色に輝いた!?両方百式?」
「白式と紅椿だよ!白式は自分の体力を削りつつ一撃必殺を、紅椿は半永久的に回復するんだよ」
「え、ナニソレ白式フルボッコじゃないですか」
「いえ、競技ですから恐らく制限が設けられているかと。それに一撃でシールドエネルギーがなくなった場合も試合では負けになるかと」

そうか、そうでもしないと試合として成立しないよね。エネルギーが尽きても何度でも起き上がってくるとかゾンビみたいだ。

「しかし消防用ISなのにあの生徒会長よく戦えますね」
「え?消防用じゃないよ?」
「はい?いや、水出すだけじゃないんですか?」
「いやいや、よく見てよかーくん。普通の水じゃあんな動きや防御力ないでしょ」
「うわっ、ホントだ気持ち悪!?水が変な動きしてミサイル防いでる!……大道芸?」
「どうしてかーくんさんはそうやって正解から離れていくのでしょうか……」

えっ、だって水があんな動きするとか普通じゃないし……ほら何か『クリアパッション!』とか言って水蒸気的ななにかが爆発した。ガソリンでも使ったのだろうか、とんだ消防用ISだ……いや、違うのか。

「あれは水の中にナノマシンが入っていてそれで操作してるんだよ、さっきの爆発もそれの応用だね」
「ナノマシン……?何でもありですね」
「まーねー、どれもこれも束さんには興味ないけど」
「面白くないから」
「その通り」
「あっ、織斑一夏と束様の妹様が共倒れしました」

おおっ、お互いにすれ違い様に切り合い相討ちとは格好いい終わり方である。
……水色姉妹の戦いはどうだろう。正直水色眼鏡っ娘に頑張ってほしい、まともな競技用ISは君だけなんだ。

「あっ……水色眼鏡っ娘が負けた」
「IS学園生徒会長は学園最強らしいので」
「なにそれ、どんなヤンキー学校?」
「まあ真の学園最強はちーちゃんだけどね」

そりゃそうである、あれ以上の存在がいるとかやめてもらいたい。……まあ束先輩は置いておいて。

「よし!箒ちゃんやいっくんの成長も見れたし束さんはもういいや!かーくんとくーちゃんはまだ見とく?」
「そうですね、もう少し見とこうかと」
「はい、他の専用機も見ておいてみたいので……束様はどうなさるので?」
「んー、ちょっと今作ってるものを仕上げようかと」
「変なものつくらないでくださいよ?」
「もちろん!くーちゃん、かーくん出来上がりを楽しみにしててね!」
「ういっす、面白いのを期待してます」
「はい、束様。期待してます」

まあ束先輩がつくるものは基本面白いので期待、しかしたまにとんでもないものをつくるので不安もあるが好奇心には負けるのだ。そんな魅力がある、人は好奇心では死なないので問題ない。

「あ、あの中国の空気ガン束先輩がつくって捨てたってやつだ」
「衝撃砲と言われる武装ですね、撃った砲撃が見えず砲身がないため避けることが難しいとされています」
「あれ?空気ガンってそんなにえげつなかったっけ?」
「まあ束様からしたら面白くないし失敗作みたいなものと仰ってましたが」
「面白くないのはともかくあれで失敗作とかやっぱ束先輩すげぇ」


――やっぱり束先輩がつくるものは常識を超えてくる。そして束先輩はさらにそれを超えてくると再認識したのであった。 
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