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オズのベッツイ

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第九幕その四

「あの人達がね」
「ドロシーさんが会った」
「そう、そのクルマーよ」
「けれどあの人達は」
 猫のお話を聞いてです、恵理香は考える顔になって言いました。
「ここにはいない筈じゃ」
「旅行じゃないの?」
 そうでないかとです、猫は恵理香に答えました。
「それでここにいるのよ」
「旅行でなのね」
「あの人達も昔とは違って大人しいから」
「脅かしたりしないのね」
「今ではありのまま。普通に暮らしていて」
 そして、というのです。
「悪いことはしないわ」
「そうなのね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「あの人達をこかさない様にしてね」
「ドロシーさんが最初に会った時と同じね」
「そう、一度こけたら起き上がることが大変だから」
 両手両足が車輪でそれで進むからです、クルマーの人達は一旦こけると起き上がることが大変なのです。
「だからね」
「そうね、あの人達に迷惑をかけない様に」
「気をつけてね」
「そうしないとね」
 恵理香も猫の言葉に頷きます、そしてでした。
 一行は道の向こう側から来るクルマー達に自分達も歩いて近寄りました。そしてクルマー達の前に来てです。
 ベッツイがです、一行を代表して彼等に笑顔で挨拶をしました。
「こんにちは」
「やあ、ベッツイ王女こんにちは」
「ここで会うなんて奇遇だね」
「そうね、私達は真実の池に向かっているけれど」
 ベッツイはクルマー達にもこのことをお話しました。
「貴方達はどうしてここにいるの?」
「旅行だよ」
「ウィンキーの国の北西部を観光しているんだ」
「こうして行きたい面子だけ集まってね」
「それでなんだ」
「こうして皆で回っているんだ」
 そうしてウィンキーの国のこの辺りを見て回っているというのです。
「食べるものは途中のお弁当の木で手に入れてね」
「寝る時はテントで」
「辺りの川や湖で身体を洗って」
「そうして快適に旅をしているよ」
「それは私達と同じね」
 その旅の仕方を聞いてです、 ベッツイは言いました。
「もっとも私達はお弁当の木以外にもテーブル掛けを持ってるけれど」
「広げたらどんなお料理でも出る」
「あの魔法のテーブル掛けだね」
「それを持ってるから」
「食べることには困っていないんだね」
「そうなの、けれど貴方達は観光なのね」
 その目的のことを言ったベッツイでした。
「そうなのね」
「そうなんだ」
「オズの国は何処も楽しいからね」
「何度観ても飽きないから」
「暇だと思ったらね」
「こうして観光を楽しんでるんだ」
「今もね」
 そうだというのです、こうお話をしてです。
 クルマーの族長さん、一際派手な服のこの人が出て来て言うのでした。
「王女に言っておくことがあるんだが」
「何かしら」
「いや、真実の池に行くんだね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとです、ベッツイは族長さんに答えました。 
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