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サロン

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第三章

「どうにも」
「まあそうした場所ですね」
「だからね」
 それでとだ、ポッターはチンに話した。
「ここにいる人達に声はかけられないね」
「観るだけですね」
「観るにしてもサングラスをかけないと」
 それで視線を隠してだ。
「さもないとね」
「変に思われますね」
「そうしたトラブルは避けないとね」
「サングラスのレンタルもやってますよ」
 すかさずだ、チンは商売の話を出した。
「どうですか?」
「いや、サングラスは持ってるから」
「紫外線も視線も完全に隠してくれますけれど」
「だからいいっていうんだね」
「そうです、どうですか?」
「何か借りないと駄目みたいだね」 
 金を払って、であるのは言うまでもない。
「それじゃあ」
「安いですから」
「しっかりしてるね」
「ここで飯食ってますからね」
 笑って返すチンだった、そして実際にポッターか彼からサングラスをレンタルした。そうしてまずは海を楽しんで。
 ホテルでの夕食の後だ、待ち合わせをして。
 彼が紹介してくれたバーに入った、ここでチンは陽気な笑顔で話した。
「この店はいいですよ」
「酒が美味いんだね」
「はい、この国はムスリムが一番多いですが」
「ここはリゾート地だしね」
「しかも私みたいな華僑も多い国ですから」
 こうした事情があってというのだ。
「お酒もあります」
「そしてバーもだね」
「そうです、じゃあ飲みましょう」
「うん、ただね」
「ただ?」
「店の内装はね」
 ポッターはバーの中を見た、その中はマレーシアというよりは二十世紀の禁酒法時代のアメリカの非合法のバーを思わせるものだった。
 静かだが何処か背徳的な、そんな空気の場所だった。色彩はブラックで店の照明はわざと暗くしている。
 バーテンダーもアメリカの雰囲気で音楽はジャズだ、それこそルイ=アームストロングがサックスを吹いていても不思議ではない。
 そのバーの内装と音楽をチェックしてだ、ポッターはチンに問うた。
「ここはアメリカ人が多いのかな」
「ヨーロッパ人よりも多いですね」
 実際にというのだ。
「ここに来る人自体も」
「そうなんだね」
「あと多いのが」
「うん、ビーチでも多かったね」
「日本人が、です」
 アジアのこの国から来た観光客がというのだ。
「カップル、家族で楽しくやってましたね」
「そうだったね」
「日本人は旅行が好きですからね」
「ここにも来るんだね」
「それも大勢、金払いがいいし親切で最高のお客さん達ですよ」 
 チンはガイド役とて明るく笑って彼等のことも話した。
「イギリス人と同じ位ね」
「それはお世辞じゃないかな」
「いえいえ、本当に」
「だといいけれどね。とにかく今からね」
「このバーで飲まれますね」
「そうするよ」
 こう話してだった、そのうえで。
 二人はカウンターの席に並んで座った、そこで。
 二人のところに店のウェイトレスが来た、ウェイトレスはアメリカ風ではなくマレーシアの服であるサロンを着ていた。 
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