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銀泡

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第三章

「いいですね」
「浮気出来たかい?」
「はい、目だけのそれが」
 こう馬に言った。
「充分に」
「それは何より」
「いや、金色に見飽きたら」
「銀色がいいな」
「対比する色ですしね」
「金色は確かにいい、けれどな」
「いつも金色を見ていますと飽きますよ」
 仕事の話をするのだった。
「本当に」
「だから時にな」
「こんな風にしてですね」
「銀色や他の色を見るといい」
「そういうことですね」
「そうじゃ、ただ関さん赤はいいのか」
「まあ見飽きてますけれど、その色も」
 帽子やスカート、楽器等のそれである。
「まあそれでもあの銀色を見ますと」
「よくなるか」
「デザインもいいですね、気に入りました」
「買ってくかい?彼女さんに」
「そうします、お金はありますし」
「それならな」
 こうした話をしつつだ、広幸はそのアクセサリーを見たが馬はその彼にアクセサリーの名前も教えたのだった。
「あれは銀泡という」
「銀泡ですか」
「いい名前だろ」
「あのアクセサリーに相応しい名前ですね」
「全く以てな、それでな」
「きらきら光って、形もそれで光の形も」
 まさにとだ、広幸は女の子よりもその銀泡を見つつ述べた。
「泡ですね、銀の」
「いい名前だよ、まさにその通りの」
「本当にそうですね」
「じゃあ銀泡を買える店を紹介するよ」
「お願いします」
 こうしてだった、広幸は銀泡を買って祭りも楽しんでだった。そうして満足した気持ちで雲南を後にして上海に戻った。そして店で同僚にその旅行のことを話した。
「銀泡は彼女にあげて部屋にも飾ったな」
「その色を楽しんでるんだな」
「ああ、そうだよ」
 こう彼に話した。
「いい感じだよ、家の飾りにもなるし」
「それはいいな」
「ああ、それで思うんだけれどな」
 広幸はここで同僚にこう言った。
「オーナーに言って店の女の子のアクセサリーとか店の飾りにな」
「銀泡を飾ってはどうかっていうんだな」
「そう言おうか。金色の中に銀色もいいだろ」
「いや、止めておけ」
「何でだよ」
「オーナーはとにかく金色なんだよ」
 この色が好きで好きで仕方ないというのだ。
「だからな」
「オーナーに銀泡の話をしてもか」
「銀色にはならないからな、店の中に入ってもな」
「金色になるか」
「銀泡じゃなくて金泡になるからな」
 色が変わってというのだ。
「全部な」
「それはちょっとな」
 そう聞いてだ、広幸は。 
 真剣に考える顔になってだ、こう同僚に言った。
「銀泡がいいのにな」
「意味ないだろ」
「ああ、金泡はいいさ」
 遠慮したいというのだ。
「別にな、じゃあオーナーには言わないさ」
「金色はこれ以上はいいだろ」
「もうな」
 その通りだとだ、広幸も答えた。そして。
 あらためてだ、同僚にこう言った。
「家の中で銀泡見て、他にも銀色や他の色を増やしてな」
「金色とは別の色をだな」
「見るさ」
 こう言ってだ、そしてだった。 
 彼は家の中や彼女へのプレゼントでの銀泡を見て楽しんだ。そうして金色ばかりの店の外で別の色を楽しんだのだった。


銀泡   完


                          2015・5・26 
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