| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

少年少女の戦極時代・アフター

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

After2 “オーバーマインド”

 爆音と悲鳴が上がれば駆けつけてしまうのは、もはや戒斗にも咲にも癖だった。

「インベス!? 何で……!」

 市街地を逃げ回る市民の中心。暴れているのはカミキリインベス――紘汰と舞が地球から全て連れ去ったはずの、インベスだった。

『おうおう、ようやくお出ましかよ。アーマードライダーども』
「しゃべった!」
「オーバーロードか」
『オーバーロード? 違うね。俺はオーバーマインド! カビ臭い先史文明のインベスと同じにすんじゃねえ!』
「オーバー、マインド?」

 カミキリインベスが触手を戒斗と咲に向けて放った。
 戒斗は右に、咲は左に、すばやく避けて戦極ドライバーを装着した。

「「変身!」」

《 バナナアームズ  Knight of Spear 》
《 ドラゴンフルーツアームズ  Bomb Voyage 》

 変身するや、バロンはカミキリインベスに肉薄し、バナスピアを突き出した。バナスピアと触手がびし、ばし、と叩き合う。

『よけて!』

 台詞の次に、視界に果実型の小爆弾が入った。
 バロンは即座にカミキリインベスをバナスピアで突いて離脱した。目と鼻の先で爆発が起こった。

 煙が立ち込め、晴れる。

『くくく……ぎゃははははは! 効かねえ、ちっとも効かねえよ!』

 カミキリインベスは健在だった。

『うそ……いつものインベスならこれでコッパミジンのはずなのに』
『だぁから言っただろうがよぉ! こっからは俺のターンだぜ。たっぷりいたぶってやるよ。特にてめえ。リトルスターマインのアーマードライダー月花! ただで帰れると思うなよ~?』

 バロンは月花と顔を見合わせた。

 あのカミキリインベスは、ビートライダーズでありアーマードライダーである室井咲を知っている。
 ビートライダーズもアーマードライダーも沢芽市にしかない概念だ。つまりこのカミキリインベスの中身は人間、それも沢芽市出身者ということになる。

『あ、あんた、だれなのっ? 何であたしのこと知ってるのっ』
『そーかそーか。分かんねえか。じゃあ教えてやるよ』

 カミキリインベスから表皮が飛び散った。
 その下から現れたのは人間。それもバロンでさえ知っている人物――チームレッドホットのリーダー、曽野村だった。





 月花は愕然として、完全に戦意を喪失していた。

 オーバーロードが人間態になるのなら分かる。戒斗がそうだからだ。
 だが、なぜ普通のインベスの中から人間が出て来るのか。
 しかも月花たちと浅からぬ縁がある男が。

『インベスに、なってたの?』
『おうともよ。だが俺を普通のインベスだと思うなよ。俺はオーバーマインドインベス! インベスになりながらも俺自身を保ってる、選ばれた人間だぁ、ヒャッホーイ!!』

 曽野村は楽しげに飛び跳ねてから、カミキリインベスの姿に戻った。

(今までのインベス退治とほぼ変わらないはずなのに、どうしてこんなにキモチワルイの)

 知性がないインベスになった人が、何の弾みか知性を取り戻した。そして、地球に帰って来て、暴れる。
 オーバーマインドインベス。
 フェムシンムの民ではなく、元は地球人だった、インベス。

『咲』
『っ、戒斗、くん』
『爆弾でかく乱しろ。あとは俺がやる』

 謝りそうになって、呑み込んだ。
 月花はカッティングブレードを1回、拳で叩き落とした。

《 ドラゴンフルーツスカッシュ 》

 両手に持てる限りのDFボムを持ち、カミキリインベスへ思いきり投げ放った。
 カミキリインベスはDFボムを頭の触手を揮って弾くが、弾いた拍子にDFボムは爆発し、煙を上げた。

 カミキリインベスがたたらを踏んだ一瞬、それだけでよかった。

《 バナナスパーキング 》

 バロンは走り、勢いのまま強化したバナスピアでカミキリインベスの胸の中心を貫いた。

『お、俺を、やっても、終わりじゃねえ、ぜ……地球へ、帰ってきた連中は、まだまだいるん、だ……そいつらがお前らを、見逃すと、思うな、よ……』

 バロンがバナスピアを抜いた拍子に、カミキリインベスは膝を突き、倒れると同時に爆散した。
 その様から月花は目を逸らせなかった。

『フン。オーバーマインドがどれほどのものだ』

 戒斗がロックシードを閉じ、変身を解いた。

「今まで通りねじ伏せるだけだ」

 戒斗の言う通りだ。知性がないインベスだろうがあるインベスだろうが、沢芽の街を傷つけるならば、それはアーマードライダーの咲が退けるべき「敵」だ。

 咲もまたロックシードを閉じて変身を解いた。途端に低くなる視界。軽くなる体。対照的に、胸の内は重かったけれど。

 咲は一つ深呼吸して、戒斗を見上げた。

「助けてくれてありがと、戒斗くん。もういーよ。早く行かないと、ヒコーキ乗りそびれちゃうよ」

 戒斗は世界を見て回る旅に出るのだ。ここから先のオーバーマインド問題は、光実たちと協力して、咲がどうにかせねばならないことだ。

「旅はとりやめだ」
「ふぇ?」
「しばらくは沢芽にいる」

 それは、遠回しながら、共に闘ってくれるという意味だと、付き合いから分かった。

「~~っ戒斗くん!」

 咲は込み上げた喜びに任せて、戒斗にタックル同然に抱きついた。 
 

 
後書き
 ついに出せました。新敵キャラ「オーバーマインド」。
 クラークの著作に「オーバーロード」の上位存在に「オーバーマインド」が出ると読者様に教えてもらって以来、出したくて堪らなかったんですよ。
 記念すべき一発目が曽野村なのは決して狙ったわけではありませんので。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧