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秋葉原総合警備

作者:イトヒー
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都外のアニメフェス No.6

「え…?…う、嘘だろ…。」
 完全に秀人はパニックになる。銃で撃たれるなど、予想もしていない。こんなあっさり人生で撃たれることも考えてもいない。パニックになるうちに、一人の男にこの狭い通路で抜かされてしまう。
「…美咲さん達が…やばい…。」
 足に力が入らない。意識ははっきりしているものの、血が止まらない。その銃声は、緊張の渦中にいる陽一にも聞こえた。
「まだ誰かいるのかよ…。」
 迂闊に飛び出すことも出来ない、そう警戒しているうちに、男は少しずつ銃口を陽一に捉えながら歩み寄っていく。ほんの少しの足音に気づいた。
「この野郎!!」
 陽一から奇襲を掛け、拳銃を弾き飛ばす。さらに蹴飛ばし、まず一つの脅威は去った。
「銃刀法違反だな。もう逃げ場はねぇぞ。…千夏さんに何するつもりだ。」
「千夏は…俺が大切に育てたんだ!うちの事務所に連れ戻すんだよ!」
「千夏さんにいろいろ聞いたぞ、強引な教育しちまったんだってな。」
 弱い部分を突かれていることにも、全く気付いていない男。千夏を捕まえることしか、本当に頭にない。その恐怖とはかなり離れたが、まだ油断出来ない美咲達。
「このまま秋葉原まで行かれますか。」
「うん、千葉さえ出てくれれば、後は何とかする。…千夏さん、もうちょっとだから。」
 陽一の心配は無かった。相手は道具を頼りに、ただ目的に向かう男。陽一に勝てるはずは無かった。打ち負かされ、オブジェにぐったりともたれる。
「あとは警察に愚痴るんだな。…美咲、そっちはどうだ。主犯は抑えた。」
『千夏さんは大丈夫、落ち着いてる。けど、わざわざ事務所まで連れていくの?』
「どうもここの警察は怪しい。まだ誰一人来てないんだ。秋葉原の交番辺りの知った顔の方が信用できる。頼んだぞ。」
 手順を言い渡せば、さっさと通話を切ってしまう。日常茶飯事だと、美咲は自分の仕事を果たしにいく。
「うん、秋葉原まで向かって。」
「分かりました。」


「しかし、何でわざわざ千葉まで?さすがにあんな大きな催しなら、警察が動くでしょう。」
 車数台を率いてフェス会場に向かう、ヤクザの美咲の父、木島保仁。経験上、偶然にも陽一の考えと一致する。
「千葉県警ってのは、何かと問題を起こしててな。噂じゃ、簡単に金で操れる腐った奴らとも言われているんや。」
「確かに、まだ会場に警察が来てないらしいっす!」
「早速か…。美咲に電話や!今どこにおる!」


 会場外、数万人の観客が避難及び待機をしていた。会場から陽一の姿が現れた。状況を目撃していた人は、すぐに気付いた。
「あの人!犯人抑えてた警備員だ!」
「犯人捕まえたのか?!」
 一瞬で騒がしくなり、避難場所がパンク状態に追い込まれる。大声で観客を落ち着かせる。あまり得意ではないが、黙らせることは毎日の事。
「落ち着け!!…俺は秋葉原総合警備の風間だ!申し訳ないが、今日のフェスは中止だ!今回の主催会社にでも問い合わせてくれ!」
 まだ騒ぎが続くが、声は数万人によく聞こえていた。一人の男性が聞き返す。
「さっき何が起こったんですか!」
「この会場にお忍びで声優さんが来ていたらしいんだ。どっかのイかれた男がそいつ誘拐するっていう計画が実行される所だったんだ。とにかく、そこらの痴漢や暴力じゃねぇ!全員速やかに帰ってくれ!」
 ようやく事の大きさが伝わった。出口が詰まっているが、皆がぞろぞろと会場を去っていった。とりあえず事故が無いことを祈っておくことに。陽一は再びドームの中に。
「秀人…無事だろうな。」
 止まることなく、会場を往復し続けている。しかし、慌てる様子や息切れが一切ない。走り続けたまま携帯を手に、通話を受け取る。
「美咲か、どうした。」


「陽一!陽一!…助けて!!…千夏さんが!!」 
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