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秋葉原総合警備

作者:イトヒー
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警察も頼りの警備員 No.3

(強盗とか…誘拐とか、俺にはそんなデカいことはできない。ここは…バレないように…。)
 店員の目を盗み、商品のタグを上手く外し、中にしまい込む太めの男。リュックの中は漫画やミニグッズに溢れていた。店員も盗みを気づいておらず、会釈して後ろを通り過ぎる。
(よぉし、警報もならない…。そろそろ帰ろ。)
 お目当てがなかったように、悲しい顔を見せ、かなりの演技で店の外を出た。

 という、今まであったことをボロボロの姿で、正直に話す男。
「ほ、ほんと…すみま…せんでした。」
 事務所の応接スペースに待機させられている男。店には美咲が偶然寄っていて、万引きの瞬間をしっかりと見つめていた。
「あんたの罰金の20%はウチらに来るから、毎度あり~ってことで。警察来るまでゆっくりしてて。」
 万引き犯相手に馴れ馴れしい表情と態度。男の座る椅子に対して、寝転がりゲーム誌をめくっている。陽一は不在だった。出動中の為。


 賑やかなライブハウス。皆で手を振り上げ、コールを飛ばす大迫力のアイドルのライブ。その外でも、ある意味の歓声が起きていた。ライブを聞きつけて、大人気アイドルを誘拐し、我が物にしようと、外から襲ってきたオタク、客になりすましたオタクを引きずり出し、捕まえては倒し、捕まえては倒していた。
「オラァ!」
「ぶへっ…!…つよすぎ…。」
どうしても中に入りたいが、喧嘩ができる訳でもなく、無念に倒れていく。
「見にきた…だけなのに…。」
「ロープとスタンガン持ってて、よく言うよまったく。」
 最後の一人も、散るところだけはリアル感を出し倒れた。勿論、ルールを守り、光るスティックを降って楽しんでいる。危険物も持ってはいない。襲う様子もない。ライブは終わり、陽一はスタッフ楽屋で一息ついていた。今は警備もスタッフ扱いである。5人のグループが陽一に会いにきた。
「陽一さ~ん!今日はありがとうございました~!」
「今日はヤバい奴、一人もいなかったですよ?!」
 確かにライブは定刻に開始、終了した。外で戦ってたなんて言えるはずもない。
「おう、暇だったから俺も観てた。」
 嬉しそうにはしゃぎ、深くお礼して楽屋を出て行った。他のスタッフも陽一に感謝していた。


 報酬と土産をたんまり持って帰った陽一。万引き犯も警察に引き渡され、とりあえず今日の仕事を終えた。
「おかえりー。親から電話あってさ、ウチで飯食うかだって。」
 美咲は暇そうにテレビを見ていた。
「お、ホントか。美味いもんでも持ってくか。」
 いかにも美咲の実家であった。父親はヤクザ、母親は肝っ玉の恐妻。荒いのは両親譲りだが、大人しいのは誰に似たのやら。街から外れた一軒家住宅街に実家はあった。
「はぁい。おぉ、おかえり!あがんな!」
 煙草を吹かして睨みの効いた美咲の母親が迎える。慣れた様子で二人ともお邪魔に。親戚集めて宴会のようだ。
「美咲かぁ!おかえり!」
「ただいま~。」
 寿司職人の叔父から。
「あら、陽一さん!久しぶりね。」
「どうも。これ、良かったどうぞ。」
 肉屋を経営する金髪の祖母まで、全員、インパクトのある人で集まっていた。宴会が盛り上がるのも間違いない。手料理と高級な出前で食卓は豪華に飾られた。
「しかし、警備も大変やな。アイドルの子が切られたらしいじゃねぇか。」
「秋葉だけで精一杯ですよ。2人じゃ限界っすね。」
 元気に肉を食べる祖父が、ニュースの話を始めた。あの話題は絶えない。
「美咲はちゃんと仕事してんのかい?」
「いやいや、今日、万引き犯捕まえた。」
 一つ一つの話題に盛り上がり笑いが絶えず、長い宴会となった。美咲はここで寝ることにし、陽一は遅くなったが事務所に帰る。見送りもしてくれる情の厚い家族だった。
(うぅ…強烈な家族だな…。) 
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