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天空遊園地

作者:ザクロ
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お姉さんと空音

俺は、とりあえずこのお城から出ることを考えた。しかし、敏晴が用意したのか、下はたくさんの子供で溢れかえって通れない
みんな死んだ目をしている。・・・・空音を助けれるなら、みんなも助けられるんじゃないか?
本当のヒーローってなんだろう。ただ一人だけのためのヒーローでも構わない。でも、なるなら
みんなのヒーローに、なってみせよう
今はその策が思いつかないけど、必ず思いついてみせる
とりあえずは、目の前のことだ。下には通れない。なら上を目指そう。上を目指したところで、行き止まりなのはわかってるが、とにかく上を目指そう
走り続けなければ、逃げ続けなければ・・・・
・・・・何から、何から逃げるって言うんだ。俺はこの15年の人生で、目を逸らしたことがたくさんある
でも、この遊園地で、俺は逃げないことを学んだ。空音を助けるために、ただひたすらに、走り続けることも
・・・・そうだ、だから、敏晴からも逃げる必要はない。逃げちゃいけないんだ
じゃあ、なおさら上だ、頂上に行って、敏晴を待ち構えてやる!
お城の頂上、そこで、敏晴を待ち構えることにした。待っている間、そこから遊園地を見渡した
あぁ、なんだか、この風景、懐かしいな。前にも、どこかで・・・・
なんだか、思い出せそうなんだ、あの、知らない遊園地でのこと
・・・・昔、知らない遊園地で迷子になって、泣いていたとき、女の人が、俺にキャラメルをくれた。
そうだ、あの時、俺はいつの間にか知らない遊園地にいた、普通の遊園地にいたのに、突然知らない場所に来た
そして、その女の人は・・・・誰だったか思い出したんだ。でも、不思議なこともあるんだな
ここで本来、子供は年を取ることはない。ここから出ることもできない
まずここは、現実世界とつながっているものの、現実世界ではない
でも、もしも、チケットもなしに、時間と空間が入り混じって、現実世界の遊園地から、ここに迷い込んでしまったとしたら・・・・
・・・・つまり、俺の来た知らない遊園地は、ここだった
そして、帰ることができたのは、また時空が歪んだから。そして、もう一度時空がゆがむ原因を作ってくれたのは・・・・

「空音、お前だったんだな。俺を昔、助けてくれたのは」

夢の国ではなんでもできる、夢の国ではなんでも叶う。それが、時空を飛び越えることだったとしても
きっと、空音はこのあと成長して、あの、俺を昔助けてくれた女の人になるんだろう。思い出してみれば、顔がそっくりだ
「空音、今度は俺の番だ。俺が空音に、本当に恩を返す時だ」
俺は、空音の手を握り、目線が同じ高さになるようにしゃがみ、言った
「何もできないお兄ちゃんで、本当にごめんね。苦しい思いも、辛い思いも、寂しい思いもさせたね。でももう、そんなことをさせないように、俺、頑張るから。敏晴とも、もう喧嘩しないように頑張る。空音ともっと一緒にいれるように、頑張る」
俺はぎゅっと空音を抱きしめた
「空音、一緒に帰ろう・・・・」
「お・・・にい・・・・ちゃん・・・・」
かすかだが、空音の声がした。見ると、死んだような目から、涙が溢れている
俺は空音の手を握り、強く願った
夢の国ではなんでもできる、夢の国ではなんでも叶う。ならば、夢の国よ、叶えてくれ、俺の願いを
空音を、元に戻すという願いを!
その時、空音が、眩しい光に包まれた。俺は、思わず目を閉じた
光が収まり、俺がゆっくりと目を開くと、そこには泣きじゃくる空音がいた
「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・・怖かった、怖かったよ・・・・」
死んだ目をしていても、同じ言動を繰り返していても、その奥深くに、意識はある
特に空音には、それがあった。だから、自分の思い通りに体が動かないことが、怖かったんだろう、辛かったんだろう
その時、俺はポケットに入れていた綿菓子を思い出した。俺は綿菓子を出し、空音の手の上に乗せた
「俺、昔、大きなお姉さんに助けられたんだ、こんな感じの、知らない遊園地で。その時お姉さんは言ったんだ「信じれば叶う」って。そして、キャラメルをくれたんだよ。その恩は、本来、その人に返すものだけど、他人に返すことも、また恩返しだ。だから空音、この恩を空音に返そう。さぁ、雲のような綿菓子だよ。食べたら元気が出るよ」
空音はそれをゆっくりと食べた。口に運んだとたん、空音の顔は、明るい笑顔へと変わった
「ありがとう、お兄ちゃん」
これで、ひとまずは区切りがついた。俺も思わず笑顔になった。
さぁ、最後だ。敏晴と、決着を付けよう 
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