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戦極姫 天狗の誓い

作者:木偶の坊
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第6話 胸糞悪い現実と夢

 
前書き
私は帰ってきたぞー!!

やっと、やっと復帰できた……! 長らくお待たせしました。
いや、まあ楽しみにしてる人なんて極僅かですがね……。
色々あってPCに触る時間すらありませんでした。
これもすべて学校って言う存在の仕業なんだ。
なんだって!? それは本当かい!?

はい、そんな訳で第6話です。相変わらずの駄文ですがね。
そして、最終回まで案外すぐというこの現実。
失踪はしませんのでどうかご安心ください。 

 
さて、いま俺の前には大量の書物が置かれている。
何故か? それは今から少し遡る。

「いやー今日はサボり日和だなー。こういう日は兼続を煽るに限るなー」

廊下を歩きながら俺は兼続の元へ向かっていた。その途中で天井からある気配を感じた。
別に敵ではない。いつも感じている気配だ。立ち止まり、しばらくしたら天井から何者かが降りてきた。

「やあやあ、軍師さん。今日はサボり日和だねぇ」

悪戯っ子のような笑みを浮かべながら段臓殿が俺に近寄ってくる。
俺もいたずらっ子のような笑みで段臓殿に挨拶をする。やっている事は子供っぽいかもしれないが、それは仕方のない事だろう。

「これはこれは、盗み聞きの達人の段臓殿ではないか」
「いきなり酷いなー?」
「すまんね。屑な性格で」
「いいよいいよ。その代り、ちょっと変わってもらいたい仕事――「ヤダ」……」
「まだ最後まで言ってないよ?」
「いいか? 段臓殿。俺が言うのはなんだが……『人』という字がある。これは人が支え合っているとよく聞くだろう? だが、俺はこう思う。1画目の奴が2画目の奴に寄りかかって楽をして、2画目しか苦労していないんじゃってな……。俺の言いたい事が分かるか?」

まあ、要するに俺が苦労しているのに他の奴が楽しているって事に納得がいかないだけだ。
だってそうじゃない? いつもいつも他人に面倒な事は押し付けて自分たちは楽して女と遊んだりしてさ。
絶対未来では祭典とかで誰かに仕事押し付けて、自分らだけ楽をしようとする奴らがいるって!
そして、成功しなかったら自分らの事棚に上げて怒るんだ!

「軍師さんって捻くれた性格してるよね……」
「最高の褒め言葉だ。どんどん言ってくれたまえ」
「でも、いいのかな~? 口を滑らせて兼続殿に言っちゃうかもな~? 『こういう日は兼続を煽るに限るなー』って」
「汚い奴だな。流石忍者、汚い」
「ふーんだ。忍者は皆汚いもーん」

こいつ……言ってやったぜって顔しやがってよ……。
今に見てろよ。雌犬の如く泣くように可愛がってやる。

「いいだろう、変わってやるよ。その代り払うもん払えよ。終わったら法外な額を吹っかけてやるよ」
「あたしお金ないもーん」
「じゃあ体で払え」
「とにかくお願いねー!」

何処からともなく大量の書物を取り出して俺の手に乗せる。この量をどこにしまっていたんだよ……。問いただそうとすぐに段臓殿に向き直るが、既にその姿は消えていた。
こういう時は仕事早いよな。それをもっと別の事に活かせよ。てか思ったんだけど忍の仕事なんて分かるわけないやん。俺はただの軍師だぞ?


――――――

そんな訳で俺は余計な仕事までやる羽目になったのだ。
絶対俺に押し付ける気満々だったな。

「あ~めんどうくせぇ~」

口で言いつつも筆を取って書物に走らせた。





「ええと……ここはこうでここがこうなって……」

資料を見ながら筆を走らせる。段々この作業にも慣れてきて俺は快調に仕事を消化していった。

「終わったぜ……。よーし、遊ぶぞぉ」

筆を置いて立ち上がり、襖を開いて廊下へ出る。




「あ、軍師さんお仕事わったの?」
「ああ、そんな訳で払うもん払え」

段臓殿はいつものいたずらっ子のような笑みから、腹に一物抱えてますといった笑みに変わった。
傍から見ればただ笑みを浮かべているだけで分からないかもしれないが、俺には分かる。
碌でもない事だ。

「軍師さんって結構すごい人? あたしはああいう仕事に苦手なんだけど」
「軍師だからな」

そんなに難しい仕事だったとは……どうやら俺はできる男らしい。

「ねえねえ、軍師さん」
「如何した? 段臓殿」

黒い笑顔を浮かべながら、段臓殿は俺の目を覗き込む。

「軍師さん、忍びにならない? 戦闘専門のさ」

俺はこの誘いに驚いた。なんで急に……。

「え? なんで戦闘専門? 忍って普通情報収集専門だろ?」
「私とやり合う人なんて今までいなかったからさ。軍師さん、武闘派の忍びだよ? それにさっきの仕事をこんなにすぐに終わらせるなんて……向いてると思うんだよな~。何より……」

段臓殿が顔を近づけて来て、俺の耳の辺りで呟く。

「冷たい目をしてるもん……。何事にも躊躇がない顔……。完成された忍の眼だよ?」
「………………」
「どう…………?」
「嫌だね。だって、またお前に仕事押し付けられるの面倒だもん」

笑いを交えながら俺は言った。それを見た段臓殿も笑みを浮かべながら口を開く。

「ありゃ、御見通し? でも軍師さん、その笑みの中に隠した冷たい心。好みだよ?」
「そりゃどうも」
「でも、軍師さんて人を睨み見つけたら人殺しみたいな顔だよね」
皮肉そうに段臓殿が言う。その笑みはいたずらっ子そのものだ。
「話変わったな。てかどういう意味だこら」
「じゃーね!」
そう言って段臓殿は姿を消した。大方天井裏にでも行ったのだろう。しばらく、その場で段臓殿に言われたことを思い返す。冷たい目……段臓殿のような忍びだからこそ分かるのだろうか?
人殺しの顔って、俺ってそんなに怖い顔してるのか?
いや、町に見回りに出た時子供が怖がってたから本当に……。
まったく、これだから目つき悪いのは困るんだ。



「颯馬」
「ヘアッ!?」

後ろから謙信様に声をかけられ、口から変な言葉が飛び出す。謙信様はくすりと笑い、共に町の見回りに行かないかと誘ってきた。



「でも、よかったんですか? 謙信様」
「何がだ?」
「いえ、町へと誘ってくださるのは嬉しいのですが――景勝様と一緒にあいさつ回りをした方が良かったのでは?」

景勝様は謙信様の遠い親戚で、つい先日謙信様の養子となり次代の上杉家を率いる方だ。
彼は口数がとても少なく、何を考えているのかが全く分からない。彼は猿を飼っていてその猿がとても元気で景勝様の代わりともいうべきか、問いに対する受け答えなどをしている。しかも、猿の名前が「サル」なので初対面の人は絶対に困るだろう。ソースは俺だ。

「いや……それでは親馬鹿呼ばわりされるだろう。景勝は人付き合いが苦手そうだし、今から鍛えておかないと」
「はあ……」

人付き合い以前に――あの、底知れぬ無口さの方が、大きな問題とならないだろうか?
噂では彼が率いる部隊は皆、無駄口をたたかず黙々と仕事を果たすとか……。
しゃべってないと集中できない俺とは絶対に馬が合わないだろう。

「颯馬、それほど景勝の事が気がかりであるなら、城に戻って景勝について回るか? 私は別に1人でも出かけてもいいのだが」

ご機嫌斜めになってしまった。別に謙信様なら1人でも何が起こってもどうとでもなるだろうが、1人で行かせたら行かせたらで俺が兼続にどやされてしまう。あいつ、無駄に説教が長いので聞いているこっちとしてはあれだ。その、精神的にくる。

「あ、いえ! 俺は謙信様の家臣ですし、ぜひともお供させてください!(兼続にどやされるのは御免だ)」
「それでいい。景勝は次代を担う者だ。面倒を見るのはまた、同じように若い世代が良い」

その若さで言っても説得力がない件について。はっきり言って景勝様より謙信様の方が若く見える。てか、実際若いんじゃないの? 女性に年を聞くのはアレなので聞かないが。なんだかんだで俺も年上の扱いなんだ……。これでも大体18か19くらいだと思っているが……。(願望)
余裕でお兄さんで通用すると思うんだけどな……。

「もたもたするな。行くぞ颯馬」
「は、はい!」
「あ、御実城様。丁度良かった。少し話が――」

町に入って間もなく、顔見知りの薬売りが謙信様に声を掛けた。薬売りの真剣な表情に、謙信様が顔を引き締めた時――

「きゃあああぁぁっ!!」

あーあ。出ましたよ。なんか起こりましたよ。面倒くさい。女性が悲鳴を上げる典型的な例だ。何故、いつから女性の悲鳴が上がれば事件に発展するという流れになったのだ?
絹を引くような悲鳴が上がり、謙信様は「話は後だ!」と言い置いて声の方へ駆けだした。

「謙信様!! 置いてかないで!! ちょ、足速っ!?」
「何事だ!」

既に人だかりができており、その向こうから聞こえる謙信様の鋭い声がして、俺は急いで人混みをかき分けながら進む。

痛っ! 足踏むな!  ひい!? 誰だ!? 俺のけつを触ったのは!! 
痛みや背筋がゾワッとするのを我慢しながら、人混みを分けていくと、光を弾く白刃が見えた。牢人と思わしき男が町娘に刃を振り降ろそうとしている。
しかし、男と町娘の間に謙信様が割って入る。
男の刃を謙信様が抜刀し受け止める。
「この町にての不用意な抜刀は禁じている! 理由を説明せよっ!」
謙信様が刀を持つ手に力を込めながら怒鳴りつける。
「その女が難癖つけてくるからだ!」
男も怒鳴り返す。

いや、これどっからどう見ても男が無銭飲食して出て行こうとしたら町娘がお代を払うように言っただけだろ。難癖も何も言いがかりをつけているのは男の方だ。
全く、絵にかいたような理不尽だな。
こんなのがいるから世の中良くならないのだろうとつくづく思う。

「や、やかましい。武家に協力するのが民の役目だっ。金をせびろうとする方がおかしいのでないか!」

「何をのぼせた事を言っているのかっ! 私たちは民のおかげで生かしてもらっているんだ。私たちは民の為に尽くさねばいけない!」


「(え!? 武家の人間が生きてるのって民のおかげだったのか……。なるほど、謙信様が民を大事にする理由が分かった。俺も勉強が必要なようだ)」

男は顔色を変え、男は身を沈めると土を掴んで謙信様の顔目掛けて払った。

「な、なにっ……くっ」

謙信様が怯む隙に、男が逃げた。

俺と謙信様はすぐに男を追い駆けるが、その足はしばらくして止まった。
別に見失ったとかではない。男には追いついた。ただし、随分面倒な状況になっているのだ。

「悪いが捕まるわけにはいかないなぁ?」
「ううぅっ……えうくぅっ」
「卑怯な……」

追いついた時、男は子供を人質に取っていた。
女の子は泣いている。
「くっ。どうすれば……」
「謙信様、俺に任せてください。あいつの注意を逸らします」
謙信様に耳打ちし、俺は意識を集中する。

頭の中で風が渦巻くのをイメージする。
男の足元につむじ風を巻き起こす。

「な、なんだ――!?」
「今だ!」
男が驚き、子供から手を離した瞬間、謙信様は刀を構えて男に急接近し刀を振り抜く。


男の首が跳ね上がった。

「え……マジ……?」

俺は空を舞う男の首に口をぽかんと開けてみていた。

「ふう……大丈夫か?」
「う、あ……」

謙信様が女の子の無事を確認する。しかし、問われた女の子は恐怖に定まらぬ瞳を謙信様に向け、その場にへたり込んだ。衣装を血で染めた謙信様を、怯えるようにしてみている。謙信様は戸惑っている。

「うわあああぁぁぁっ!! ああぁっ……あああああぁぁぁぁんん!!!」
「大丈夫だ、辛かったろう?」

優しく声を掛けて謙信様が手を伸ばす。

パチン!

「えっ」

その手を乱暴に払われて、謙信様は驚きの声を上げる。
女の子は声を上げて、首を振って謙信様を拒絶していた。しんと、静まりかえす。
周囲の人々も顔に浮かぶのは恐怖の色だけのように思われた。

「っ! 謙信様!」

カシャン……。

謙信様の手から刀が落ちた。
ふらり……と謙信様は怪しい足取りで歩みだした。

「謙信様!」

ふらふらと歩く謙信様に、周囲の人は1歩2歩と下がり、謙信様の進む方向にぽっかりと道ができた。

「謙信様っ!」

刀を拾い上げて謙信様を追う。その後、謙信様の支えとなりながら城に戻ると、何事かと驚いた弥太郎殿たちに事情を説明した。



胸糞悪い事件から数時間後、俺は再び城下に来て労働していた。



「さてと、死体処理とか何年振りかね……。つーかさ、なんで俺が残業しなきゃなんないわけ? 残業代は出ないし」

今日、床に就こうと思ったら、重臣がやってきて……。

「お前今日ちょっと残業な?」
「……いいですよ」

俺は残業代が出ると思って快く引き受けた。しかし、笑顔満開の俺に重臣は……。

「あーそれと言い忘れてたけど、残業代はでないぞ」
「は…………?」

という訳である。


昔、山で力尽きたもの処理するのを思い出しながら転がっている死体を片付ける。ばっちぃ……。
別に自分の血を処理するのは一向に構わんが、他人の血を処理するとかどんな罰ゲームだよ。
こうやって考えると、医者ってすげえな。

後始末が済むと、城に戻り、俺はそそくさと床に就いた。




真っ暗闇……。ただそれだけ。
何も見えない。何も感じられない。辺りを見回しながら歩くと、少し強い風が吹いた。
風が吹くと、目の前には青い着物を着た女性が現れる。上杉軍に属している者なら見間違う筈がない。
あれは謙信様だ……。しかし、どこか悲しそうに立ち尽くしている。そして、謙信様は歩きだし、暗闇を進んでいく。

「っ!」

何故か、あのまま先に行かせると2度と謙信さんは戻ってこない気がした。俺は急いで後を追うが、足は沼に嵌ったように上手く動かない。声を出して謙信様を呼び止めようにも、俺の口から声は出てくれない。必死に手を伸ばすが、届くはずもない。俺は、そのまま暗い地面の底へ沈んでいった。






「うおっ!」



「はっ……はっ……」


胸糞悪い夢を見た。そして、この夢はこれから起こる事を予期するかのように感じた。

 
 

 
後書き
GE2RBがおもしろすぎてはまっちゃう。
頻繁にインフラでフラフラしているのでもし一緒にやる事になったらその時はよろしくお願いします。
かなり斬新なコードネームをしているので分かる人には1発でわかるかも知れません。

あとがきで書く事じゃないですね……。申し訳ありません。 
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