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101番目の百物語 畏集いし百鬼夜行

作者:biwanosin
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第一話

◆2010‐??‐??T??:??:??  “???”

 私の友達の友達が実際に体験した話なのですが………
 おや、どうしました?その、『ああ、やっぱりそれか………』みたいな目は。

 この話は本当に、実際に有った話なんですよ?って、この切り返しすら予想されていましたか・・・
 それにしても、どうなんですか?こんな美しい美少女を捕まえて、狼少年でも見るような目を向けるのは?これでも女なんですから、せめて狼少女にしてくださいよ。
 なんにしても、熱っぽい視線で見られたところでノーセンキューなんですけど。
 私には、心に決めた人がいますから。………彼女もちのような状態ではありますが。
 って、そんな話は今どうでもいいんです。ええ、友達の友達に有った、本当の話ですよ。

 驚くことに、その人は伝説の英雄となったんです!

 ………って、またその目ですか。『ああ、やっぱりそれか………』とでもいいたそうな。
 いや、本当の話なんですよ?本ッ当に凄い伝説なんですって。レジェンドなんですって。
 いまどきレジェンドになる人なんていないでしょう?ほら、少しは興味を持ってくれませんか?
 まあいいですけど。貴方が興味を持つまで勝手に話して上げますよ。
 別に聞いてなくてもいいですよー。テキトーに相槌を打ったり、感心したり、そんな感じでいいです。
 あっ、でもあんまり声を聞きこもうとしないでくださいね?ちょっと掠れてるので、コンプレックスなんです………
 話を戻しましょう。
 さて、その友達の友達、英雄になったあの人について話しますと………

 なんと、あの人はハーレムまで築いてしまったんです!

 おやおや。興味が出てきたみたいですね?それでもまだその目をやめませんか。
 なんにしても、男子と言うのは皆ハーレム主義でもあるのですか?一人の子が選べないから、いっそ全員を、みたいな。友達の言葉を借りると、モテモテ幻想、みたいなのが。言いえて妙ですね、事実幻想ですし。なんせそういう時の女子って、ものすっごく嫉妬深いらしいですから。『あの女にも色々したんだから、私にもするべきである!むしろしろ!』みたいになるんだそうです。
 具体的には………プレゼント選びとかがかなり大変ですね。同じ値段であり、同じくらい悩んだものであり、全て別の物でないと。こんな面倒なことが他にも色々と。
 そう言う気遣い、貴方には出来ますか?思いもよらなかったでしょう?『みんなに好かれてるからそう言うのは大丈夫だ!』とか、大丈夫なわけないですからね?皆が皆、特別に扱われたいものなんですから。
 その『特別』に自分が当てはまらないと分かったなら、もう『グサーッ!』ですよ?『グサーッ!』。そのまま『グリグリ』っとされて、内臓までグッシャグシャです。まず生き残れませんし、生き残れてもこれまで通りの生活なんて不可能です。消えない傷まで残す。徹底的にやっていきますよ。
 他にも、『ドンッ!』とされるかもしれませんね。あれです、威力で『特別』にあたる女を潰して、音の恐怖を男に植え付ける。銃声って実際に聞いてみると中々に凄いんですよ?県に一か所くらいは射場があると思うので人生で一度くらいは行ってみるべきです。そして、実包を撃つところをすぐそばで見る。いい人生経験になるでしょう。
 あ、でも・・・頻繁に通いすぎると銃声を聞いても何とも思わなくなっていくんですよね。射場に行くと『あー、やってるなぁ………』くらいに思いながら本を読んだり、それこそ二次創作書いたりしてるこの人(作者)もいるみたいですし。慣れって怖いものです。
 っとと、思いっきり脱線してしまいました。そこじゃないのです。
 いえ、それもちょっと重要だったりしますけど、本題はそこではないのです。
 ………なんでしたっけ?ちょっと読み返しますので………そうでした、伝説の英雄になったあの人の話でしたね。

 都市伝説ってご存知ですか?
 ええ、都市伝説。アーバンレジェンド。
 『フォークロア』って言われる、とか。それにしては聞きませんけど。
 ありますか?都市伝説の話をするときに『そう言えば、こんなフォークロアが』なんて言う事。ないでしょう?もしあったとしても、相手は何の事だか分りませんよ。
 たまーにファッション用語として出てくるくらいです。民族衣装ちっくな服ですよ。私は結構好きです。
 でも、知っていますよね?都市伝説。最近では誰でも一つくらいは話せるんじゃないかと思います。
 眉唾ものだけど、なんだかありそうなお話。
 内容はホラーなのに、どこか笑えてしまうような要素も残っているから、意外と広い年齢層に受け入れられている、口伝で伝わっていく伝説たち。
 それが、都市伝説です。

 それで、実はその彼は都市伝説になったんです。以上。
 ………ん?なんでしょうか?
 もっと詳しいことが知りたそうな、そんな顔をしていますね。まだその目だけは消えていませんけど。
 もっと異性の話が効きたいのかと思ってましたよ………って、それはそれで聞きたいのですか。
 あなたの好きな人の、恋人の、そんな人たちのスタイルについて語るのもそれはそれで楽しそうですけど、まあそれは置いておきましょう。
 はなすにしても、まずはその目をどう止めさせましょうか・・・あ、なるほどなるほど。そういうことですか。
 ようやく納得ですよ………貴方のその目の理由(わけ)

 あなた………他の三枝さんのお話を聞きましたね?
 私の語りに近いものと言う事は、私のお姉さまが語っておられたあれですね。『正史』とでも言えば伝わりますか?とにかく、それをお読みになられたのでしょう。
 だから、どうせ内容も同じものになるだろう、と・・・そう言う事でしたら、前もって言っておきましょう。

 このお話は、別の物ですよ?

 正史の人、そうでない人、そして正史とは違う『主人公』によって織りなされる新しい物語。
 それこそが、この物語なのです。

 お、ようやくその目をやめましたか。まだ一部残っていますが、まあそればっかりは仕方ありません。正史の方も一部登場なされますから、そればっかりはどうしようもないのですから。

 では、そろそろその『都市伝説』の英雄となったあの人のお話をしましょうか。
 それでは………そうですね………
 この三つの中から選んでみる、と言うのはどうでしょうか?

 一番。再現される夢。
 二番。下手なクラリネット。
 三番。黒死病の魔女。

 さっきの彼が入っていない?ええ、そうですよ。
 何故なら彼は―――これらの伝説を手に入れた、真の伝説マスター。

『畏集いし百鬼夜行』の主人公なのですから。

◆2010‐05‐11T17:30:00  “Yatugiri City”

「ハァ……ハァ……ここも、やっぱり……!」

 正直、何が起きてるのかさっぱり分からないのだが、安全な場所を求めて俺は走り続けている。
 状況を説明してもらおうにもこの街では今現在、人と言う人が全員俺に二種類の行動しかとらない。
 いないかのように振る舞うか、走り去る俺をにらみつけるか。
 こんなにも街中を走り回っているというのに、行きつけの本屋も、優しいおばちゃんと同級生でもあるそこのお孫さんが手伝ってる駄菓子屋も、人でにぎわう商店街も、そして見なれた小さな山のある公園前でも。
 恐怖で埋め尽くされている俺の表情を見ても、誰もリアクションを起こさないのだ。
 試しに車に飛び込んでも、車はすり抜ける。
 街中の人々から俺と言う存在が消えたのか、俺が実は死んでいて幽霊になっているのでもなければこんな状況にはならないだろう。それか、ホラーものの小説に飛びこんでしまったのか。
 主人公を、誰かを頼ることができない状況に置き、読者の中にだんだんと恐怖を積もらせていく手法。もしもこの状況を求めていた作家なり編集なりがいるのなら、称賛を贈りたい。もう十二分に恐怖しているし、死んでもいいからこの恐怖から解き放ってほしいと思っている。

 こんなことになるのなら、あの携帯を手に入れなければよかった、とか。
 もっと先輩と仲良くなっておけばよかった、とか。
 親友に都市伝説について詳しく聞いておけばよかった、とか。

 今ではもうどうしようも出来ないことが、走り(逃げ)続ける俺の頭の中でぐるぐると回転しては、心をマイナス方面におとしていく。何なんだ、一体。どうして俺がこんな目に会わなければならないんだ。こんな状況を作り出したやつがいるのなら文句の一つでもいいながら一度だけ命令を聞かせてやりたい。

 そんな怒り交じりの後悔を抱いたところで、状況は変わってくれないようだ。むしろ、どんどん引き込まれていく。

「ハァ……ハァ……ハァ……ッ!?」

 さっきのから二十分くらいがたち、また同じ周期で来た。
 視線の先に有るのは、チェーン店のコンビニ。旅行先でもよく見かけるそのお店の姿にホッとして近づきそうになる体をどうにか抑え込もうとする。
 このままじゃダメだ。何の意味もなくなる。どうすればいい………どうすれば………あれだ!

 勝手にコンビニに歩き出す体をどうにかして抑え、進んだ結果足下に来ていたマンホールのふたを開けてそこに飛びこむ。
 その瞬間、コンビニの方に目を向けると………目を見張るような美しい少女が、口を動かしていた。
 その声は聞こえないが・・・何を言っているのかは、分かる。
『夢と違う事をするなよ』、と言っているのだ。

 それを認識した瞬間に胸ポケットに入れている黒い携帯電話が。
 『ヤシロ』と名乗る少女からもらったそれが制服越しにも分かるほどに熱を発していて、うっすらと赤く光っているのが分かる。
 この『Dフォン』は危険なことがあるとこうなるようで、つまりこれはかなりの危険があるという事でいいだろう。
 つまり、『死』が待っている、と。

「いやいやいやいやいや!」

 こんなことを考えていたら本当にそうなる。なりかねないというのは、もう充分に理解したはずだろう!

 これが読者側であったのなら、『あ、コイツ死んだな』とかさらっと考えるんだろうけど、残念なことに今は当事者となっている。絶対に死にたかない。これから先、ホラーもののキャラ達を心の底から応援することにしよう。彼らだって生きているし生きたいんだ。うん。

「『夢と違う事をするなよ』か………」

 言われたであろう言葉を呟くだけで、足は震えそうになるし、股間は何かふわふわしてくるし、心臓はドキドキするし、瞬きは多くなる。そして何より、今視界に有る物が全て夢で見たように思えてしまう。
 それなりに肝っ玉は据わってると自負していたのだが、こうして命の危機に立たされた今それがどれほどまでに愚かな考えだったのかを知った。

「ああもう、何でこんなことに!」

 肺に残っていた空気を怒りの言葉に代えて吐き出し、新たな空気を取り込む。
 と、そこで脳に酸素が回ったのかこの場面も夢に有ったことを思い出して・・・梯子を上って地上に戻る。

 今回は音が響いて直接言葉が聞こえてきたが、それから逃げるように再び走り出す。
 その先にすら夢で見た風景があるので、それに背を向けてもう一度走る。

 残念なことに、俺がこんな目にあう理由―――心当たりならいくつかある。
 確か、最初は………昨日の朝、親友のティアとのトークタイムだったはず。
 
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