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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第九話 思い出される過去

翌日の朝、普段の格好のソレイユ、ルナは五十五層グランザムへと向かっていた。今日からキリトの血盟騎士団としての活動が始まることもあり、暇だから冷やかしついでに行く、とはソレイユの言葉である。
しかし、そこで待っていたのは意外な言葉であった。

「訓練・・・・?」

「そうだ。私を含む団員四人のパーティーを組み、ここ五十五層の迷宮区を突破して五十六層主街区まで到達してもらう」

そう言うもじゃもじゃの巻き毛の大男の斧戦士。そんな斧戦士の言葉に意をとなえる者がいた。

「ちょっとコドフリー!キリト君はわたしが・・・・」

当然のごとくアスナであった。しかし、食ってかかるアスナにふてぶてしい態度で大男は言い返した。

「副団長といっても規律をないがしろにしていただいては困りますな。実際の攻略時のパーティーについてはまあ了承しましょう。ただ、一度はフォワードの指揮を預かるこの私に実力を見せてもらわねば。例えユニークスキル使いといっても、使えるかどうかは別」

「あ、あんたなんか問題にならないくらいキリト君は強いわよ・・・・」

「まあまあ、落ち着いてアスナ」

ゴドフリーの言葉に半ギレしそうなアスナをなだめ、ルナはゴドフリーに向きなおり、口を開いた。

「キリト君のことはわかったけど、なんで私までここに呼ばれたの?」

「団長からの命令です」

「ふーん、そう・・・・」

ゴドフリーの言葉にさも興味なさげに答えるルナ。そんなやり取りがされる中、アスナが我慢の限界といったようにキレそうになっていたが、キリトがそれを制し口を開いた。

「見たいというなら見せるさ。ただ、いまさらこんな低層の迷宮で時間をつぶすのはごめんだな。一気に突破するけど構わないだろう?」

「そうね。それでいいんじゃない?」

そういうキリトとキリトに合意するルナ。そんな二人にゴドフリーは不愉快そうに口をへの字に曲げると、三十分後に街の西門に集合、と言い残して去って行った。

「なあにあれ!!」

「まあまあ、落ち着いてアスナ」

憤慨したように言うアスナに落ち着くよう声をかけるルナ。しかし、アスナはそんなことお構いなしにブーツで傍らの鉄柱を蹴飛ばすが、少しして落ち込んだように呟いた。

「うう、今日は一緒にいられると思ったのに・・・・。ルナ変わって・・・・」

「そんなことすれば、またゴドフリーがへそ曲げるよ?」

アスナのつぶやきに苦笑しながらルナは答えた。そこで今まで黙っていたソレイユが口を開いた。

「まあ、頑張ってこい。けど、無理はするなよ」

「はぁ~い!」

ソレイユの言葉に元気よく返事をするルナ。その隣ではキリトがアスナに一声かけ手を振ってギルド本部を出て行こうとするところだった。ルナはキリトに追従する形でギルド本部を出て行く。それを見送った後、残されたソレイユとアスナはともにギルド本部を後にした。



「で、この後どうするんだ?」

「え、えっと・・・・。どうしようか?」

困ったようにソレイユの質問に頬をかきながら答えるアスナ。そんなアスナを見て呆れていた。

「・・・・・ノープランなら、ここでおとなしく待ってるか?」

ソレイユの言葉に頷くアスナ。それから並んでグランザムを歩いていくソレイユとアスナ。しかし、それでもアスナの顔が浮かないので問いただすため口を開いた。

「なにか、気になることでもあるのか?」

「・・・・うん、実は・・・・。今回のパーティーにクラディールがいるの・・・・」

「・・・ふぅーん、なんかの偶然なのかね?」

「ううん。きっとゴドフリーの仕業よ。ゴドフリーって気はいい人なんだけど、少し抜けたところもあるの。たぶん、同じギルドになったんだから過去のことは水に流せーとか、そういうことだと思うんだけど・・・・」

「十中八九無理な気がする」

アスナの言葉を聞き素直な感想を述べるソレイユ。アスナもそれに同意するかのごとく頷いている。いや、実際同じ意見なのだろう。
そんなアスナをよそにソレイユはグランザムにある数少ない露店で食べ物を購入していた。二つ購入したうちの一つをアスナに投げ渡し、購入したもう片方の食べ物を食べていく。
突然のことにキョトンとした表情で呆けていたがソレイユの意図を察して渡された食べ物を食べ始める。食べているときもシステムウインドウに表示されているマップから目を離さないでいるアスナの姿を見たソレイユは呆れながらつぶやいた。

「そんなに旦那のことが心配なのか・・・・・」

「ッ!?~~ッ~~~ッ~~~!」

ソレイユの不意打ち気味の言葉に慌てて、咄嗟に食べていたものを飲み込もうとしたが、そんなことをすれば喉に詰まることは必至である。詰まったものを飲み込もうとするがうまくいくはずもなく、それを見たソレイユがどこからともなくコップ一杯分の飲み物を取出し、アスナに手渡した。
受け取ったアスナは一気に飲み干し、のどに詰まっていたものを流し込んだ。

「あ~・・・・・、大丈夫か?」

肩で息をしているアスナに気まずそうに話しかけるソレイユ。そんなソレイユにアスナは涙目で睨みつけながら口を開いた。

「い、いきなりなんてこというのよ!危うく死んじゃうとこだったじゃない!」

「いや、この世界で喉詰まりで死ぬことはないと思うんだけど?」

「そ、それはそうだけど・・・・・」

ソレイユの言葉を徐々に思い出したのか、言いかけた言葉もだんだんと尻すぼみになっていき、終いには、顔を真っ赤にして俯いてしまう。それを見たソレイユは恐る恐る口を開いた。

「もしかして、まだそういう関係じゃないの・・・・・?」

ソレイユの言葉に俯きながら頷くアスナ。その姿には哀愁が漂っているのは錯覚ではないだろう。
傍から見てもアスナがキリトのことを好いているのは一目瞭然なのだが、当の本人はその気持ちに気が付かない。
そんな話を聞き、まあ、人間、自分に向けられる好意には疎いものだからな、などと考え始めるソレイユ。気まずい雰囲気が流れる中、先ほどまで哀愁を漂わせていたアスナが口を開いた。

「・・・・そういうソレイユ君こそどうなの?」

「うん?なにが?」

アスナの言葉に首を傾げるソレイユだが、それだけではアスナの追及は止まらなかった。

「ルナのことよ。どう思ってるの?」

「恋人」

「・・・・・えっ!?・・・つ、付き合ってるの!?」

「付き合ってますよ」

驚いているアスナを見ていたずらが成功した子供のような笑顔で眺めているソレイユ。それを見たアスナが頬を膨らまして拗ねたようにそっぽを向きながら言った。

「もう、なんで教えてくれなかったのー!」

「そっちのほうがおもしろそうだったから」

アスナが拗ねたような口調にソレイユはしれっと答える。その答えが不満かのように、アスナがソレイユにつっかかっていくが、当のソレイユはどこ吹く風な状態で受け流している。
すると、不意にアスナが顔を引き締めて真剣な表情で聞いてきた。

「・・・ねぇ、ソレイユ君はどうしてギルドを避けの?」

「・・・言わなかったっけ?」

「聞いてないよ!昨日聞こうとしたら、勝手に帰っちゃったでしょ!」

「そうだっけ?」

「そうです!今日という今日は聞かせてもらいますからね!」

わざとらしく首を傾げるソレイユにアスナは頬を膨らませながらお怒りになっているが、全然怖くない、というのがソレイユの感想だったりする。

「別にギルドを避けているわけでも、所属してなかったわけでもねぇぞ?」

「えっ?そうなの?」

ソレイユの意外な言葉に驚くアスナ。そんなことに構わず、ソレイユは言葉をつづける。

「どちらかといえば、俺が避けてるんじゃなくて、ギルド側が避けてるんだよ」

「ギルド側が、避けてる・・・?」

ソレイユの言葉の意味が理解できないアスナ。そんなアスナを見たソレイユは苦笑いをしながら説明を続けた。

「俺は奇人変人だからなぁ。そこらへんが嫌われる理由だろうよ」

「奇人変人って、そんなこと・・・」

「ない、ってか?」

ソレイユの言葉にアスナは頷く。そんなアスナをからかい口調でソレイユはおちょくる。

「ならお前も奇人変人ってわけだ」

「ちょっと!?私は、普通、です!!」

「と思ってるのは本人だけだったりする」

「身もふたもないこと言わないで!!もー、話がそれてるよっ!!」

無理やり軌道を修正するアスナを面白そうに笑いながら眺めているソレイユだが、軌道修正されたので仕方なく続きを話していく

「まぁー、そんな状況なので、俺はギルドに入ることができずにいるのです、まる」

「ふ・ざ・け・な・い・で!!明らかにふざけてるでしょ、君は!!」

「もちろん」

「素直に肯定するなー!!真剣な私が馬鹿みたいじゃない!!」

「実際、他人のプライバシーに土足で入ろうとするやつはバカ以外いない」

「なんですって!!」

「それに、お前は知ってるはずだぞ・・・」

いったん言葉を区切り、真剣な表情でアスナに向かって口を開いた。

「俺が《剣聖》と呼ばれる所以を、その名が示す意味を・・・」

「!?」

その言葉と共に思い出されたのはあの時の出来事であった。



ある日の昼時のこと、ソレイユは四十八層主街区リンダースにあるリズベット武具店に向かっていた。
ひょんなことでその店のオーナーと知り合い、レベルの高い鉱石を取ってくるよう依頼され、その依頼品がそろい終えたためこれから納品しに行くという訳である。数分歩くと目的地が見え、木製のドアを開けて中へ踏み込んでいくと、

「いっ、いらっしゃいませニャン!」

「いらっしゃいませニャン!」

という声が響いた。店に入ったソレイユを迎えたのは、羞恥に震える少女と元気いっぱいなノリノリの少女だった。その頭には猫耳を生やし、スカートからはくねくねっとまがった鈴のついた長い尻尾があった。

「・・・・・ふむっ」

少し考えるそぶりをした後、ソレイユは早々とウインドウを操作して一つの結晶アイテムを取り出した。
それは記録結晶であり、簡潔に述べるならばSAOにおけるカメラである。そして、カメラ(記録結晶)を取り出したソレイユは二人に向かってお決まりのセリフを口にした。

「はい、チーズ」

その言葉と同時にソレイユはシャッターをきった(記録結晶を使った)。コスプレ少女アスナは顔見知りであるソレイユの登場に驚き、ソレイユを出迎えた形(膨張あり)で固まっていたが、もう一人のコスプレ少女であるルナはしっかりとポーズを決めていた。
少しの間をおいて、写真を撮られたことを理解するや否や、ソレイユにつかみかかっていく。

「ソ、ソレイユ君!!い、今の消して!!」

「よっ、アスナ。ひさしぶり」

「う、うん。ひさしぶりだね・・・って、そうじゃなくて!!」

しかし、爽やかな笑顔でマイペースにのんきな挨拶をするソレイユは記録結晶を奪おうとするアスナを笑いながら飄々と躱している。

「わ、笑いごとじゃないよー!!いいからそれ消して!!そんな写真ばらまかれたら外歩けなくなっちゃうよ!!」

「安心しろ、ばらまくつもりはない」

「そ、それじゃあ・・・」

「ああ、売り上げの三分の一はお前のものだ」

「そういう意味じゃなーい!!」

暗に、ばらまかずに売るつもりである、というソレイユにアスナが鬼気迫る勢いで抗議詰め寄るが、頭に猫耳をつけ、スカートの下からのびる尻尾の鈴をリンリン鳴らしながら、涙目で詰め寄られても威厳のかけらもなく、逆にかわいいだけである。
そこへ、アスナの行動を笑いながら見ていたルナがソレイユに気になっていることを聞いた。

「ねぇ、ソレイユ。私は似合ってる?」

「よぉ、ルナ。似合っててかわいいよ」

「えへへ、ありがと」

ソレイユに褒められ、顔を赤らめながら嬉しそうにほほ笑むルナ。それを見た今まで笑いながら事の成り行きを見ていたこの店の店主リズベットは疑問に思い尋ねた。

「っていうか、ルナ。あんたは恥ずかしいと思わないの?」

「ぜんぜん、とは言いきれないけど・・・。まぁ、たまにはこういうのもいいんじゃないかなーって」

「あっそ」

そんなやり取りがある横では、まだ、アスナがソレイユの持つ記録結晶を奪い取ろうとしていたが、なかなか上手くいかずにいた。

「そろそろあきらめろ。年貢の納め時ってやつだ」

「使い方間違ってるからね!!」

「知ってるよ、そんなこと」

「もう、私をおちょくって楽しい!?」

「楽しいっ!!」

アスナの言葉に笑顔で断言するソレイユ。それを聞いたアスナは膝をつき、影を落としてしまう。そんなアスナを不憫に思い、苦笑いをしながらルナがアスナのフォローにはしった。

「それくらいにしてあげたら、ソレイユ?」

「ん、そうだな。なかなか楽しめたしな」

そういって、記録結晶をアスナに投げ渡す。受け取ったアスナは頬を膨らませながら、いかにも怒っていますと言いたげな声でソレイユに文句を飛ばした。

「まったく、もう!!いつもいつも冗談が過ぎるよ、ソレイユ君は!!」

「悪戯が趣味だからな」

「そういえば、今日はどうしたのよ?」

肩を竦め、笑いながら反省の色を見せないソレイユにアスナが叱ろうか、などと考えていたが、リズベットが気になったことをソレイユに尋ねてしまったため、出来ずに終わってしまった。

「おっと、そうだった。頼まれたものがそろったから納品しに来たんだよ」

ウインドウを操作してトレードウインドウを呼び出し、リズベットからの依頼品を表示する。それを確認した後、リズベットは報酬額を入力してトレードを了承する。

「確かに、受け取ったわ」

「了解っと、これにて依頼は終了だな」

リズベットの言葉に頷くソレイユ。それを遠巻きに見ていたアスナは二人がしていることに疑問を感じて尋ねてみた。

「二人とも何してるの?」

「リズっちに頼まれたものを渡してたんだよ」

「頼まれたもの?」

「そっ。リズっちの手におえない入手難易度の高い鉱石とかをね」

「へぇー」

ソレイユの言葉に納得するアスナだったが、もう一つの疑問が浮かび上がってきた。

「でも、ソレイユ君は一人で大丈夫なの?」

「大丈夫だよ~」

心配そうな表情で聞いてくるアスナに気の抜けた声でソレイユは答える。
そのためか、アスナが心配げな表情を一層濃くしたその時、身の危険を感じたソレイユはその場(入り口の延長上)から離れた。その直後、勢いよく扉は開かれ、小柄な影が涙声と共に突っ込んできた。

「リズざ~~~~んっ!!」

そして、入り口の延長上にいたリズベットは小柄な影の体当たりをもろにくらい、呻きながら床に押し倒された。もちろんここはアンチクリミナルコードが働く圏内のためダメージはゼロである。

「いたたたたっ。シリカ、いきなり危ないじゃない!?」

「だ、だっで~」

引き離しながらお怒りになるリズベットだが、体当たりを食らわした影、シリカは啜り泣いている。それを見たソレイユの悪戯心が働いた。

「おいおい、リズベット。あんまり小さい子を泣かすなよな」

「ちょっ。違うわよ!あたしじゃないわよ!?」

ムキになって反論してくるリズベットを面白そうに見ているソレイユ。そんなソレイユに腹が立ったリズベットはソレイユにつかみかかろうとするが、それより先にルナがシリカの頭を撫でながら声をかけた。

「こんにちは、シリカちゃん。とりあえず落ち着こうか」

ルナの言葉を聞き、シリカは気持ちを落ち着かせる。そして、見知らぬプレイヤーがいることに気が付き再び慌てはじめる。

「あ、あの、その、えっと・・・」

「ん?ああ、はじめましてかな、≪竜使い≫シリカ君。俺はソレイユ。よろしくな」

「は、はい、よろしくお願いします、ソレイユさん!こっちは使い魔のピナです」

シリカの紹介に、シリカの頭の上にいたピナはきゅるっと一声鳴いて答えた。自己紹介が終えたところで、リズベットは先ほどのことを聞いた。



「なるほどね、武器が壊れ、パーティーメンバーに迷惑をかけてしまいそのことに責任を感じてしまい、知り合いであるリズのもとに来る途中に我慢しきれずにああなった、と」

「はい、パーティーの人は問題ないって言ってくれたんですけど・・・」

「実際に死んでしまった時のことを考えてしまったわけか」

ソレイユの言葉に頷くシリカは再び目に涙をためはじめてしまったが、次のリズベットの言葉に真剣な表情で答えていく。

「で、今回はどんな武器がいいの?」

「できれば、いつものより一つ上の・・・・いえ、もう二つ上のランクの武器を希望します!あっ、お金ならあります!」

「う~ん、なら素材を取りにいかなくちゃダメか・・・」

そういうと、リズベットはチラチラっとソレイユのほうを見ている。その視線を受けたソレイユは、思いっきり大きなため息を吐くと首を縦に振った。

「あ~、はいはい、わかりましたよ。とってくればいいんでしょ」

「さっすが~、話が分かるじゃない!」

ソレイユの返事にリズベットは調子よく答えるが、シリカは申し訳なさそうにしていた。

「あの、でも、初対面の人にそこまでしてもらう訳には・・・」

「気にしなさんな、単なる気まぐれだよ」

「でも・・・・・」

「なら、お近づきのしるしにってことでどうだ?」

「は、はい!なら、お願いします!」

ソレイユの言葉に元気よく頭を下げるシリカ。アスナとルナは微笑ましげにそのやり取りを見ていたが、ある疑問がルナに生じた。

「でも、どんな鉱石を取りに行くの?」

先ほどソレイユが納品した鉱石もなかなかランクの高いものであったが、シリカの要望に応えるとなると、鉱石のランクが足りなかった。ルナの言葉を聞いたリズベットは不敵に笑いながら口を開いた。

「ふっふっふっ、それならば問題ないわ。最近出回った噂があるのよ」

リズベットの話では、六十層にある小さな村で受けられるクエストがあり、そのクエストの内容を聞く限り武具素材の入手クエストだという。発生する層が高いため、ランクの高いインゴットが手に入るのではないかと考えたプレイヤーやギルドがこぞって挑戦したということであったが、問題が発生した。クエストのダンジョンに言ってみると入り口が見当たらず中に入ることができないのだという。しらみつぶしに探しても見当たらないので成功者がいない、といったものであった。

「あ~、それおれも聞いたことあるなぁ」

「私も聞いたことあるけど・・・、誰にもクリアできてないのに私たちにクリアできるの?」

「心配ないわ!なんたってこっちにはKoB副団長様と参謀長様がいるんだから鬼に金棒よ!!」

「そういう問題じゃない気がするんだがな・・・。特に、シリカにリズベット、一番危ないのはお前ら二人なんだぞ。今、レベルいくつだ?」

「六十五よ」

「え、えっと・・・六十一です」

「・・・・たりねぇな。下手したら死ぬぞ」

「そこは、ほら。あんたが守ってくれれば万事OKよ!」

「・・・・・・・・・」

「最初から人任せはだめだと思うんだけど・・・」

「と・に・か・く、ここにいる全員でのぞめば必ず勝機はあるわ!」

リズベットの言葉に言葉が出ないソレイユ。そんなソレイユの代わりに身も蓋もない言葉に突っ込みを入れるルナだが、スルーされてしまう。ソレイユの呆れた視線とルナのつっこみを無視してリズベットは言葉を続けた。
ふと、アスナがリズベットの言葉を聞いて疑問に思ったことを口にした。

「それはいいとしても、いまからいくの?」

「当たり前よ、善は急げって言うでしょ!」

「急がば回れという言葉もあるがな」

「がたがた言ってないでさっさと行くわよ!」

さらにソレイユのつっこみすら、ねじ伏せられてしまう。
完全にやる気モードのリズベットに幸先が不安になってしょうがないソレイユであった。
 
 

 
後書き
という訳で完全なオリジナルに突入していきます。
あの時の出来事とはなんなのか、ダンジョンに入ることのできないクエストの真相とは?
次回にこうご期待!!

・・・・・・なんてことが言えればいいんだけどねorz
とりあえず楽しみにしていてもらえれば幸いです
それから・・・・・・
リ、リズベットってこんな感じでいいのかな?

※物語のちょっとした設定
記録結晶を取り上げても撮った画像が消えるわけではありません
アスナは記録結晶を使ったことがないという設定で、そこらへんのことは今ひとつわかっていない状態。
なので、ソレイユから記録結晶を受け取っただけで安堵しているという訳です。 
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