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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-7 二人の優しさ
  Story7-7 絶望の淵

フローラside


私にシャオン君の攻略メッセージが来たのは、ある日の夜だった。

『明日、Boss攻略の情報のために58層ダンジョンに行く。

48層のときみたいに時間がかかるから……少し、家を空ける』

48層のダンジョン攻略の後、私のことを心配し、攻略が1日以上かかるときは私にメッセージをくれる。


その日、私は安心して眠ることが出来た。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















次の日、私はシャオン君が出た後のシャオン君のホームに来ていた。

シャオン君は合鍵も私にくれている。


私は部屋に入り、シャオン君の部屋のだいたいの様子を確認して、ホームを出た。




することもなかった私は迷宮区に出掛けた。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















64層 迷宮区

私は今使っているミールツイスターの強化のために素材集めに来ていた。


ミールツイスターはかなり高性能な武器なので、多くの素材が必要だったけど、今の私のレベルなら問題は全くなかった。



少し乱獲したのでPOP率は下がっていたけど、素材は順調に集まっていた。






私が異変に気づいたのは、その時だった。


シャオン君……今、どこかな。

そう思ってフレンドリストを開いた私の目に入った現実。

「え……嘘……シャオン君の名前が……」

私のフレンドリストに何故か、シャオン君の名前がなかった。



……シャオン君、そんなことは絶対にしないって言ってた。


なのに……なんで!?




君に嫌われた?


まだ48層ダンジョンのこと根に持ってる?


それとももっと前?


分かんない……分かんないよ……



ぐるぐると止めどなく回る思考。


おさまる気配がないので、私はミールツイスターの強化をミズキに頼むことにして迷宮区を後にした。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















54層 フライズ

鍛冶屋STAR RAY

「ミズキー?いるー?」

精一杯の作り笑いでミズキを呼ぶ。

「いるよー?」

「ミールツイスターの強化、頼んでいい?」

「うん。素材はー?」

「これ」

「んじゃあ、ちょっと待ってて」

私は待ち時間もシャオン君のことを考えていた。





もしかして……ううん、君に限ってそんなことはない。

あの日から、君はいつだって私のそばにいた。


君は私のお兄ちゃんみたいな人だった。


一番私を気にかけてくれていたのは君だったし、私が気にかけてたのも君だった。



……なのに……なんで……私のこと……嫌いに……

ずっと一緒にいて飽きた?

それとも迷惑かけてばかりで嫌になった?

考えれば考えるほど嫌になるし、分からなくなる。


私は君と一緒にいたいよ……


一緒に現実に帰って、今度は名前で読んでほしいのに……


それが嫌なの?

私……私……


「フローラ!」


「え……?」


「出来たよ?」


「あ、ありがとう……」

「『Dream spinner』ドリームスピナー……意味は夢の紡ぎ手、ね。


で、どうしたの?」

「なんでもない」

「そんなことないでしょ」

「なんでもないって!!」

気がついたら大声で言ってた。

「……?」

「私……帰るね。お金、置いとくから」

「うん……」

私はホームである49層に帰った。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















49層 リフレイン ホーム

あれから2日たった。


フレンドリストから消失したシャオン君の名前。

それは私の心を闇に染め上げた。





シャオン君……帰ってきてよ……


私、会いたい……会いたいよ……


私は君が『好き』なんだよ?


いつでもかっこよくて、優しくて、私のヒーローだったのに……



私の……思い込みだったんだね。

きっと迷惑してる……














私の心に闇を与え続けたものは、やがて私の思考を一つの可能性に至らせた。













……シャオン君……まさか……


『死んじゃった?』


そんなことはない……絶対ない!!


だって、攻略組の中でも最速で、最強の君が……


絶対ない!!



でも……48層のダンジョンのとき、シャオン君は限界まで戦ってた。


今回はそれ以上の長さ。

もしかしたら……


嫌だ……嫌だ……そんなこと……絶対……




嫌だ……





どうすれば、君と一緒にいれる?








……Bossのところへ行こう。


倒せば君の役にたてる……

死ねば君のところへ……



倒して現実に戻って、シャオン君が死んでたら……私も自殺しよう……


シャオン君が生きてて私がここで死んでも……君に嫌われてるなら……いいよ……


行こう、Bossのところへ……















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆














第3者side


64層 迷宮区

フローラは完全に停止した思考で、迷宮区に来ていた。


――ここで死んでも……いい

いや……死ぬんだ


そこに響く2つの声。

「「フローラ!」」

「何で……来たの?」

2つの声の主、キリトとアスナはフローラの姿を見て驚愕する。

完全にハイライトの消えた目。


フローラの心の闇を示していた。

「シャオンがお前のこと心配して、メッセージを送ってくれたんだよ。



フレンドリストから何故かシャオンの名前は消えてるけど、あいつは絶対に生きてる!!

シャオンがそんな簡単に死ぬもんか!!」

「嘘で私を引き留めようとしないで……

例え生きてても……私のこと……嫌いなんだから……シャオン君は……」

「嘘じゃない!!

あいつは!フローラのことを一番……」

声を荒げるキリトを止めるように、アスナがキリトの肩を持つ。


「キリト君、私たちじゃ無理だよ……心の傷が深すぎる。

シャオン君本人が来ないと、フローラの心は……」


「あいつは何やってんだよ!!

どうなってもいいのか!!フローラが!!」

「キリト君!!落ち着いて!!


シャオン君はそんなに薄情じゃないの、君もよく知ってるでしょ!?」

「知ってるけど…………っ!!」

そうしている間にフローラはどこかに行っていた。

「!フローラは!?」

「早く追いかけよう!!」



二人はBoss部屋へと走っていった。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















キリトたちがフローラを追いかけ始めて14分。


フローラはBoss部屋に着いていた。

両手で扉を開く。


『The Saber Scorpion』


フローラの戦闘が始まった。



両手と尻尾の剣を器用に弾きながら戦っている。


――なんで私は戦闘をしてるんだろう。


死に場所に選んだはずなのに……


その思考が一瞬の隙を生んだ。




尻尾の先の剣がフローラの胸元を切り裂いた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

強烈な痛みを受けたフローラの目に血飛沫の幻覚が見える。

――このBoss、ペインアブソーバがないの?


部屋の端にうずくまるフローラ。

「……はぁ……はぁ」

セイバースコーピオンの剣が迫ってくる。


フローラは右手で痛むところを押さえながらうまく避ける。


――私……なんで逃げてるんだろう


左手で持ったドリームスピナーをセイバースコーピオンに向けて放つ。

細剣スキル3連撃技〔デルタアタック〕

たいしたダメージは与えられなかった。





しかし、課せられた硬直時間にセイバースコーピオンの右手の剣がフローラの胸元をまた切り裂く。


装備していたチェストプレートが破壊され、HPが注意域に割り込むと共に、純粋な痛みが走る。


――……痛い……痛いよ……


その痛みが判断力、移動速度、動きのキレを低下させる。

「このっ……」

攻撃をしようとするも、剣が迫ってきてなかなかできない。


――私は、やっぱり攻略組のプレイヤーなんだ……

Bossを前にして何もせずにはいられないんだね……

でも……

「もう……無理……」

ガクン


極度の緊張感から、疲れが出てきたフローラ。

シュッ スパン


セイバースコーピオンの口から発射された針がフローラのトレードマークである髪留めリボンを切り裂く。

「くっ」

ガスッ!!

「……ッ!!」


声にならない痛み。

フローラはセイバースコーピオンの尻尾の剣に体を貫かれる。

だんだん、視界も霞みだす。




セイバースコーピオンはフローラを真上に放りあげると左手の鋏で掴んだ。

ギシギシ

「うああ……」








そこにキリトたちがやってくる。

「フローラ!!抵抗しろって!!

お前死ぬぞ!!」

「フローラ!死なないでよ!!

こんなところで死なないで!!」

「私は、もう生きたくない……


ここで、死ぬんだ」

鋏により減り続けるフローラのHPは、すでに危険域に入っていた。

「「フローラーーー!!!」」

キリトたちが駆け出そうとしたその瞬間













蒼藍の光が、場を切り裂いた。











フローラはセイバースコーピオンの鋏から解放され、HPを回復される。


前髪を払い、顔をあげたその先には……


「遅くなった」


「……」

「俺は絶対にお前を残して死んだりしないし、お前を嫌いになんてならない。
それはあの日からずっと決めてることだ。





どんなに辛くても、絶対に希望を捨てちゃダメだ。


ないなら俺がなる。心配すんな、俺が最後の希望だ」


「うん……君はやっぱり……私のヒーロー……」

涙目のフローラの前に現れた、蒼藍の光。





それはフローラがこの世界で最も愛する人。




『蒼藍の剣閃』シャオンだった。
















Story7-7 END 
 

 
後書き
フローラの視点から始まったのはこれが初ですね。
いかにしてフローラを絶望させるか……悩みました。

フローラ「作者さんは鬼ですか?」

そんなことありませんよ。ちゃんと最後にシャオンをかっこよく登場
させてますから。

フローラ「じゃあ……許してあげる」

次回はシャオンがチート化します。

ドゴーン

シャオン「チート言うな!!」

フローラ「……あ……次回も、私たちの冒険に」

シャオン「ひとっ走り……付き合えよな♪」
 
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