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地連のおじさん

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第四章


第四章

「来てくれるさ」
「そうですか。よかったですね」
「空自さんの方の航空学生受けるらしいんだよ」
「えっ、航空学生ですか」
 三曹はそれを聞いて思わず驚きの声をあげた。
「それはまた」
「凄いよな」
「そうですよ。パイロットですか」
「いや、うちじゃないのは残念だけれどな」
 陸自でないのはというのだ。自衛隊も流石にそうした意識はある。とはいってもかつての陸軍と海軍のようなことは全くない。
「まあそれでもだ」
「一人ゲットですね」
「御前はうちに来るの見つけてくれ」
「そうですね。三尉は海自さんに行く人を確保したそうですし」
「あの人は海か」
「はい、やっぱりうちじゃありません」
 それが幾分というかかなり不満な彼等だった。
「私が見つけますか」
「絶対にな。それにしても」
「それにしても?」
「苦労するな」
 二曹は腕を組んで言うのだった。
「地連は本当に」
「ええ、確かに」
 三曹もそれには完全に同意であった。
「募集と人材の確保がこんなに大変だったなんて」
「教育隊が懐かしいよ」
 二曹はあらためて言った。
「けれどな。何とかな」
「そうですよね。一人位うちに来てくれる人を見つけないと」
「空自さんや海自さんだけじゃなくてな」
「そうですよね。何とか一人」
「見つけるか」
 こんなことを話しているとであった。やがて一人大学生で見つかった。二人が地連の事務所で休憩してコーヒーを飲んでいるとであった。柔道でもやっているのかと思うようなごついのが入って来たのである。
 角刈りでいかつい顔をしている。その彼がバスという極めて低い声域で言ってきた。
「あの」
「あっ、はい」
「何ですか?」
「自衛官を募集していると聞いたのですが」
 声とは裏腹におずおずとした謙虚な言葉遣いであった。
「ここですよね」
「はい、ここです」
「ここで受けています」
 二人はすぐに彼のその問いに応えた。募集を見て来たのは明らかである。二人にとってだけでなく自衛隊全体にとって最高の客人である。
「それで」
「何を御聞きしたいのですが?」
「幹部候補生の試験のことで」
「幹部候補生」
「これは」
 二人は彼の言葉を聞いてだ。思わず顔を見合わせた。お互いの目を見るときらきらとしている。
「逸材だよな」
「そうですね」
「陸上自衛隊のを受けたいんですけれどいいですか」
「しかもうちか」
「夢みたいな話ですね」
 相手がいるのに思わず言ってしまった彼等だった。
 そのうえでだ。彼に向き直りそのうえで言うのであった。
「まあまあ座って」
「幹部候補生ですよね」
「それも陸上自衛隊ですよね」
「はい」
 彼等の問いにこくりと頷く彼だった。
「そうです。あの、それで」
「はい、それはですね」
「こうなっていまして」
 二人は早速幹部候補生の試験のものと陸上自衛隊のもの、二つのパンフレットを出してきた。そのうえで彼と詳しく話をするのだった。
 
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