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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-2 1層攻略
  Story2-2 初めての悪意

シャオンside


コペルと暫定的にパーティを組んでから更に1時間以上経過した。
合わせて150匹以上のネペントを狩っていたため、現在のレベルは2つ上がって4になっていた。



しかし、未だにネペントの花付きは見当たらなかった。

ネペントの戦闘を終えた時、俺はふっとコペルの戦闘を見た。コペルの闘い方は少し防御が多いような気がした。
だが、ネペントの弱点も熟知しているためコペルは元Bテスターだと確信した。

「しかし、本当にでないね」

「もしかしたら、Bテストの時よりも出現率が変わってる可能性があるかもな。

レアのドロップのレートとかが、正式サービスで下方修正されてるのは他のMMOでも聞いたことがある」

「それもあり得るね。

どうする?レベルも随分上がったし、武器もだいぶ消耗したし、いちど村に」

コペルがそこまで言いかけた時、俺たちからほんの10メートルほど離れた木の下に、仄かな赤い光が生まれた。


ゴツゴツとした赤いポリゴンブロックが現れ、だんだんと積みあがっていった。


先のコペルの言葉どおり、俺はネペントの乱獲でレベル4に上がっている。第1層のクリア適性レベルはBテストでの記憶では10ぐらい。


まだまだ先に進むには早いが、もうリトルネペント1匹なら慌てる必要はない。

「あのリトルネペント、なにか違うぞ」

そう言って俺はPOPしてきたリトルネペントをよく観察した。

ほとんどは通常通りなのだが、ふと視線をあげてウツボ部分を見ると頂点に、真っ赤な花が咲いていた。

「コペル、よく見ろ。あれ花がついてる」

「あ、本当だ。よし、さっさと倒して………」

「待て。もう1体奥に実付きがいる」

「ッ!?」

花付きの近くにもう1体出現した。そのリトルネペントのウツボ部分の上には今にも破裂しそうなほど膨らんだ直径20cmほどのボールのような実が付いていた。


リトルネペントの実付きは花付きと同じ確率でしか出現しないのだが、それについている実を少しでも傷つけてしまえば瞬く間に破裂してしまい臭い煙を撒き散らす。

それにつられてフィールドにいる猛り狂ったネペントの群れを引き寄せ、いかにレベルが上がっていようとも到底脱出できない危地にプレイヤーを叩き込む。

「行こう。僕が実付きを誘導するから、シャオンは速攻で花付きを倒してくれ」

「OK、わかった」

俺はコペルの言葉に反応し、少し先に行動したコペルを追った。








コペルの接近を、まず花付きが察知し、ぐるっと体を反転させ、捕食器の人間の唇によく似ている縁を震わせて吼えた。
右に迂回し、奥の実付きを目指すコペルを、花付きはターゲットし続けた。

「無視はいけねぇなあ、いけねぇよ」

その隙を利用して肉薄した俺は、言葉を漏らして右手の剣を振りかぶった。



出現率1%以下のレアモンスターとは言え、花付きネペントのステータスは普通の奴とほとんど変わらない。防御力と攻撃力は多少高いらしいがレベル4の俺には無視できる差だった。


Bテスト時代から積み重ねた戦闘経験でアバターはほぼ自動的に動き、ネペントのツル攻撃をパリングやステップで回避しては反撃を加え続けていた。


ものの10秒で敵のHPゲージを黄色く変え、1度バックジャンプをしてからとどめのソードスキルをたちあげる。



腐蝕液を吐き出しそうになっていたネペントが、捕食器の半分も膨らまないうちに、片手剣スキル単発技〔ホリゾンタル〕の青い弧線が渇いた音とともに肉質の茎を切断した。

ノーマルなネペントとは少し違う悲鳴が響き、切り離されたウツボ部分がごろりと地面に落下し、ポリゴン片になって四散する前に頭頂部の花がはらりと散る。


中から仄かに光る球が転がりでて足もとまでやってきて、ブーツのつま先に当たって停止したと同時に、ネペントの胴体と捕食器が立て続けに爆砕した。


俺は左手でつかんだ光り輝くネペントの胚珠を拾い上げた。


だが、脱力するのはまだ早い。 少し離れたところで、危険な実付きの囮を引き受けてくれたコペルの援護にいかなくてはならない。

「すまない!待たせた!」

顔を上げてそう言うと、俺は左手の胚珠をこのベルトポーチに落とし込んだ。本当はアイテム欄に格納したいのだがそんな操作をゆっくりとしている場合ではないので、剣を握り直し数歩走った。



コペルは実付きと戦っておりほとんどの攻撃を受け流していた。不意にコペルが俺の方を見てこんなことを言った。

「ごめん、シャオン」

そう言うとコペルは視線をモンスターに戻して、右手の剣を大きく頭上に振りかぶった。刀身が薄く青く輝き、ソードスキルを発動した。

「そのソードスキルダメだろ……」

コペルのソードスキルは発動し、半自動操縦されるアバターは猛然と地面を蹴り、発光する刀身をネペント捕食器の上で揺れている丸い実へと叩きつけた。





凄まじい音で破裂し、森を揺らした。実を粉砕したコペルの片手剣スキル単発技〔バーチカル〕はそのままネペントの捕食器を断ち切りHPゲージを削り切った。


モンスターは爆散したが、空中に残る薄緑色の煙と、俺の嗅覚まで届く異様な臭気は消えない。

煙を避けて大きく飛び退いたコペルに向かって、俺は呆然と声を投げかけた。

「なんで実を斬ったんだ……」

事故ではなく意図的な攻撃だった。コペルは自分の意志に基づいて実を斬り、破裂させたのだ。


そして、その奥には幾つものカラー・カーソルが出現するのを見た。右、左、後ろ全ての方位からリトルネペントたちが迫ってきた。



コペルは俺に眼を向けることなく剣を左腰の鞘に戻し、近くの藪へと走り始めた。その足取りには迷いがなく、生きることを諦めてない証拠だった。
私は小さな茂みに飛び込んでいくコペルの背中を追った。密生した葉に遮られ、アバターは見えなくなったが、カラー・カーソルは表示されたまま……ではなかった。




距離は20mと離れていないはずなのに、視界から、コペルのカーソルが消失した。転移結晶で緊急離脱したのか、と一瞬思ったがそんなはずはない。あのアイテムは恐ろしく高価でこんな序盤で買えるはずないし、そもそも第1層には売っている店もドロップするモンスターも存在しない。




であるなら、隠蔽スキルの特殊効果。プレイヤーの視界からカーソルを消し、モンスターからはターゲットされなくなる。コペルは、2つ目のスキルスロットを空けていたのではなく、すでに隠蔽スキルを取得していたのだ。初めて会ったときに気づけなかったわけだ。



殺到するモンスター群が足許を地震のように揺らすのを感じながら、俺はそこまで考えて、そしてようやくコペルの意図に気付いた。
コペルは俺を殺そうとしているのだ。彼の発言にもっと早く気づけばこうならなかったはずだ。



敢えて実を割り、周囲からネペントを呼び集め、自分は隠蔽スキルで身を隠す。30を超えるモンスターは全て俺に集まる。実に古典的な手段のMPKなのだ。

「俺を罠に嵌めて、殺して胚珠を手に入れるってことか」

そこまで分かってしまうと、思考はだんだんと冷静になっていった。
その理由の1つに、コペルの計画にたった1つ存在する穴に気付いたからかもしれない。

「知らなかったんだな。

隠蔽スキルを取るのは初めてだったんだな。あれは便利なスキルだけど、万能じゃない。

視覚以外の感覚を持ってるモンスターには、効果が薄いんだよ。例えば、リトルネペントみたいに」

コペルがいるかどうか分からなかったが、俺は離れた茂みに向かってそう語った。




猛り狂いながら、襲いかかってくる捕食植物の1部は明らかにコペルが隠れているであろう藪を目指している。
彼は今頃自分が狙われていることに気付いているだろう。



俺はくるりと後ろを向き、そちらから突進してくるネペントの列に視線を据えた。
背後の敵はコペルを狙うだろうからしばらくは放置しておける。後ろの状況が片付く前に、前方の敵を殲滅できれば、生還できるかもしれない。



俺はピンポイントアタックすることにしてネペントの群へと走り出した。背後で、モンスターの咆哮と攻撃音、そしてコペルが何かを叫ぶ声が聞こえた。


俺は全神経を自分の敵に集中した。



敵の攻撃モーションを見て、軌道を予測し最小限の動きでかわし、一瞬の隙を見つけて攻撃力をブーストさせたソードスキルで敵を一撃で屠る。
それの繰り返しだった。


最小限でかわしているから直撃はせずとも前後左右から繰り出されるツルが四肢を掠め、次々と浴びせかけられる腐食液の雫が革コートに穴を開ける。その度にHPを削られ、仮想にして現実な死が1歩ずつ迫ってくる。

「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

声を張り上げて、地面を蹴った。
ライトエフェクトさえも置き去りにした片手剣スキル単発技〔ホリゾンタル〕が縦に2匹並んでいたネペントの捕食器を立て続けに高く切り飛ばした。


直後、背中側にかなり離れた場所で、ひときわ鋭く、儚い破砕音が響いた。
モンスターが爆散した音とは違う、プレイヤーの死亡エフェクト。
10匹以上に囲まれていたコペルがついに力尽きたのだ。



反射的に振り向こうとしたがそれを堪え、周囲に残っていた最後の2匹を立て続けにに屠った。








そこでようやく後ろを振り向く。最初の標的を仕留めたネペントたちが、俺に狙いを定めた。その数、7匹。


コペルはあの状況で少なくとも5匹倒したことになる。
新たな獲物に襲いかかってくるネペント7匹の先頭の個体は捕食器の上に真っ赤な花を咲かせていた。
コペルがもう少し頑張っていればMPKせずとも胚珠を手に入れることはできた。しかし、それを今更言っても意味はない。






7匹のうち右側の2匹が腐食液の攻撃モーションに入りつつあることを察知した。
俺は、全力でそちらにダッシュし、チャージ中で停止している敵を一息に片付けた。残る5匹を、続く20秒で屠り、戦闘は終わった。




コペルが消滅した場所へと足を向けるとそこにはスモールソードと円盾が落ちていた。その剣を拾い上げ、周りで1番大きな樹の根元に突き立て、次に2匹目の花付きからドロップした胚珠をその根元に置いた。

「お前の分だ、コペル」

そう呟き、立ち上がる。きびすを返して、村に戻るために小径を東に向かって歩き出した。















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
















2人がかりの乱獲にPOPが枯渇していたためか、モンスターと出会うことなく、ホルンカの村に帰り着いた。

時刻は夜9時。



茅場のチュートリアルが終了してから、すでに3時間が経過している。

さすがに、村の広場には数名のプレイヤーの姿があった。恐らく元Bテスターだろう。







今は誰かと話す気分ではなかったため、気付かれる前に奥の通路を通って村の奥の民家を目指した。



目的の家を見つけると、形ばかりにノックしてからドアを開けると、相変わらずかまどで何を煮ていたおかみさんが振り向いた。



頭上には、クエスト進行中を示す金色の!マークが浮かんでいる。


彼女に歩み寄り、腰のポーチからリトルネペントの胚珠を取り出して渡す。

おかみさんは顔を輝かせ、胚珠を受け取った。

「ありがとう。旅の剣士様、本当にありがとう」

そうお礼の言葉が出ると同時に、視界の左でクエストが進行する。


胚珠をそっと鍋に入れたおかみさんもとい若奥さんは部屋の南に置かれた大きなチェストに歩み寄り、蓋を開け中から古びているが初期装備よりも存在感を持っている赤い鞘に収められた剣、アニールブレードを持ってくると俺の目の前で再度お礼とともに渡してくれた。

「ありがとう」

一言そう呟き、それを受け取った。視界中央にクエスト達成のメッセージが浮かび、ボーナス経験値が加算された。
俺は新しい剣をアイテムストレージに格納すると、近くの椅子に座り込んだ。



今更のように疲労感がどっと押し寄せてくるの感じながら、私はぼんやりと若奥さんの動きを見守り続けた。そのまま、何分経っただろうか。若奥さんは木のカップを取り出し、そっと鍋の中身をおたまで注いだ。


湯気が立つカップを大事そうに捧げ持ちながら奥のドアへと歩いて行った。俺はそれにつられるようについていった。
そこは、小さな寝室だった。壁際のタンスと窓際のベッド、小さな椅子が1つしかない。

そのベッドの中には7〜8歳の少女が横たわっていた。
そして若奥さんはその少女の名前とともにこう言った。

「アガサ。ほら、旅の剣士様が森から薬をとってきてくださったのよ。これを飲めば、きっと良くなるわ」

「うん」

そう言って若奥さんは左に持っていたカップをにぎらせた。

アガサは可愛らしい声で頷くと、カップを小さな両手で支えて、飲み干した。

空になったカップを母親に返したアガサは、俺の存在に気付いてたらしく、立ち尽くす俺を見てにっこり笑ってこう言った。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「元気になれよ」

知らず知らずのうちに俺の口からそんな言葉が出ていた。
















Story2-2 END 
 

 
後書き
始まりの日のエピソード。キリトのところをシャオンに置き換えて作りました。

この話は執筆当初なかった話で、アットノベルス→ハーメルンの時に書きました。


さて、次回はいよいよ一層攻略!
皆さんお待ちかね?の人がかなり出てきます。

もちろん、キリトも出てきます!

今後ともよろしくです! 
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