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新妹魔王の契約者~龍剣使いの神皇帝~

作者:黒鐡
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1巻
  澪達の本性×一真と深雪の正体

澪と万理亜との同居生活が始まってから、もう一週間が経過した。俺は初日で実行するんじゃないのか?と思ったが、どうやらもうそろそろで澪達の真の目的が分かりそうな気がした。深雪は同性で姉のように振る舞っていたが、深雪も芝居する時は凄い上手いから期待している。今の所知り合い以上家族未満だが、ぎこちなさは無くなってきたそんな矢先であったがとうとうこの日が来たのかと思った。

「・・・・俺、明日から仕事でしばらく海外に行く事になったから」

「迅さんのいきなり過ぎるのは慣れてますが、今度はどちらに?」

「ま、それが迅さんらしいが今度はどこに行くのやら」

帰宅して早々に、玄関で迅から仕事発言で俺達はいつも通りのような感じで会話をしながら、迅の部屋に三人で行くのだった。澪と万理亜には聞こえていない様子なので、俺と深雪は自然的に付いて行く。

「イタリアの客がアラブの写真を欲しがっているらしいので、ちょいとドバイまで行くという出張ですわ」

迅の職業はフリーのカメラマンで、写真を撮る事を生業しているプロである。そのために度々海外に行くと言っては、俺=分身体を置いて行く時がよくあったそうだ。

「ま、そろそろあちらも仕向けて来るからだと思うな」

「表向きは馴染みの客のため、裏では独自調査だな」

明日からの仕事のための準備なのか、迅はカメラレンズを装着していく。迅は、世界中に顧客を持っている特殊なカメラマンであり、業界では『JIN』という名は一部の間では非常に有名な名であると同時に所属は蒼い翼だ。なので普通なら圏外のところでも俺らが持っている電話は月中基地支部からの経由か、蒼い翼での衛星電波で電話やメールが出来る優れ物だ。脱線したが、撮影した写真がそのまま絵画のような芸術性を持っていると評されている。なので、多くのファンもいるが、年収も同業のカメラマンより桁が違う。それと同時に蒼い翼から仕事を要請しているので問題ない。行けない場所を行けるようにするのも我が社の力の源でもある。

「迅の護衛は影ながら護衛すると言っているから心配はしない」

「それにフリーとはいえ、蒼い翼というドデカい看板をしょっているので信用が第一かと。一度断りを入れると、二度とその客は来ません。ここに父親であるあなたがいる事で心配はありますがこの辺り周辺を警備している同業もいるようですし、大丈夫だと思います」

俺と深雪の前だと敬語を使う迅であったが、この会話は下にいる澪達には聞こえないようにしている。現に聞かれるとまずい会話なので一応防音結界を張っているからな、それと署にいる独立蒼翼黒鮫課も全員この会話を聞いている。この夜なので、夜勤班に切り変わっているようだが日勤のも非番のも寮や家にて脳量子波で聞いている。そんで次の日の夜になったので、迅を乗せた黒塗りの車が豪邸前にいた。

「じゃ、留守の間よろしくな『あとの事はお任せしますよ大佐』」

「ああ任された、それと運転手ともう一人を連れて行った方がいいぞ?じゃあな」

運転手と共に乗っていた一人の護衛と共に黒塗りの車は走り去って行った。迅もそうだが、運転手と護衛の者は俺の知り合いだからな。問題なく仕事をするだろう。

「行ってしまいましたねお兄様、それと」

「ああ分かっている、家の気配が変わった事をな」

俺と深雪は神の直感で家の中にいる者の気配を感じ取り、そろそろかと思った。それと一枚の写真をもらったので、深雪の手にあるが案の定俺と深雪は見事なまでの笑みを浮かべていた。それとこれから起こる事を想定したのを頭に入れてから豪邸の中に入る。

『ビンビン感じるぜ相棒』

『これからドンパチでも始めるようだな』

『私の出番もまだまだのようね、深雪を護るのは一真がやるし』

玄関に入り、長い廊下から澪達がいる部屋に入る。今日の飯は俺と深雪の手作りかなと思いながらだったが、室内は真っ暗でしかも空気が重く感じた。ドアを閉めた深雪は俺の後ろにいろとアイコンタクトで言った後だった。

「今日の飯は何する?」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

ソファにいる澪に、ダイニングルームのテーブルにある椅子に腰かけている万理亜も無言だ。本来なら心配をかけるが、今は兄であって父親の俺の指示により一歩後ろにいる。姉である深雪も予定通りだなと思った。反応有りだったが、冷たい視線を感じてはいたが俺達はこんなのは初級だなと思った。今は人間だが、俺と深雪は人間ではない技と技量を持っている。

「今回は私達の手作りより、何か出前でも取りましょうか?」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

随分と無言が長いな、テレビやラジオだったら絶対放送事故ってるぞ。

「・・・・あのね一真に深雪、お願いがあるんだけど」

ようやく澪が重い口を開けたのだった。

「何か希望でもあるのか?」

「それとも私達に用かしら?」

俺は澪のいるところに行き、深雪は壁の方に留まった。本来の予定ではその壁は魔法で吹っ飛ぶ俺がいるからだが、俺は魔法などは今更かと言いたいくらいだ。歩み寄った事については、澪のお願いを聞くためである。澪が口にした「お願い」は底冷えのようなもんだった。

「・・・・この家から出てって」

俺と深雪はまるで芝居をするかのような反応をし、困る反応をした。

「は?何言ってるんだ」

すると万理亜が立ち上がりこちらに来たので、軽く手を上げると同時に小さな掌から俺に対してかざすようにして光ったと思えば、俺を吹っ飛ばすような突風が生まれたが壁に激突しないで何とか耐えてみせた。

「今のはどういう手品なんだ?」

「まるで念力のように吹き飛ばしたみたいです」

そう言った俺と深雪に対して、澪と万理亜は驚いた様子で見てきたが何とか動揺はしていなかった。

「澪様の言った事が聞こえませんでしたようでしたが、なぜ耐えられるかが謎です」

さっきまでいたところからこちらに来た万理亜は別人のような顔をしているが、それが本性かと思った。冷酷な表情を浮かべていたが、正直生ぬるいなと思った。

「初めて魔法を見た人間は、大抵はパニック状態になるんですよ」

「魔法ね・・・・」

「そんなのはフィクションでは?」

「フィクションや空想の産物だと思っている事が多いですが、実在するんですよ魔法は・・・・いいえ、魔法だけではありません。人間以外の種族というものも」

俺と深雪はフィクションか空想なのではと思ったが、意外にもペラペラと話し出したと同時に万理亜の容姿が変わる。青い輝きと共に、万理亜の背にはまるでシャムシェルやシャハルのようなサキュバスの翼があったが黒いな。耳も人間時と違いエルフのように尖っていき、服装も変化したのだった。

「なるほどな、お前らは悪魔だって言うのか」

「悪魔となるとそれこそ空想ではありませんか?」

「そういう事です」

俺と深雪が呟くと同時に即答してきた。断言でもあるか。

「そして一真さんと深雪さんには出て行って貰います。この家は、澪様が頂きますので。それにこの家の当主が来たとしてもですけど」

胸を張って言う万理亜に対し、澪は「出て行け」と言ったきり黙ったままの様子だ。澪様、か。それはまるでこの家の中では、一番偉いのを指す言葉だ。万理亜の澪に対する呼び方の変化から、俺と深雪は予想通りの展開となり自然と関係性を知ったという演技をしたのだった。

「どういう事です澪。お兄様に刃向うかのような状況は?」

「口を慎んでくれますか深雪さん。ただの人間が、未来の魔王に対して不敬が過ぎます」

深雪の問いかけに対し、答えたのは万理亜だ。

「魔王って、そいつがか?」

「悪魔という種族があるんです。それを統べる王がいらっしゃるのは当然でしょう。私達の原初の宿敵である神族にも、王たる上位神がいるのと同じように。ついでに、貴方達が言う所の勇者も実は存在するんですよ?まあ尤も、連中は自分達の存在を隠す為、基本的に隠れ里に住んでいるので、普通の人がその存在を知る事はまずありませんけど」

長い説明ありがとうと言いたいが、ここにいるんだがな。神族の上位神であるこの俺と部下である同じく上位神の力を持つ深雪は。全てを創ったとされる創造神黒鐵とその間で生まれた女神雪音、女神雪音とは深雪が大天使化となった際に呼ぶ名前である。平然と語られて無言で返すが、今の状況を信じるというのは普通なら無理な話だ。

「それじゃ魔王の側近に聞くが、何だって家を欲しがるんだ?魔王であるならここよりもデカい城があるだろう」

「色々あるんですよ、事情が。その辺りの詳しい話を貴方にする義務はありません。とにかく、この豪邸は、澪様と私が頂きます。この人間界での拠点にするために」

魔王の側近と言ったが、側近は側近らしく万理亜は答えたが全ては拠点にするための演技か。まあ及第点をくれてやると言いたい、それに俺達こそ人間ではないというのはまだ知れていなさそうだ。

「じゃあお父さまとの再婚話や引き取る話は・・・・」

「それこそ存在しない話です。迅さんとは街で偶然知り合いました。豪快に見えて、良い人ですね凄く・・・・それに貴方の父親の姿は結局見れなかったので、私のサキュバスの魔法で迅さんが保証人としてという記憶を操作させて貰ったんです」

記憶操作は俺の力により無効化してるから、問題なく釣れた訳だが。これはこれで面白い展開となった訳だな、迅が言ってた面白いというのはこういう事か。サキュバスと関わりを持つ俺にとってはどういうのかは幅広く知っている、女性型の夢魔で淫魔。そして性欲は底なし沼のようにある事もだけど、万理亜を観察するとまだ処女のように思えた。深雪も直感でそう感じたと脳量子波で言ってた。

「では同居人である迅さんを使い、再婚話を俺の親父に埋め込む予定だったがいないので保証人とした訳か。ま、サキュバスならそう信じ込ませるのは他愛もないって事か」

「ええ。そして次は一真さんと深雪さんの番です」

そう言って両手をこちらに向ける、片方は俺に、もう片方は深雪に。そんで手をかざしながら言う。

「同居人が海外へ行き、女の子との生活に飽き飽きした一真さんに女の子が増えた事で馴染めなかった深雪さんは、迅さんが帰ってくるまでこの家を離れる事にする・・・・与える記憶はそんなところで良いでしょう」

対する俺と深雪は真正面に向いていたが、続いて澪を見た。ソファから立ち上がり、ようやく俺と深雪と視線を合わせる。

「悪いけど・・・・この家は私達が貰うから」

冷たく言い放つ澪は、昨日というか屑共を見た同じ瞳だった。

「大人しく万理亜の魔法を受けて、さっさとこの家を出てって。さもないと大声出すわよ?そしてアンタらの頭の中に、私達に乱暴したから自首しなきゃって記憶を入れて、警察を呼ぶわ『警察は俺に味方をしてくれるぞ?』そうなったとしても人間が私達に刃向うような事はしないから、偽の記憶を植え付ける事でこちらが向いているんだからね」

「・・・・そうか」

ま、そうなったとしても警察は記憶を埋め込まないでそのまま澪達をブタ箱行きだがそれじゃ可哀想だな。そうしたら万理亜の手が輝く。

「どうします澪様?夏場とはいえ、野宿にするのは少し可哀想ですかね。生まれ育った田舎へ帰って、親戚の家に厄介になる事にした・・・・って記憶にでもしておきましょうか」

「・・・・そうね。それで良いわ」

と澪が言うと最後の晩餐ではないが、最後の言葉を言ってくる澪。

「バイバイお兄ちゃんにお姉ちゃん・・・・少しの間だったけど色々楽しかったわ」

そうしてその言葉の合図と共に、万理亜の手にあった光が俺と深雪に解き放たれる瞬間に俺は無効化の力で記憶を操るというのを無効化したのだった。相手は俺達から家を出ていくと思っているがそうはいかないなあ~。

「・・・・・・・・・おや」

記憶操作の魔法は確かに俺らに命中したが、俺らは微動だに動かず下に俯いている。おかしいと思いながら首を捻るが、もう一度記憶操作を魔法を俺らに解き放つ瞬間を狙ってクロックアップした。

「え・・・・・・・・?」

万理亜はふと、眼を瞬かせた。眼の前にいたはずの俺と深雪の姿が消えていたからだ。まさかと思ったのか、俺と深雪は万理亜の背後にいた事だが咄嗟の判断で俺らを見つける事は出来たようだな。リビング中央に俺らが立っていたからだ。一瞬で背後を取ったのか、この事実に万理亜は喉を鳴らす。

「て、抵抗するつもりですか・・・・痛い目を見ますよ」

厳しい視線を俺らに向けて、怪我をさせるつもりはなかったらしいが万理亜はさっき俺を吹き飛ばそうとした突風魔法を唱えて解き放つと同時に俺は空間から剣を取り出して、魔法そのものを消滅させた。

「な・・・・っ?」

一瞬、白い線が横に走ったのを見えた気がしたが、一瞬にして魔法を消されたという驚愕の思いと共に万理亜は見た。眼の前にいる二人は何時の間に展開した金色の翼と俺の手に金色の刃で出来ている聖剣エクスカリバーを構えていた俺を見ていた。本来は肘まで金属装甲で覆われているが俺の武器にそんなのはいらないし、赤龍帝の籠手を使えばそうなるかもしれないが。この世界での勇者が持つ武器は、契約した力がそのまま使用者の肉体にフィールドバックされるらしいけど。

「・・・・何を驚いているんだ?」

今まで下に向いていた俺らは顔を上げてから、まるで剣士のような鋭さを持つ顔をした俺と深雪。

「お前が言った事だろうが、お前らのような魔族もいればそれを倒す役目をする勇者の一族もいれば・・・・今まで黙認してきたであろう敵である神族や上位神もいると」

「嘘!・・・・どうして」

澪が呆然とした声を出す。

「勇者の一族は隠れ里に居ると聞いていますが、なぜ人間界に神族がいるのです!こんな場所で一般人みたいな生活を・・・・」

「それこそ貴女達には説明する義理はありません」

冷たく切り捨てた深雪だったので、万理亜は驚きの視線を向ける。まるでなぜここに上位神がいるのかと驚いている最中だろうな、上位神ってのは背にある翼の色と数で分かるようになっている。俺は6対12枚で深雪は5対10枚で色は金色だからだ、記憶操作の魔法が効かない訳ではあるけどそもそも無効化フィールドの中にいるからなのかもしれない。サキュバスが夢を見させて記憶操作出来るのは、主に自分より魔力が劣っている存在。・・・・魔力に対して無防備な普通の人間などに限られるが、勇者の一族や俺達神族のような対魔族のエキスパートには通用しないからである。

「(今のは一体?私の魔法を弾かれたり斬られたりではなく、魔法そのものを消し去った!?)」

万理亜の驚愕なのは当たり前であるが、先ほど使ったのは攻撃用の風系統魔法ではなく吹き飛ばして少し痛い目を見せてやろうという魂胆だったのだろう。飛行の応用で使ったぶつけただけで、非殺傷能力なので例え神族の剣士や勇者の一族相手なら弾かれたり斬られると推測する。俺が使った無効化は、魔法や異能という力を全て無効化する力である。魔法が発動すれば防ぎ方によって、魔法の残骸が生じるが俺がやった事は塵ほどの残骸すらない状況となった。完全消滅したという事は存在自体をなかった事にするような力である。

「俺らは神族の上位神であったら人間界に干渉してはいけないとでも思ったかもしれないが、俺らは別にそんなルールは存在しない」

「勇者や魔族と言ったのとは、あまり関わりたくなかったのですが、しょうがないようですね。お兄様」

俺が剣を構えてから、咄嗟に澪へ向かって行ったので万理亜は澪を庇うようにして前に立った瞬間に神速の剣が澪と万理亜に振り下ろす。俺と深雪は見るが、俺や深雪を裏切った行為をした二人の少女が眼を瞑ったままだった。手にした剣はちょうどミリ単位で止まっていた。

「・・・・・あ」

自分達の無事を悟った万理亜と澪は、ぺたんと床にへたり込んだ。腰が抜けたらしいが、俺は剣を鞘に戻してから空間に入れて深雪と共に翼展開を解除した。

「どうして・・・・」

呆然と問いかける澪に、俺と深雪は自分らの部屋に行こうとする足を止めて背中を向けたのだった。彼女達に対する怒りはあるが、深雪の事も裏切ったという怒りは消えている。

「・・・・出て行きなさい」

静かに言ったのは一真ではなく深雪だった。

「あなた達が魔族だろうと魔王であろうと私やお兄様には関係のない事ですが、お兄様と私や迅さんを騙そうとした輩を養う余裕はありません。私とお兄様の実家はここであり親戚や他の家にはありませんし、今なら見逃しておきます。荷物は後でどこへでも送ってやりますから、私達が立ち去った後に出て行きなさい」

そう言った後に俺と深雪は、立ち去った後に俺の部屋に向かった。そして織斑家のリビングにいた二人は、俺らが部屋に行った時には出て行ったのを確認すると俺と深雪は一息吐いたのだった。芝居とはいえ、さすがの俺でも冷徹なセリフを言った深雪は奏の娘だなと改めて思ったのだった。 
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