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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  27話

中忍試験当日、私達はガイ先生から受験票を受け取り試験会場であるアカデミーに向かう事となった。
「で、なんでそんなダルそうなのヒジリ?」
「いや、リーと似たような重りをつけてみたのだが……想像より厳しいな」
数日前から手足に付けているのだが、一朝一夕でどうにかなるものではなく付けた当初はマトモに動けなかった。最近になってやっと普通に動けるようになったものの、やはりこの体への負担は慣れぬものでこうして少しダレ気味な訳だ。
一応、重り一つあたりの重さはリーの付けている物の半分だが、私の場合は腕にも付けているので何の慰めにもなっていない。
……いや、愚痴るよりも移動速度などを上げる訓練でいいものはないかと先生に聞いた段階で、こうなるとは想像して覚悟しておくべきだったな。
「けど、そんなので大丈夫なの?」
「試験の内容次第だな……体力を競い合う試験内容であれば、八門遁甲を使うことも考慮に入れねばならん」
「じゃあ、外せばいいじゃないですか」
「……負けた気がするから、嫌だ」
「根性ですね!!」
「いや、単に負けず嫌いなだけなんだが……否定するのも面倒だ」
「相当参ってるのね……」
そんな話をしながら階段を上っていると、やる気をまるで感じられないような幻術が試験会場とは違う部屋にかけられていた。
どうやらこれで何人か落とそうかと思ってるのだろうが、せめて試験会場と同じ階の教室にかけるくらいはするべきじゃないか?
まぁいいさ、そういう下らない真似をするならこちらとしても対応せざるをえないな。
「テンテン、リー、あそこの下忍のフリをしている中忍二人に幻術に掛かった振りをして、少し文句を言ってきてくれないか?」
「え、なんで?早いところ試験会場に行こうよ」
「私を信じたまえ、一次試験を一切の心配なく通過させてやる」
「んー分かった。で、どれくらい時間を稼げばいいの?」
「十五分、いや十分だ」
「割と長いね……はぁ、行くよリー」
「はい!!」
リーとテンテンが試験官二人に向かっている間に私は紙とペンを持ち、白眼に意識を集中させる。わざわざ試験会場をアカデミーにしている段階で筆記試験や面接などを模して、情報収集能力や尋問などの能力を試すものだと考えていたが……正解のようだ。
私が試験を受けると分かっていたのであれば、試験問題を私から半径一キロ以内に置くべきではなかったな。
………………ふむ、難度としては中忍、上忍クラスの問題か。一見難しいように見えるが、内容を一度噛み砕いて整理すれば下忍の知識でもギリギリ解けない事も無いか。
そう考えると日向は歴史ある家だけあって蔵書の質は良かったのだな。
…………親父殿の教育は何気にこのレベルだったのか。当時は特に何も思うことなくこなしていたが、我ながら良くやったものだな。




「ヒジリ、終わった?」
「ん?ああ、終わったぞ……リーは?」
「サスケ君とちょっと遊んで、表蓮華使いかけてガイ先生と茶番中」
そうか……まぁいい。
「テンテン、ネジ、これを今すぐ暗記しろ。それで一次試験はそれで通る」
私は二人に今しがた解き終えた物を手渡して、階下で語り合っているリーを連れ戻す。
そして、リーにの解答を手渡してから私達は本当の試験会場に向かう事にした。
「で、サスケはどうだった?」
「サスケ君ですか?そうですね……あの眼は確かに脅威ですが、まだ体が僕の動きについてこれないようです。ただ……」
「ただ?」
「眼では追えているだけあって、僕の動きを制するようにカウンターで待たれました。恐らく、あのままやり合ったなら相打ちになっていたでしょう」
あのままやり合ったなら……ふむ、重りを外せば勝てるという事か。確かにスピードだけで言えば中忍を超えかねない重り無しのリーの動きであれば、現状サスケに勝ち目はないな。
「だが、蓮華は途中まで決まったのだろう?」
「ええ……ただ、確実に決まるかどうかは微妙でした。最初の蹴りをガードされて、高度が十分とは言えませんでしたから」
「影舞葉まではいったのか?」
「一応は」
であれば、サスケはそこまでは覚えたな。彼ならばそこから自分の手で応用させる事もできるだろう。
試験会場に入ってまず気が付いたのは、ナルト以外の人柱力がいたという事だ。額当てから察するに砂隠れ……一尾の人柱力か。その班員はデカイ扇を持った女と傀儡使いの男か。
「おい、あんた」
私が一尾の人柱力を見ていると、後ろからサスケに声をかけられた。
「ん?なんだ、サスケ」
「あんたはあいつをどう見る?」
サスケは人柱力の方に視線をやる。
どう見ると言われても会話すらしたことがないのだがな……正直どう見ると言われても困る。だが、強いて言うならば背中の瓢箪の中身の事だろう。
「あくまで推測でしかないが、構わないか?」
「ああ」
「背中の瓢箪に入っている砂を私の弁財天と同じように操るのだろう。ただし動かす物質が砂という固体なので攻撃、防御では私の術より数段上。
加えてチャクラ量も並の忍者より遥かに多いので、途中で術が切れるという事もないだろう。
倒すのであれば短期決戦、それもこちらの動きを読まれる前に即死させるというのが最適か」
「ず、随分、具体的だな……じゃあ、あんたと比べてどっちが強い?」
「……具体的な情報が少ないのでなんとも言えんが、同じくらいだろうな。ただし向こうが形振り構わない状態になれば私に勝ち目はない」
「形振り構わない状態?それは……」
「そろそろ試験開始だ。続きはまた今度だ」
サスケには悪いが実際そろそろ時間なので、私は指定された席に着く。同時に試験官が教室に入り、簡単な自己紹介と試験内容が筆記試験だという事の説明を始めた。
試験内容を先ほど伝えておいたネジ達は淡々とそれを受け入れ、試験開始数分で答えを書き終えた。テンテンは退屈そうにペン回しをし、ネジは瞑想を、リーは椅子をずらして空気椅子をして時間を潰していた。
試験開始数分後、私達以外はこれが情報収集能力の試験であると気付き各々様々なカンニングを行い始めた。
サスケは写輪眼で動きをコピーしてのカンニング、砂の人柱力は砂で眼を作り出してそれによって視覚情報としてカンニング、ヒナタの班は忍犬を使う者と虫を使う者がそれらによってカンニングを行っていた。
ヒナタは私同様に普通に解いて普通に正解しており、隣で絶望しているナルトに答えを見せようとしている。が、残念ながら後ろの者が間違えすぎたことのより、強制退出させられる際に投げられた試験官の苦無に阻まれたがな。
そうこうしている内に試験時間が終了し、最後の問題である問十の説明に入った。
「まず……お前らにはこの第十問目の試験を受けるか受けないかのどちらかを選んでもらう。
受けないを選べばその時点で失格。班員も道連れだ
そして、もう一つ受けるを選び、問題の回答が不正解だったものは今後、永久に中忍試験の受験資格を破棄する」
……中忍試験というのはいつからアカデミーの入学試験レベルまでレベルを落としたのだ?
「そんなバカな話があるか!!現にここには中忍試験を何度も受けている奴がいるんだぞ!?
そんなふざけたルール……」
……どうやら名も知れぬ男よ。君はアカデミーからやり直すべきだ。
「残念だったなぁ、今回は運が悪かったな。ここでは俺がルールだ。
それで何人中忍になろうと未来を絶たれようとどうでもいい。怨むんなら、俺を試験官に選んだ火影様を恨むんだな」
そんなB級映画以下の脅し文句に呑まれた馬鹿どもは、次々と試験会場を後にして行った。
この試験を受ける人間が自国の忍だけなら兎も角、他国の受験生がいる状態で受験資格の破棄などやってみろ。
即刻戦争になるぞ?
仮にこれが通れば先に自国の忍に前もって情報を伝えておいて、他国の忍の資格を剥奪ということが乱発する。そうなれば公的に中忍と認められない者は何をどうやっても上の任務を受ける事が出来ず、里としての機能が立ち行かなくなる。
となれば、どこの里も中忍などのランク制度を無視し始め、今現在の戦力の目安である上、中、下忍というものが消える。
結果として個々の忍の戦力的価値は曖昧となり、依頼人側もどんな忍が送られてくるかが分からぬ所に依頼などするはずもない。要するに里としての信用が消え失せるのだ。
では、それが無くなった里はどのようにして依頼を受けようとするか?
簡単だ他の里を潰し、里単位での優位性を示し始める。要するに他里殲滅を目的とした戦争だ。
少し考えればわかる話だ。所詮尋問を担当する忍が、全ての忍の制度を揺るがすような事を許されると思うか?
その後、試験官は任務にリスクはつきものなどほざいていたが、そのリスクを限りなくゼロにするのが小隊長の仕事ではないのか?
最悪に結果になる可能性が露骨に見えているにも関わらず突っ込むのは勇気ではなく、無謀というのではなかろうか?









 
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