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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十五話 テキーラの国からその九

「間もなく」
「といいますと」
「はい、今日もです」
「入居者の方が来られるんですね」
「左様です、その方ともです」
「これからですね」
 僕は畑中さんに応えて言葉を返した。
「その人とも」
「仲良くされて下さい」
「わかりました、ただ」
「テキーラだからですね」
「やっぱり、ですよね」
「はい、メキシコからの方です」
 こう僕に答えてくれた。
「その方は」
「メキシコですか、今度の方は」
「八条グループはメキシコにも進出していますので」
 それこそ北朝鮮みたいに鎖国している国以外の国に進出している、だから言うまでもなくメキシコにもなのだ。
「ですから」
「それでその人も」
「はい、日本に留学に来られました」
「そうなんですね、ただ」
「はい、何でしょうか」
「今度の人はどういったでしょうか」
 メキシコ人であることはわかった、だがわかったことはそのことだけだからだ。僕は畑中さんにさらに問うた。
「一体」
「レスラーだそうです」
「レスラーですか」
「メキシコではかなり有名だったとか」
「プロレスで、ですか」
「そう聞いています」
「確かメキシコのプロレスは」
 どういったものか僕は聞いている、あの国のプロレスは他の国のそれとは少し違った独特なものとである。
「ルチャ=リブレですよね」
「そうです、マヤの神々に戦いを捧げると言われている」
「覆面を被って、でしたね」
「そして派手な衣装を身に着けます」
「それで動きも派手で」
「そうしたものです」
「そうでしたね、じゃあその人もなんですね」
 僕はあらためて言った。
「ルチャ=リブレをされていて」
「相当な強さとのことです」
「レスラーってことは」
 ルチャ=リブレのことを聞いていてもだ、僕はこう想像した。レスラーというだけで先入観を持ってそうしてしまった。
「大きな人でしょうか」
「私もそこまでは」
「別に大きな人でも部屋に入られますよね」
「バスケットボールの選手でも」
 レスラーよりも背の高いそうした人達でもというのだ。
「八条荘ではゆったりと過ごせます」
「僕の部屋だけじゃなくて入居者の人のお部屋も」
「そう設定されていますので」
 だからだというのだ。
「ご安心下さい」
「わかりました、そう聞いて安心しました」
「それは何よりです」
「そうですか、メキシコですか」
 また言った僕だった。
「また一国増えましたね」
「そうですね、確かに」
「どんどん国際色豊かになってきていますね」
「いえ、それはです」
「それはですか」
「まだこれからです」
 畑中さんは僕にこうも言った。 
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