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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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馬鹿ほどうぬぼれの強いものはない


自分に理解力がないことを苦痛に感じるためには、すでに相当の理解力がなければならない。
馬鹿ほどうぬぼれの強いものはない。
—ジード—

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馬鹿ほどうぬぼれの強いものはない








◆◇◆コン◆◇◆








過激派リーダータイイの捕縛、またその生徒ショウイを任意同行という形で大名子息の元へ連れて行くこととなった

すでに見合いは滞りなく終わり、先生は忍び装束に着替えていた

先生とその横に立つ恰幅の良い男性——恐らく大名子息が微笑みながら労う


「お疲れ様
 ・・・蜂って怖いな」


どうやら一連の動きを見ていたようだ

蜂って怖い


「どうやら目論見通りに行ったようですね二位上忍」


・・・目論見?


「はい、やはり大蛇丸と繋がっていた模様です
 詳しいことは拷問部、また木の葉と合同で取り調べることになります」


「うむうむ・・・それで、この子がショウイ君かね」


ユギトに促され、子息と対面する


「君は自分が何をやったか分かっているかね?
 過去の、すでに決着のついた事柄で、条約を結んだ木の葉の忍に奇襲を仕掛け・・・
 なおかつこの私の屋敷に無断で侵入
 本来ならば侵入する前に捕縛されるはずだが、木の葉のみなさんの頼みにより通した
 ・・・師が抜け忍大蛇丸と手を組み、木の葉へ戦争を仕掛けるという情報もあった
 これらのことから、自分がどうなるか、分かっているかね?」 


あれ、この人本当に大名のバカ息子?

なんというか馬鹿独特の雰囲気がない

バイトしてた時の仕事のできる正社員と何か似てる


「そ、それは・・・」


呟いたっきり言葉を飲み込んでしまう

そしてそのまま黙って、額当てをはずして子息に渡し、俺たちに頭を下げた

・・・自分が仕出かしたことを理解しているからこそ、何も言えない

自分を正当化しようとせず、自分なりに責任を取ろうとする意志


「行動で示せば良いと思っているのかね?
 言葉にしなければ伝わらないことのほうが世の中多い

 君のやったことは両国の絆を断ち切る可能性があった
 君一人の謝罪で済むと思っているのかね?」


「それは違います!
 お、オレは・・・ば、馬鹿だから何も知らなかったからっ
 深く考えずにやったことが、どんな結果になるか何も考えずに行動したからっ
 オレ一人の謝罪で済むことじゃないです、でも、オレが原因になったから、オレが謝罪して当然だと思ったんです!
 でも謝るだけじゃ何もならないと思って、オレみたいな奴がいたら上の人たちみんな困ると思ったから・・・
 だからオレ、忍を止めます・・・これがオレなりのけじめです!

 大名子息様にも木の葉の方々にも同じ雲隠れの方々にも、本当に申し訳ございません!」


そう叫んで土下座した


「・・・プッ・・・」


・・・シナイちゃんが耐えかねて吹き出した

キョトンとした顔で子息と先生の顔を仰ぎ見るショウイ

一体何事か


「ま、まじらずさん、笑っちゃだめですよ・・・」


「ですが・・・」


2人して笑いだしてしまった

埒が明かないとでも言いたげにユギトが進み出て、子息の手にあった額当てをショウイに返した


「・・・ショウイ、君を雲隠れの中忍試験へ推薦する」


「・・・え?」


どういうことだ

ショウイだけでなくオレ達六班全員が顔を見合わせた


「今回のことは全て情報が漏れていた
 大蛇丸とタイイが手を結んでいることも把握して、それで子息様に一芝居打っていただいたんだ」


「え?」


「囮捜査・・・といえば分かってもらいやすいかね・・・
 この”大名のバカ息子”が雲と因縁ある木の葉に依頼するなんて、過激派が待ち望んでいたようなもの
 危険性その他諸々承知の上で、今回のお見合いを依頼したんだよ
 
・・・木の葉崩しで少々時期がずれたがね
 だが、そのお陰で過激派が動き出すという確証を得られた
 しかし、タイイがあそこまでアレな奴だったとはね・・・

 木の葉に協力してもらうことで、先の一件から生まれた不和を修正したかった
 それが雷の大名の本心さ」


・・・この人、すごい根性もってるな・・・


シナイちゃんがオレ達に向かって手を合わせて頭を下げた

なんだ、木の葉にも説明されていたのか

ならこの任務、オレ達の修行として受けさせた・・・か
 
 
「我々雲隠れも木の葉との関係改善は喜ぶべきこと
 ただ、一つだけ懸念があった
 ・・・ショウイ、お前の存在だ」


「オレの、存在・・・」


「お前はタイイの弟子、とまでは行かないが受け持ちの生徒
 偏った教育を受けていたのも知っている
 
 骨の髄までタイイの教育が施されているのであれば、そのまま罪人として投獄——

 全てを知らされて、雲隠れのためになると判断できるのであれば・・・再教育の後中忍に昇格させる

 そう取り決めがなされた

 ・・・まさか忍をやめるなんて言われるとは思わなかったよ・・・」


再教育のためアカデミーに入ってもらうからな


そう告げられショウイは座り込んだ

色々お疲れだったな

妙な任務だったこと・・・・


「なぁなぁ、それじゃシナイちゃんに惚れたはれたはなかったってこと?」


・・・シュロ、お前その言い方は子息に失礼だろ・・・


「そういうことになる・・・かな」


笑いつつそうあしらわれる

大名家って馬鹿しかいないイメージだったんだけど・・・



「じゃぁシナイちゃんは今まで通り、私達のシナイちゃんってことだな」



・・・まあ、そうなるよな

結婚もしないし見合い自体演技みたいだし



「・・・じゃあ、シナイちゃんはお嫁入りしないんだ」


「・・・婚期がまた遅れたよ・・・」



六班で顔を見合わせ笑いあう

・・・なんだか嬉しい

思わず先生の周りにまとわりついた


「・・・それでは、後の条約など書類上の手続きには別の担当者が参りますので
 我々はこれにて失礼いたします」


いつも通りの無表情で子息やユギトに別れを告げる

ここからは即行で木の葉へ帰ることとなる

帰る前にショウイに一言だけ、耳元で呟いた


「中忍試験頑張れ・・・試験官は皆ドSだから気をつけな」

「ひっ」


先生が何を言ってきたんだ?と尋ねる

別に何も、そう呟いて手を振って別れた

・・・あいつ、馬鹿だとばっかり思ってたけど、馬鹿じゃなかったな・・・











木の葉へ帰還した直後オレ達は、五代目火影綱手の就任を知ることとなり・・・


オレはシュロとイカリと離れることとなる




















◆◇◆ユギト◆◇◆






コンに何かを呟かれてから、青褪めた顔が戻らないショウイを無理やり立たせる

あんなに体の弱い子が頑張って上忍と戦ったって言うのに、情けないことだ


新人教育はキチンとやらないといけない

ビーのところの血気盛んな奴とネガティブ思考のようにならないように気を配らなければ・・・!



「・・・二位上忍、貴方から見て私の態度はどうでしたかね?」


「どう・・・とは?」


「いや・・・私、割と本気でお見合いを願っていたものでして・・・
 任務だと言いきられたのが少々、悲しかったというか」


「そのような素振りは全く見受けられませんでした・・・」


むしろ事務的に見えました

淡々と言っていたので仕事一直線、見たいな感覚が・・・


「・・・・・・好きな人の前では、カッコつけたいものですよ」


・・・それが、あの言動につながるのですか・・・








 
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