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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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問わなければならない


我々はつねに自分自身に問わなければならない。もしみんながそうしたら、どんなことになるだろうと。
—サルトル—

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問わなければならない








◆◇◆自来也◆◇◆




情報収集がてら食事を、そう思って適当な居酒屋に入ると見覚えのある女がいた

何故ここにお前がいる


「綱手!?」

「自来也!?なんで・・・お前がここに?
 ・・・今日は懐かしい奴に良く会う日だ」


見つけられたのはいいが・・・ペイン、遠慮せず座れ座れ

ナルトは躊躇することなく席に着いた


「・・・大蛇丸だな、何があった?」


眉間にしわが寄った

・・・何か、怒らせただろうか


「・・・なぁ、自来也、私言ったよな?
 あの子を長生きさせたきゃ、忍にさせるなって・・・」


怒りの原因はそれか・・・

・・・昏睡状態だったコンを診てもらったとき、確かにそう言われた

だが、その意見より、わしはパルコとの約束を優先した


「・・・」


コンの状態は酷いものだった

そんな状態を見て、血液恐怖症を忘れ去ったように甲斐甲斐しく治療してくれたものだ・・・

おそらく、コンを縄樹とダブらせた

弟の死に何も出来なかった自分を、少しでも変えたかったのだろう


「それが何故、大蛇丸と戦うはめになった?
 何故大蛇丸にあの火傷がある?
 あの子は生きているんだろうね!?」


正直大蛇丸と対峙したのは偶然というかワシにもさっぱり分からん

あ、ペインその焼き魚ワシのだ取るな

ナルトはもうちっと野菜食え


「・・・あの子は、コンは生きとるよ・・・下忍として・・・」


そう、今やあやつは立派な木の葉の下忍

三代目からの覚えもめでたい


「!!
 言っただろ!?
 養生させてもあの子は長くは生きられない、30年生きられれば良いとこだって!
 今からでも遅くはない、今すぐ入院させ、忍びを止めさせ「コンは!忍になると決め、ここまでやってきた!」・・・自来也・・・!」


パルコとの約束だからと、修行をつけようとした

だが何時だってあやつは自分から修行をせがんだ

パルコやワシの思惑は関係なく、自らの意思で忍びになると決めた


「わしとて、何度忍を止めさせようとしたことか・・・だが、それでもあの子は血反吐撒き散らしながら修行してきた・・・
 忍になるのだと、あの火に頼らぬよう強く生きるのだと、そう言って自分の体と戦ってきた
 そうやって、大蛇丸とも対峙した・・!」


「・・・そうだってばよ、ばあちゃん
 コンは、忍を諦めない
 だってそれがコンの夢だから」


同居しているだけはある

ナルトの真っ直ぐな眼が綱手を射抜く


「今やコンは里の英雄・・・知っておるか?
 三代目火影を助け、伝説の三忍大蛇丸を退けた小さな忍の噂を・・・」


忍界では今この噂でもちきりだ

木の葉崩しのインパクトもあって、それを邪魔した忍の存在は警戒すべきもの


「・・・風の噂でね・・・
 そんなの、あの子が出来るわけがない
 あんなに・・・あんなに・・・弱っていたのに・・・」


・・・綱手が見たコンは、あの拷問を受け、命からがらパルコによって逃れたとき

随分綱手には世話になった

何の後遺症も、感染症も引き起こさずにいれたのは、綱手の医療忍術があったからこそ

湯隠れに綱手がおったのは奇跡だった


「・・・大蛇丸と、対峙できるほど強くなった・・・?
 ・・・そうだね、あの火が使えるのはあの子だけだ・・・
 あの呪いの火を使えるのは・・・」


「呪い?」


「そうさ、狐火と自来也は呼んでるけどね・・・
 あれは忍術とは違う、呪術の火だ・・・誰かを呪う、人を蝕む火
 ・・・あれの火傷は普通の方法じゃ癒せない、進行を遅らせることは出来るけどね」


「呪術・・・」


「狐は祟る・・・恨みが晴れない限り、あの火傷はあのまま・・・
 あの子が恨むのを止めた時、火傷は治るだろう」



なんで狐?



ナルトがペインに尋ねるが、言っても良いものかこちらを伺う

綱手も言い過ぎたとでも云う風に口を抑えた

・・・コンから、話させるべきだと思うがの・・・








◆◇◆コン◆◇◆









広い

とにかく広い!

大名子息の別荘たるこの屋敷、外から見ても広く見えたが中に入ると余計に広い!


今先生はイカリと一緒に別室でお化粧中

ユギトとシュロと一緒に隣の部屋に待機

お茶が出されたが・・・すげえ高級品だというのが分かる

匂いからして違う

金持ってすごいな・・・茶菓子も良い品だと思うが食べれないのでお茶だけ楽しむ

美味しい、お茶がまろやかで甘い


「お待たせ!シナイちゃん大変身だ!」


「だ、大変身?」


イカリに促されようやく出てきたシナイちゃん

薄紅色の総絞りの振袖を綺麗に着こなしている・・・この着物かなりの値打ちもんだな


背が高いから些か威圧感が出てる・・・もしかして緊張してる?


「振袖って未成年が着るんじゃないの?」


ちょっと気になった

たしか母親がそんな風に言ってたような


「そういう意味もあるけど、今は未婚女性が着るようになってるんだよ」


時代によってちょっとずつ変わるものだ

演歌歌手とかも着てたりするし、綺麗なら良いんだよ

・・・なるほど


「先生!よいではないかよいではないかあーれーってやって!」


イカリ、それ悪代官ごっこ・・・


「ヤダよ・・・まさかこの振袖を着ることになるとは・・・」


「?なんか曰くつき?」


曰くつきってシュロお前その表現どうなんだ・・・


「・・・ガイが、成人祝いにくれた」


・・・ん


・・・・・・ん?


・・・・・・・・・・聞き捨てならないことを聞いた


(・・・青春フラグ?)(絞りの着物って割と高値だぞ・・・)(ちょっと誰か特上に聞いて来い今すぐ)


噂好きの特別上忍なら何か知ってるはず!

木の葉に帰ったら即行で聞きに行こう、そう決めたオレたちだった


「さて、私はこれから大名子息と・・・お見合いだ
 お前たちは周辺を警戒すること、聞きだした情報を元に臨機応変に対処すること
 良いな?」


聞きだした情報といっても、大名屋敷に入るまでの奇襲が失敗したときの計画のこと

大名子息を人質にとって木の葉の忍びを殺し、子息には幻術で記憶を誤魔化し開戦させる

お粗末な計画である


「はい、駄目ならすぐ助けを呼びます」


「うむ
 ・・・それじゃ・・・生き恥を晒してきます・・・」


シナイちゃんが煤けた!

項垂れつつ部屋まで誘導されていくシナイちゃん
 

が、頑張って!


「なんか、誰か走ってきてるんだけど」


・・・耳を澄ますと微かに足音が・・・あー・・・段々近づいてきた

ドタバタとうるさい

シュロと一緒になってロープを入口に張った



「憎き木の葉め、このショウイさまが退治してくれrギャンッ!!」



響き渡る開け放たれた障子の音、ロープに引っ掛かって転がるショウイ

受け身も取らず顔面ダイブ・・・痛いだろうな


さて、やるか

じりじりと近寄って行けば涙目のショウイが泣き喚いた


「な、お前ら港の木の葉・・・!
 うわーんタイイ先生助けてー!!」

「喧しい、態々ここまで通してもらうよう話をつけたんだ
 黙って俺等の話を聞け」


ひっ

クナイを首元に突き付けて黙らせると小さく呻いた


「———少し、昔のお話です」


キョトンとした顔でオレを見上げるショウイ

そう、知らないなら教えてやるさ


「その日、木の葉では盛大なセレモニーが行われていました
 長年、木の葉と争っていた雲隠れの忍頭が、同盟条約締結のために来訪したからです

 ・・・木の葉の忍という忍はみな、誰もがそのセレモニーに参加しました
 しかし、ある一族だけ出席していませんでした」


「!ひ、日向一族だな!
 知ってるぞ、父上を殺したいちぞぐ!?」


叫び出すショウイの喉元を殴りつけて黙らせる


「黙って聞け
 ・・・その日、日向一族嫡子が三歳になる誕生日でした
 一族皆でお祝いして、嫡子の成長を喜びました

 ・・・ある夜、その嫡子が何者かに誘拐されかけました
 一族当主はすぐに駆けつけ、誘拐犯を殺しました

 さて、暗がりでマスクをしていたその誘拐犯・・・
 一体誰だったでしょうか?」


イカリのハンドサイン

・・・何者かが近づいて来ている


「シュロ、蟲を放て」「あいよ」


斥候の蟲を放って皆、クナイを構える

控えるユギトには手出ししないよう頼んである


「誘拐犯は同盟条約を結んだばかりの———雲隠れの忍頭でした」


「う、嘘だ!」


自分の知ってることと違ったら、そりゃ嘘だと言いたくもなるよ


「雲隠れは忍頭が殺されたのを良いことに、木の葉に条約違反として無理難題を吹っかけてきた

 ・・・当然話はこじれにこじれ・・・戦争を回避したい木の葉は裏取引をしました

 雲側の要求は日向一族当主の死体を渡せというものです
 日向一族としてはそんな要求飲めるものではありません
 しかし、当主には双子の弟がいました

 これ幸いと身代りに、双子の弟の死体を渡したことで、今日までの雲と木の葉の条約は続いてきました
 
 ・・・これを聞いて、君はどう思うかな
 嘘だと思う?
 ・・・それなら聞いてごらん、そこの雲の上忍に
 なんなら、その死体を引き渡した木の葉の上忍の話も聞くかい?
 
 ・・・それとも、引き渡された弟の息子に、話を聞きに来るか?」


そろそろ来るか

呆然としたショウイを引っ張り、天井に隠れる

気配を発つことも忘れず、声を出されないよう、ショウイの口元を覆った

僅差で開け放たれた入口に人影が見えた


「これはこれは・・・ユギト様ではありませんか
 木の葉の下忍のお守、さぞ大変でありましょう
 ・・・お手伝いいたしますよ」


細長い、もやしといった印象の中年

陰気な雰囲気が嫌悪を抱かせる


「タイイ上忍!
 アンタには待機命令が出ていたはずだ!」


本来ならここにいるべきでない人物

ユギトが怒鳴るが、そんなものお構いなしとでも言いたげに手を仰いだ


「・・・人柱力ごときが偉そうに、猫は主人のひざで寝ておればいいのだ 
 まぁ・・・邪魔するなら貴様ごと、幻術にかければすむことか・・・」


幻術使いか

わざわざ幻術をかけると宣言されて、対策をしないとでも思っているのだろうか

下忍しかいないから慢心している?

ここには上忍のユギトもいるっていうのに、慢心するのは可笑しいけどな


「タイイ・・・貴様、一体何が目的だ?!」


「目的などと言われてもな・・・
 俺はただ木の葉と戦争になればいいだけ・・・あの方の木の葉崩しによって戦力が低下している今こそ! 
 決起のときである!・・・そうは思わないかね?」


あの方のって・・・あの方か?


「あの方・・・お前、大蛇丸と繋がってるな?」


分かりやすいよな


「フン、木の葉の下忍と言えども察しは良いらしい・・・
 お前らも俺の幻術で操って・・・上忍と一緒に大名子息を襲撃してもらおうではないか」


・・・こいつ、馬鹿だ

べらべら目的喋って・・・とんでもない馬鹿だ

生徒が馬鹿なら先生も馬鹿とか・・・嫌だな

ちらりと横目でショウイを見ると、涙が一筋流れ、手に伝わる振動から”どうして”という言葉が読み取れた



・・・もしかして、ショウイはタイイの計画を知らない?

うわーてっきり計画に賛同してるかと思ったのに・・・

どうしよう、とりあえず幻術に気をつけながらタイイを捕獲するしかないのか・・・?


シカマルじゃないけど面倒くせー






 
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