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読心魔道士の日々

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1話 レーテ・バーウェルス

 
前書き
どうも、初めまして。初の作品となりますが、生暖かい目に見て下されば幸いです。
プロローグのような話となります。 

 
 フィオーレ王国東部に位置する商業都市――マグノリア。

 今日も、おそらく、昨日も明日も陽気な住民によって賑わっていることでしょう、そんな街にある家の一室で私は目を覚ましました。

 寝ぼけ眼を擦りつつ、ベッドから起き上がり、大きく欠伸。窓から朝日が差し込み、部屋を明るく照らします。

 時刻は午前7時。私実家に住んでいた時であったならば1時間も前には叩き起されていたでしょうが、今の私は一人暮らし。起こしにくる両親など居る筈がありません。誰にも睡眠を邪魔されず、快適な朝を迎えました。

 窓から暖かい朝日の差し込む今日は疑いの余地も無く晴れ。絶好の仕事日和と言えるでしょう。

 しかし、仕事をするにも準備などがいろいろとある訳で、ベッドから出た私は、二本白い線が入った緑の襟、鎖骨の間と胸元とみぞおちあたりに一つずつ付いたひし形のような水色のボタン、袖には黒いフリルのある黄色いブラウスと、薄く花の柄が描かれている深緑色をしたスカートという普段通りの服装に着替えました。

 お気に入りの、薄い黄色のリボンをつけている鴉羽色の帽子と、面白い推理小説が数冊入ったポーチを手に取り、マグノリアの街へ繰り出して、私――レーテ・バーウェルスの一日は始まります。



 この世界には魔導士という人々が存在します。世界人口の一割に満たない彼等は魔法と呼ばれる摩訶不思議な力を、ある時は犯罪者を取り締まり、ある時は商売、ある時は趣味として利用します。

 そして、その魔導士達に仕事の仲介などをする組合組織、その名も"魔導士ギルド"。世界各地に数多く存在する魔導士ギルド、そして、そこに所属する魔導士は人々と生活になくてはならないものとなりました。

 魔法を駆使して依頼を熟す魔導士と、魔導士に報酬を与えて陰ながら支える一般人。この2つが両立して、今の世の中があるのです。
フィオーレ王国有数の商業都市であるマグノリアにも、当然、魔導士ギルドはある訳で――

 屋根の上にまた建物を建てたような重層の建築物、所謂、楼閣の3階建てで、3階の屋根はチューリップの球根のようなドーム状になっており、その天辺には白い旗が掲げられ、風に靡く。建物の真正面にも大きな旗があり、妖精をモチーフにした紋章が描かれている建物。

 外からでも騒がしい、けれども賑やかな声。近隣の住民からしたら迷惑極まりないかもしれませんが、不思議と、マグノリアという街に合っているような気がします。

 中に居る人達も良く言えば個性溢れる、悪く言えば変わっていて、昼間から宴会騒ぎになり、いつの間にか殴り合いの喧嘩が勃発しているなんて常日頃。酷い時には建物の一角が無くなることもありました。それでいて、何故か仲間意識はとても強く、メンバーの多くは家族のような絆で結ばれているというのだから驚きです。

 また、このギルドは依頼で訪れた先々で問題を起こし、評議員に目を付けられています。町を半壊させたりしていたら始末書や厳重注意でなく、最悪、解散になっても不思議ではないのですが、民衆からの人気、総長(マスター)の尽力によって厳重注意に留まっています。……その尽力を尽くしている総長(マスター)でさえ、評議員などクソくらえと始末書を燃やしたり、評議員に対してバカ共と言ってしまう人なのですが。総長(マスター)が大陸でも特に優れた10人の魔導士、聖十大魔導の1人だからこそ言えるのでしょうけど。しかも、問題行動を起こしているのが有力な魔導士だというのだからタチが悪い。

 問題児筆頭、"火竜(サラマンダー)"のナツ・ドラグニル。ツンツンした桜色の髪と白銀の鱗模様のマフラーが特徴の青年です。イグニールという名の竜に育てられたと豪語しているだけあり、太古の昔に忘れ去られ、失われたとされる滅竜魔法を使用しますが、破壊力が大きすぎるうえに、本人が自重を知らない為、物をよく壊します。器物損害は大体、この人の仕業といって良いでしょう。

 氷の造形魔導師、グレイ・フルバスター。無意識に服を脱ぎ、いつの間にか下着姿、もしくは全裸になっている変態です。……何故、周りから指摘されるまで気が付かないのかは考えるだけ無駄でしょう。氷で自由自在に武器や道具といった物体を生み出す造形魔法は綺麗の一言に尽きるのですが、今まで一度、服を失くした時に、氷で代用品を造っていました。正直、アレはどうかと思います。

 "妖精女王(ティターニア)"のエルザ・スカーレット。自身の装備品を一瞬で変化させる騎士(ザ・ナイト)の使い手で、ギルドでも一部の者しか受けることのできないS級の仕事を請け負うことの出来る凄い人です。基本、喧嘩を止めるストッパーの役割を担っていますが、止める方法は実力行使の恐怖支配で、自らも暴れまわり無関係の者まで理不尽な被害に遭わせてしまうのでは、人の事を言えませんね。

 他にも、暑苦しい特攻漢(とっこうやろう)エルフマン・ストラウス、酒代で金銭的な被害を出すカナ・アルベローナ、女に見境の無いナンパ男ロキ、時折帰ってきては建物を破壊するギルダーツ・クライヴ、ギルドに来る度にメンバーを眠らせる覆面男ミストガン。

 本当に何故、このような濃いメンバーばかりが集まってしまったのか。類は友を呼ぶと言いますが、あながち、当たっているのかもしれません。……しかし、この言いようだと、私まで変人のように聞こえますね。私も――

――ここ、"妖精の尻尾(フェアリーテイル)"のメンバーなんですから。 
 

 
後書き
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

次からは、前書きと後書きで用語の解説などをしていきます。 
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