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【銀桜】3.モンハン篇

作者:Karen-agsoul
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第4話「現実とネットゲームのパラメーターは反比例する」



【待ってくれー】
 見捨てられたのにも関わらず、フルーツポンチ侍Gはまだ追ってくる。
【無視だ無視】と銀子たちは放置しようとしたが、追い抜いて前方に回った彼に道を阻まれた。
【頼む!Mを探すのを手伝って欲しい(願)】
【エムぅ?ドMは変態忍者だけで懲り懲りだ】
【ドMじゃない、『M』だ!知らんのか(馬)】
【(馬)ってなんだ。馬鹿のことじゃないだろうな】
 ぱっつぁんのツッコミには答えず、フルーツポンチ侍Gはゴホンと仕切り直して真剣な口調で語り出した。
【コードネーム『M』。創世記よりこの世界に存在し、世界の全てを知り尽くし、世界の全てを狩った者。まさに伝説のハンター。それが『M』だ(燃)】
【そんな凄い人が本当にこのゲームに?】
【心強い仲間が必要なんだ。日本の夜明けのためにも!(賞金貰う前にフルボッコにして独り占めにするのは内緒の話)】
【この人僕らと同じこと考えてるよ!!】
【ま、この伝説を信じるも信じないも君たち次第だがな。フハハハ(笑)】
 どこかの都市伝説ハンターを思わせるパクリ加減に銀子はイラっとする。
 しかしフルーツポンチ侍Gの熱い眼差しには妙に説得力がある。にわかに信じられないが、どうやらその伝説は嘘ではなさそうだ。
 銀子が悩んでいると、ぱっつぁんが『サークル会話』で話しかけてきた。ちなみにこれはパーティを組んでいる者同士にしかウィンドウ表示されないコミュニティ機能である。

〈=サークル会話ON=〉
【銀さんどうします?】
【ヅラにしちゃイイ話じゃねぇか。強ぇハンターと組むのが最優先事項よ。M見つけたらヅラをフルボッコすっぞ】
【今み○ほ先生の真似しなかった?】
〈=サークル会話OFF=〉

【しょうがねぇ手伝ってやるよ】
【さすがは銀時。俺のマナカだ(やはり俺たちは運命の糸で【だまれキモい】
 直後にフルーツポンチ侍Gが頭を強打されたのは、言うまでもない。
【で、そのMはどこにいんだ?】
【確証はないが、D-51地区でMらしき人物を見かけたという話を聞いた(噂)】
【噂ってイマイチ信憑性ないなぁ】
 もとから期待はしていなかったが、噂と知ってぱっつぁんのテンションはさらに下がった。
【気をつけろよ。D-51地区は一流ハンターも逃げ出す神獣どもの巣だ(恐)】
【そんな存在するかわからんもののために命を捨てるのか】
【神獣が出た時は俺に任せろ(貴様らをオトリにして逃げる)】
【ゴルァァァァァ!!】

“バコッ”

*  *  *

 D-51地区。
 空は灰色。大地は荒れた岩山ばかりで非常に足場が悪い。少し前までいたジャングルがまだ活気に溢れていたと感じさせる。
 陰湿な空気を感じながら、銀子たちは荒野を見渡した。
【こんな気味悪ィ所に人いんのかよ?】
【こんな恐ろしい所に人がいるとは思えないんですけど】
【その通り。だから人影を見つけたら、それはMと思って間違いない(決)】
 フルーツポンチ侍Gは自信たっぷりに言い切った。
 だがその自信ありすぎる発言が、逆に銀子たちの不安を強くする。今さら遅いが、ここに来た事を銀子たちは後悔し始めた。
【人影どころかモンキーすらいないヨ】
【Mが全部狩っちまったんじゃねーの】
【それはそれでありがたいんですけど。でもこーゆう時って、いきなり敵が現れたりするんですよね。ほらあの岩からとか】

“ザッ”

【え?】

“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ”

 何気なく指差した岩から、ぱっつぁんの言った通りにデカモンキーがはい出てきた。
 ジャングルで見たのとは桁違いの大きさで、迫力も凶暴さも何十倍である。

〈神獣パオシャンロンが現れた〉

【でたァァァ!!】
 ぱっつぁんの絶叫と共に全員一斉に走り出した。
 全速力で逃げる獲物をパオシャンロンが猛スピードで追いかけてくる。
【言ったそばから出るってベタすぎんだろうがァァァ!!】
 ネタない。がんばって逃げてね。
【超ひとごとォォォ!!】
 執着につけ狙われ、四人は断崖絶壁へとすぐ追い込まれてしまった。
 下へ飛び降りるにしても高さがあり過ぎる。だからと言って目の前のパオシャンロンには当然敵うはずもない。
 パオシャンロンは雄叫びを上げながら、腕を大きく振り上げた。
【うわァァァァァァ!!もうおしまいだァァ】

“グサッ”

 突然、パオシャンロンの口の中から巨大な刃物が飛び出て地面に突き刺さった。
 さっきまであった猛々しい生気を全て失い、神獣と恐れられていたパオシャンロンはあっけなく屍に変わった。
【馬鹿な。最強クラスをたった一撃で倒してしまうとは……(驚)】
 もう動かないパオシャンロンを見て、フルーツポンチ侍Gはその凄さを再確認した。
 すると倒れた拍子で舞い上がった土煙の中から、黒い影が浮かんでいる。
 この神獣を倒せるのは化け物としか思えない。だがもしそれが人だったとしたら――
【まさかアレが……】
 銀子は目を見開いてその姿が人であることを確かめた。
【最早疑う余地もない。世界の全てを知り尽くし、世界の全てを狩り尽くした者(伝)】
 逆立った金髪と海のような青い瞳を持つ青年。
 自分の身長を遥かに超えるバスターソードを抱えて、こちらへ歩み寄ってくる。
【あなたが伝説の……】
 驚きのあまり言葉が続かないぱっつぁんを見て、青年は微かに笑った。
【俺が『M』だ】



【限界まで極めているこのステータス。間違いなく『M』だ(憧)】
 噂とでしか思っていなかった人物が目の前に現れた。驚きが興奮へ変わる。
 フルーツポンチ侍Gは発言するたびに(驚)をつけ、カグーラは落ち着かず、銀子はサインをねだろうかと考え始める。
 ぱっつぁんこと新八はパソコン画面に映るMを見て、感動のあまりキーすらしばしまともに打てない始末だった。

「そうだ!勧誘しないと。入ってくれるかな?」

【かまわんさ。ちょうど孤独な旅にも飽きてきた頃だ】
【いいのか?俺たちハント始めたばっかで足引っ張るぞ】
【それがどうした。これから強くなればいい。俺が最後まで面倒みる】

「優しい超優しい!涙が止まんねェよMぅぅぅぅ!!」
 泣き叫ぶ涙が止まらない。
 他の電子喫茶の客から苦情をくらって何度か謝った後、新八にある疑問が浮かんだ。

【Mってなにか意味があるんですか?超カッコイイです】
 名前には少なからず由来や意味があるものだ。
 カッコいい容姿と「M」という一文字だけのシンプルさも相まって強烈に惹かれる。どうでもいい事のようだが、今の新八には気になって仕方ない。

【これか。この意味は……】

「きっとスッゴい意味があるんだろうなぁ」

【『マダオ』の頭文字だ】

「長谷川さんンンンンンン!??」

 アゴが外れそうな勢いで、新八はパソコン画面に釘付けになってしまう。
 メッセージウィンドウに表示されているのは『マダオ』。何度目をこすっても、それは変わらない。
【『マるでダンディなオッさん』の略でな。リアルじゃ周りからそう呼ばれて慕われてんだ】

「ウソつけェェェ!!『マるでダメなオッさん』の略だろうがァァァァ!!むしろ蔑称だ!知らねぇと思って美化してんじゃねェェェ!!」

 そして一気に脱力感にみまわれる。
 世の中知らない方がいいこともあるが、その意味を実感して新八は深い溜息をついた。期待が大きいほど、裏切られた時の喪失感は絶大である。
【何てこった……。伝説のハンターが長谷川さんだったなんて】
【なるほど。暇を持て余してゲームに逃避するうちに最強ハンターになっちまってたんだな】
 字に活気のないぱっつぁんと違い、銀子は冷静に分析していた。
 カグーラやフルーツポンチ侍Gも冷めた感じだ。どうやら盛り上がっていたのは、ぱっつぁんだけだったらしい。
【さっきまで感激してた自分が恥ずかしい】
【泣くなぱっつぁん。現実じゃ報われないんだ。せめてゲームで夢見してやろーや】
 それとなく銀子が落ちこむぱっつぁんを慰める。現実の長谷川に対して同情なのか軽蔑なのかよく分からない発言だが、今のぱっつぁんにツッコむ気力はない。
【マダオに従うなんて私嫌ヨ】
【我慢しろカグーラ。これで上手くいけば楽に百万円手に入る】
【ちょっと二人ともサークル会話じゃないんだから長谷川さんに見られるよ……アレ?】
 ふとぱっつぁんの視界に何かが入る。
【どうした、ぱっつぁん】
【向こうに誰かいます】
 ぱっつぁんが指差す方の荒野に小さな人影があった。
 結い上げた紅色の髪と腰にピンクリボンを結んだ少女の後ろ姿。
 一際目立つ艶やかな色の外見に、今の今まで気づかなかったのが不思議だ。
 しかし目につく派手な色で灰色に染まった大地をうろちょろするのは、敵に見つけてくれアピールしてるようなものである。
 遠くの少女を見ながら、Mが眉間にシワを寄せる。
【もしかして迷っちまったのかもしれないな。初心者は後先考えず出歩いて危険区域に入っちまうことがあるんだ】
【つまりさっきまでの僕たちですね】

“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ”
      “ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ”

 轟音。
 しかも二重に響いている。Mと銀子たちはとっさに身構え戦闘態勢に入る。

〈神獣アクロスガーズ×2が現れた〉

 だがモンキーが現れたのは、さきほどの少女がいる場所だった。
 ぱっつぁんたちが安堵する反面、少女に危機が迫る。
 二匹のモンキーは少女を挟みうちにし、完全に逃げ道を塞いだ。
 そしてモンキーたちは容赦なく総攻撃を仕掛けた。

【危ない!!】

=つづく=
 
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