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寄生捕喰者とツインテール

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大食いと憤怒と渇望
  頭痛の種

 
前書き
ここで注意事項を。

※主人公は強めです。

※ツインテイルズをボコる描写も出てきます……というか基本敵でも味方でも無いスタンスになる予定です。

※主人公の所為で、原作のシリアル成分が一気にシリアス成分に変わるかもしれません。

※原作のテンポよい展開やギャグ、清々しい程の変態要素が、主人公sideだと抑え目です。

※オリジナル能力と銘打っていますが、パクリっぽい……と言うかそのものになる可能性もあります。

※原作関係ない所で、主人公により話が進んだりもします


 以上を踏まえた上でどうぞ。 

 
 私立陽月学園。

 初等部から大学部まで一貫して進学が可能な、所謂エスカレーター式の学園で、落ちぬ為にとに必死になっている受験生の皆さまには悪いが、進学した者にとってすれば当たり前な為にそこまで喜べるものではない。


 それは朝日に照らされる通学路を、明らかに学園指定の鞄では無いナップサックを片手で掛ける様に持ち、染めるのに失敗したらしい汚い色のメッシュを入れた髪を持つ、手入れをしていないのか髪が所々痛んでいる背の高い少年も同様だった。


 手を添えてガキリゴキリと首を鳴らし、欠伸を遠慮一切なくかましながら、車の通らない道の真ん中を歩いて行く。その表情には、今日から高校生だという感慨深さも感じられなければ、緊張しているといった雰囲気もうかがえない。

 寧ろ、学校に通う事を退屈に思っているかのようだ。



(……入学式が終わったら、さっさと帰るか……?)



 少し前に居た彼よりは髪の長い少年と、彼の幼馴染か彼女かであろう髪を左右で二つに結んでたらした少女の横を、彼は速足で抜けて行った。

 校門を抜けて、中学時代よりも規模が大きい校舎と体育館を見た時は流石に驚いたようだが、すぐにどうでもよくなったかさっさと体育館へ足を進めていく。


 やがて始まった入学式だったが彼は、教員達の訓辞や歓迎の台詞を耳からシャットアウトして完全に無視し、何とも失礼な事に半ば寝かけていた。憶測だが、彼がこの陽月学園を選んだ理由は進学の際に楽が出来るからではなかろうか。

 次に行われる各部活動のパフォーマンスも彼はどこ吹く風で、眼はおろか耳に入れているかも怪しい。折角新入生を歓迎する為に内容をこの日まで必死に練り、一分弱と言う限られた時間で部活動の良さを最大限伝えられるようにと体を張っているのに、それを後の事一切合切考慮せずに無視とは身勝手にも程がある。

 まあ、部活動に入る入らないは個人の自由、強制できる事では無い。しかし、情熱を持って打ち込もとしている人が今彼を見れば、不機嫌になること間違いなしだ。


 いやに長く感じるオリエンテーションは終了し、続いて生徒会長と思わしき人物が壇上に上がるのを見て、まだ完ぺきに寝てはいなかった彼は半開きの目を細めた。



(ガキか……)



 彼が思ったが通り、生徒会長は背がかなり低い女子生徒であり、その低さたるや『私は小学生何です!』と言われても余裕で信じられるレベルだった。

 名家の出なのかそれとなく厳かな雰囲気を纏い、小さい体に似合わぬ“力”を持って、静かに演説を始める。


 ……が、彼は顔を左右に少しずらした後、これすらも聞き流すべくとしたか、眼を閉じて腕組みをした。



 しかしながらよくよく見ると、周りの生徒達が生徒会長を見る目は、どう見方を変えようと愛玩動物を愛でるそれであり、加えて彼の右隣にいる登校時にも後ろ姿を目に入れた生徒は、まるで美の化身かはたまた女神かを見たと言わんばかりの表情。


 眼を閉じたのは単に聞き流す為だけでは無く、彼等を目に入れないという目的もあった様だ。


 小学生と同等しか無い身長を持つ生徒会長だが、生徒の上に立ち導く存在としてのカリスマ的気迫があるのを、彼もしかと感じた。

 ……なのにそんな彼女を見て、背伸びをする幼女を見るかの如き慈愛の色を込めた視線を向け、しかも全くの初対面で且つ入学と言う真面目な場面であるこの場所で、隠す事も無く寧ろさらけ出さんばかりの勢いで、ホッコリしていたりだらしなくニヤケる一歩手前の表情をするなど、ちょっと先輩に対して失礼ではなかろうか。

 尤も、周りがそんな奴らだらけだからと言って、初っ端から睡眠を取ろうとするやつもどうかとは思うが……。


 生徒会長の演説も恙無く終わり閉会の言葉が告げられ、入学生は担任と思わしき人物に案内されて体育館を出る。

 途中準備があるのか担任が居なくなったのを皮切りに、生徒達は入学式の感想を言い合い始めた。

 ……ちなみに、殆どが会長の事であり、部活動パフォーマンスを話題に上げようと、自然さと言う言葉が欠片も感じられない、説得どころかもはや新宗教勧誘の如き強引な言葉で振り出しに戻される。


 そんなざわめく生徒達の中で、彼はまだ眠そうにしながら眼を時折痙攣させていた。眉がひそめられているのを見るに周りの生徒達の話の内容が煩わしいというのもあるかもしれないが、大部分は寝不足がしめるであろう。


 教室に入り指定された席に座った途端、彼は開きかけていた目を再び細める。



(……よりにもよってこいつか……)



 何故ならば、彼の隣は体育館で生徒会長を信望を通り越して信仰の目で見ていた、通学路でも見かけた男子生徒だったからだ。
 余計な話を此方に掛けて来ないだろうなと、彼は入学早々頭が痛くなる。


 生徒会長が如何だのと言われた所で、彼にとって生徒会長という存在は文字通りの意味しか無く、見目形が麗しかろうと醜かろうと、極論どうであろうとも正直如何でもよく、話が少しでも飛躍すればその時点で着いて行けなくなるからだ。


 幸い彼は未だ生徒会長の姿を思い浮かべているのか(それはそれで奇行だが)何処か上の空であり、担任がドアを開けて入って来るまで、魂が抜けた様な格好のままで彼には何の話も振らなかった。……尤も、だからと言って彼の悩みの種は減らずむしろ増えたが。



「え~と……皆さんご入学おめでとうございま~す、このクラスを受け持つ樽井 ことりです~……よろしくね」



 担任の、元から無い気合いを更に抜いている自己紹介が終わり、次いで何やら記載されている用紙を配り始めた。

 用紙には「部活動希望のアンケート」と書かれており、下には紹介された部活動の名前が全て書かれていた。
 また下には四角く囲われた空欄があり、上には少し小さな字で「新部活動・同好会を希望する際はここに書き記してください」と書かれている。入学早々で自分で部活動を作りたいと思う猛者は中々居ないだろうが、だからといっていない訳でも無いからこその措置だろう。


 彼は名前記入の欄に「新垣 瀧馬(にいがきたつま)」と書いた。瀧馬……それが彼の名前の様だ。


 が、肝心の部活動希望欄や新部活動。同行会設立希望の欄には何も書かない。コレは言わずもがな、帰宅部に所属する気満々なのだ。

 今すぐの所属では無く、あくまで希望を書いてくれと言われているのに、書いた希望が(と言うか書いていないので実際は空欄だが)いきなり帰宅部は無いだろう。



「はい、では後ろから集めてくださ~い」
「えっ?」



 樽井担任の用紙収集の言葉に、隣に居た少年が体を少し震わせ眼を見開き周りを見回すという、まるで我に返ったのだと思っても不思議ではないような行動を取ったのを見て、瀧馬は再び眉をしかめ目を細める。


 そして脳裏に言葉を浮かべた……もう末期だなコイツ、と。



 後ろから段々と運ばれてくる様子をみて、少年は慌てて部活動記入欄に殴り書きで、希望を確りと書いていく。


 そして彼の心情を表す言葉が、シャープペンシルの動きが止まる共に書き終わって表れた―――






《ツインテール》と。





「ぐふっ!?」
「うおぅ!? ど、どうした!?」



 ツインテール……知っている人は知っているが、知らない人はどこぞの怪獣を思い浮かべるであろう……所謂髪を左右で結んで垂らした髪型の事だ。

 それを知っていたが故に、そしてこの場ではどう考えても飛びだして来ない筈の単語を見たが故に、何でそんな事を書いたのだと瀧馬は思わず噴き出してしまった。



「ちょっと、早く前に回してよ」
「あ、あの、はやくしてください……」

「あっ! ごめんい、今もってくから」
「……おう」



 少年は兎も角、瀧馬に対しては高身長と眼付きの悪さが災いしてか、後ろの生徒はちょっと引き腰気味に渡してくる。
 それを気にもせず瀧馬は受け取って自分の容姿を重ねて前に手渡した。

 集められた用紙をゆっくりだが一枚一枚見て行く樽井担任の手は、後数枚と言う所で不意に止まる。



「あれ~? コレは……名前が無いですね~?」
「あの、多分それ俺です」
「なるほど観束(みつか)君でしたか~……でも――――」



 クイッと首を傾げながら、樽井担任は観束と呼ばれた少年のプリントに書かれし、そのトンデモな内容を暴露した。



「ツインテール……ツインテール部? そんな部はこの学校には~……あ、部活新設希望なんですね~?」
「えっ! え、あ、ちょ、ち、違う! 違くて! 部活がどうとかじゃなくてですね!」



 手をせわしなく動かしテンパっている様子を見るに、どうやら無意識のうちにツインテールと書いていた模様。確かに生徒会長はツインテールだったし、もしかすると彼はツインテール好きなのかもしれないのだが、無意識レベルでそれが出てくるとなれば最早それは狂気のレベルだ。

 だが一応それなりの良識はあるのか、観束は何とか弁解しようとする。



「観束君は~、ツインテールが好きなんですね~」
「はい、大好きです」



 しかし、担任の言葉に対しての脊髄反射もビックリな超反応でそんな言葉を返したモノだから、弁解などしても取り繕いきれない部分までさらに踏み込んでしまった。隣では瀧馬が観束の返答から間を置かず、どこぞのコントよろしく頬杖が外れてガツンと頭を机にぶつけている。

 奇妙にも程がある状況だが、何故か周りの生徒は反応しない。……尤も、入学式の際に殆どの生徒は醜態をさらしており、今更レベルの高い変態が出てこようが、瀧馬にとっては彼等がノーマルに見えてくる事は今後一切ない。



「そっか~、じゃあツインテール部の件、検討しておきますね~」
「待って! 待って先生俺は!」
「じゃあみなさんHRはこのへんで終わりとしま~す。そ~そ~、この近辺で変質者が増えているそうですから、皆さん帰宅の際は充分に気を付けてくださいね~」



 今ここに明確なのが一人いるがな、と瀧馬は隣でまだ慌てている観束へ視線を向ける。勿論、問題はツインテール好きの部分では無い事など、皆さんもよくお分かりの筈。



「このタイミングで言わないでっていうか待ってくれよ! 俺は本気でツインテールが好きなだけで……あぁっ!?」



 追加で自爆。

 現時点を持って、このクラスに変態と呼んでも差し支えない人物が一人いる事が、それを自ら暴露したバカが隣にいる事が明確になり、瀧馬は付いて行けんと顔に手をやり頭を振った。















『ゼェ……ぜェ……クソガァ……もう動かねぇカヨ……あと少し、少しデ……俺ハ辿りつけるってのにヨォ……こんな犬ころじャア……ゼェ……ダメになっちまウ……いや、死んでたまるカヨ……! 俺は変態共とは違ぇンダ……執念深く生き延びて―――――根こそぎ喰らってやルゼ……ゼェ、ゼェ……クハハハ……』 
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