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lineage もうひとつの物語

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冒険者
  アリ穴四階

 
前書き
スミマセン。寝落ちで今朝の投稿になってしまいました。 

 
「こっちは終わったぞ」

ウォレスは振り向きながらガンドへ伝える。

「こっちも終わったところじゃ」

大アリ穴の体からグレートアックスを引き抜きながらそれに答えるガンド。
テオドロスとイオニアは戦利品の剥ぎ取りへと向かいその他のメンバーは周囲警戒のため散開した。

「新種は見つかりませんね」

アレンは残念そうに呟いた。

「そう簡単には見つからんさ。なに、まだ二日目だ。新種はいなくとも新しい階層が見つかるかもしれんぞ」

ウォレスはさも当然かのように返事を返す。
それもそうだろう。
なかなか見つからないから貴重なのだ。
アレン達一行は探索二日目を迎えたがモンスターの多さに地図の作成が難航していた。

「しかしこの数は異常だな。とてつもなく広いのかまだ階層があるのかもしくは───」

「ウォレス!ちょっと来てくれんか!」

ウォレスの言葉がガンドの呼び出しにより中断されアレンに警戒を任せるとガンドの側へ駆け寄った。

「こいつを見てみろ。羽化して間もないように見えるんじゃが?」

たしかに他と比べ色も薄く体を覆う甲も薄いように思える。

「そう見えるな。しかも大きさは小アリより少し大きいだけだが細部は大アリのものだ」

大アリとは小アリが成長して大きくなったものではないと考えられてはいるが調査は全くといっていいほど進んでいない。
わかっているとといえば最初から大アリと小アリとして産まれているであろうということ。
そして両者の違いのみ。
大きな特徴として顎と前足の形に違いがある。
大アリは戦闘に特化した造りをしておりその顎は棍棒程度なら噛み砕き、前足は研ぎ澄まされたナイフのような突起がついておりレザーアーマーを切り裂く。

「まさかとは思うがここが巣の最深部なのじゃろうか?」

「俺も先程考えていたんだがモンスターの数が多すぎる気がするんだ。あながち間違ってないかもしれんな」

二人はしゃがみこみ丁寧に調べ、話し込む。

「一度引き返したほうがいいのかもしれんの」

アレンは前方の通路を見詰めながら話を聞いている。
引き返すという単語に反応してしまうがガンドが言うのなら間違いはないのだろう。
見張りを続けて数分後何か動くものが見えた。

「ウォレスさん!」

話し込んでる二人はアレンの叫びが聞こえていない。

「ガンドさ──」

そのときアーニャの杖がガンドに向けて飛んだ。
それはもう綺麗に真っ直ぐ。

「あいた!何するんじゃお嬢ちゃん!」

「大勢のお客さんのようよ。完全に挟まれたわね」

杖を拾いながら目線を通路の先から外さない。
二人はハッと前後の通路を確認すると溢れんばかりのアリが通路を埋めつくし向かってくるのが見えた。
しかも全て戦士である大アリなのだ。

「すまんかった!」
「すまん!」

既に剣を構えているアレンの横に直ぐ様並んだウォレスは声を張り上げる。

「陣を整えろ!」

「ウォレス!これは普通じゃない数じゃぞ!消耗戦は分が悪い!坊主を此方に廻して帰る方向に突破したほうがよさそうじゃ!」

通路の奥を確認すると波のような集団が次から次へと押し寄せて来るのが見える。
瞬時に判断を下したウォレスは殿を務める覚悟を決めアレンに指示を飛ばす。

「俺が殿を務める!アレン君はガンドの横へ!アーニャちゃん!階段までに敵を撒きたい!道案内も頼む!テオ、援護任せた!」

「でも・・・」

アレンは心配そうな顔でウォレスを見る。

「大丈夫だ。撤退戦のやり方は熟知している」

アレンは頷きウォレスと拳を軽くコンっと付き合わせ持ち場へと向かった。

「ワシと坊主で強硬突破のため飛び込む!エレナちゃんとイオちゃんの二人で側面の敵を、お嬢ちゃんとサミエルは前後の支援を頼む!アリが途切れ次第全力で突っ走る!ウォレス!ちゃんと着いてくるんじゃぞ!」

そして飛び込もうとする二人に声がかかる。

「二人とも左右に避けて!大きいのお見舞いしてあげる!」

それを聞いた二人は瞬時に軌道を変え横飛びをする。
そして間髪を入れず前方へ走り込みながらアーニャが叫ぶ。

「サミエル全力で合わせなさいよ!」

「わかってるさ」

「「ファイアーウォール」」

アーニャ、サミエルの前方1m辺りから約20mくらいの距離に幅1mの火柱が2列出現しアリを焼き尽くす。
それは通路にいたアリを半分程仕留めることに成功する。

「魔力消費結構激しいから連発はできないからね」

「了解した、ワシらの出番じゃ!いくぞ!」

ガンド、アレンの二人はファイアーウォールに耐えたアリを集中的に攻め活路を開いてゆく。
テオが弓でウォレスの援護を、エレナとイオも弓を使い前方へ攻撃をしている。

「アーニャさん。今のうちにエンチャントを再度しておこう!」

「それがいいかもね」

そして二人は各々のパーティーへエンチャント魔法をかけていった。



ウォレスはアレン達が進む動きに合わせ少しずつ後退しながらアリを倒しきらないよう傷を負わせ、侵攻を遅らせようとしている。
その動きをアレンが見ていたならばさぞ感動したことであろう。
さすが経験豊富な実力者である。
次第にアレン達が進む速度より追い掛けてくるアリの速度が遅くなってきた。
所謂交通渋滞である。

徐々に距離が空いていくが警戒を解かずに後退するウォレス。
通常ならこれで殿の役目は殆ど終わるはずだった。
距離が5m程開いたとき異変が起こった。
傷付き鈍くなったアリを元気なアリが殺したのだ。
その強靭な顎を使い倒れたアリを脇へ投げ棄てると速度を元に戻し侵攻してくる。

「こいつら狂ってやがる」

ウォレスは驚愕した。
一瞬焦りを浮かべたが遣ることは同じとばかりに剣を振るう。
しかしアレン達が倒したアリの死骸や血によってすでに足元が悪く、しかも後退すればするほど酷くなっていくのだ。
流石のウォレスもこの状況で大アリ3匹を同時に相手にするのは分が悪いようで徐々に追い詰められていく形になっていく。
テオドロスも必死に弓で牽制するが狂ったアリは次々と襲いかかってくる。
ファイアーボールで広範囲を攻撃するもエルフの魔力ではそれほどのダメージを与えることができない。
そして遂に剣がアリの顎に捕まりもう片方の手に持つ盾を弾き飛ばされる。

ちくしょう!左腕で勘弁してやる!

生き残る代わりに盾を弾き飛ばされた左腕を犠牲にすることを選んだウォレス。
首筋目掛け迫るアリの顎へ左腕を差し出したとき銀色に輝くカタナがアリの頭部を切り裂いた。

「まだ働いてもらわないとね」

エレナはウォレスの隣に並びアリを牽制する。

「ありがとう。助かった」

ウォレスは顎に挟まれたままの剣を捻り垂直に持ち上げアリの頭部を真っ二つに切り裂く。
二人になったことにより安定したのを見計らい一気に後退し、前衛に追い付いたときウォレスは叫んだ。

「すまん!魔力がきついかもしれんが一発頼む!」

振り向いた二人のウィザードは示し合わせた訳でもなく異なる二つの魔法を時間差を持って最初はサミエルが唱えた。

「ファイアーボール!」

迫り来るアリの先頭集団が炎に包まれる。
そして次にアーニャが

「フローズンクラウド!」

ファイアーボールをぶつけた同じ場所に今度は氷の結晶を散りばめた極めて冷たい気体が降り注ぐ。
急激な温度差により殻の弱くなったアリを狙い済ませていたウォレスとエレナが簡単に動けなくしていく。
その後ろからテオドロスが脆くなった関節に矢を撃ち込み後方のアリの動きを止めていく。
これで多少は時間が稼げるだろうと思われた。
実際元気なアリが動けないアリを殺そうにも一匹あたり四匹は殺さないといけないのだ。
その時間は若干の余裕をウォレス達に与えることになっていた。
次にこれが破られるとジリ貧だと考えエレナ達と一緒に前衛が戦う場所まで走る。
見るに大分進んではいるようでアリの切れ目が見えている。

「もう後ろを支えることは難しい!ここは一気に突破をはかる!」

アレン、ガンド、ウォレス、エレナの四人を先頭に大アリを薙ぎ倒し、イオ、テオから弓が飛ぶ。

「もう少しだ!サミエル!最後頼むぞ!」

ウォレスの言葉に反応したサミエルは魔法の詠唱を開始する。

「右に行って迂回しましょう!」

アーニャの言葉を受け返答を返すアレン。

「わかった!その後は?」

「20m左!」

「了解!」

マッピング技術に優れているアーニャは通ったルートが全て頭の中に入っているのだ。
即座に判断できるあたり頼もしい限りである。

「イラプション!」

アリの大群を抜けた瞬間後方に向かってサミエルが魔法を放つ。
隆起した地面が5m程先まで続き、追いかけていたアリの姿を隠す。

「皆走るんじゃ!」

そうして抜け出すことに成功した一行は比較的安全地帯で小休止をとった。
 
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