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バウンサーさんのお話

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第六章

「いいわよ」
「それで御飯の後は」
「子供達を見てくれるかしら」
「何だ、何かあったのか?」
「勉強を見て欲しいのよ」
「やれやれ、それか」
「だって私よりあなたの方がずっと頭がいいでしょ」
 だからだというのです。
「お願いするわね」
「ああ、わかったわかった」
 バウンサーさんはフロプシーさんの言葉に少し嫌そうに返しました。
「それじゃあ御飯の後でな」
「そういうことでね」
「気が休まる時間がないな」
「さっきまでくつろいでいたでしょ」
「仕事から帰ってだぞ」
「それでもあったじゃない、私なんてね」
 フロプシーさんが言うには。
「家事ばかりで全然時間がないから」
「本当にか?」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのです。
「主婦は大変なのよ」
「それいつも言うな」
「本当のことだから。じゃあ御飯の後でね」
「わかってるよ、じゃあね」
 こう言ってなのでした、そして。
 煙草を吸いながらでした、また安楽椅子に座ってです。
 ぷかぷかと煙草を吸うのでした、奥さんはそのご主人にまたでした。
「ああ、明日ね」
「今度は何だ?」
「お仕事の帰りに胡椒買って来てね」
「またなくなってきたのか」
「ええ、だからいいわね」
「わかったわかった」
 バウンサーさんはもういいという素振りで奥さんに返します、そうしてでした。
 今はまた安楽椅子に座って煙草を楽しむのでした、それがバウンサーさんのかけがえのない一時であるからこそ。


バウンサーさんのお話   完


                           2014・7・15 
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