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インフィニット・ストラトス ―蒼炎の大鴉―

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戦いの代償

「福音の反応消失、同時に黒鉄の反応も消失した」

織斑先生から告げられたことはあまりにも衝撃的だった。

「…そんな…何かの間違い…ですよね…?」

「残念だが事実だ。今、教員が福音の搭乗者と黒鉄を捜索している」

「………」

「更識さん…」

山田先生が気遣ってくれている。

「あいつはよくやった。衛星からの映像によれば、福音は戦闘中にセカンドシフトしたらしい。それでもあいつは食い下がってなんとか仕留めたと聞いている」

そんな言葉で彼が帰ってくるわけじゃない

「あいつのおかげで密漁船を確保し、国際問題への発展も阻止出来た」

なら早く見つけてよ

「今は待て。それしか出来ない」

―――――――――――――――――――――

「和也が…行方不明だと!?」

「はい。暴走した軍用ISと交戦、撃破したものの直前の被弾で自身のシールドエネルギーがきれてそのまま海中に…」

「…捜索隊を出せ。今すぐに!!」

「はっ」

和也…無事でいてくれ

―――――――――――――――――――――

「和也くんが…?虚、それは本当なの?」

あの私より強い和也くんが?

「はい、先ほど情報を掴みました」

「虚、私行ってくる」

「お気をつけて」

勝ち逃げなんて、許さないわよ

―――――――――――――――――――――

陸まで約2km。消耗しきった俺の身体ではとてもじゃないが泳いで行ける距離じゃないな。

あとどれくらい、こうしていられるか…

俺は…死ぬのか…?

既に水面に顔を出すことさえ困難になってきた

そういえば福音の搭乗者はどうなったんだろうな…

流されたのか…既に助けられたのか…

ああ…もう駄目だ…手足が思うように動かない…

死にたく…ない…な…

俺の意識はここで途切れた。

―――――――――――――――――――――

「若はまだ見つからんのか!?」

「まだ報告がありません」

「くそが、こうしている間にも若は苦しんでいるんだぞ」

レーダーが何かを捉える。

「左舷側に反応有り」

「何!?急げ!!」

「あれは…若です!」

「救命艇を出せ。早く!」

発艦した救命艇は真っ先に和也のもとに向かう。

そして隊員が和也を海から引き揚げた。

「かなり衰弱してる。急いで戻るぞ!」

「はっ」

モーターを最大で回し、船に戻る。

「急げ、点滴の準備をしろ!!」

黒鉄和也は一命を取り留めた。

―――――――――――――――――――――

「そうか…。まだ意識を取り戻さないか」

「我々としてもベストを尽くしているのですが…」

「やはり消耗が激しかったのが原因か?」

「はい。精神的な消耗に加え、各部の骨折や打撲、火傷、それに酸欠もあります。むしろ、よくこの状態まで持ち直した、と言うべきです」

「わかった。意識が戻ったら報告してくれ」

和也…早く目を醒ますんだ。いつまで彼女を泣かせる気だ

―――――――――――――――――――――

ここは…

辺りは岩場、だが巨大な鉄の扉がある。何かの基地…か?

少し歩いていくと、戦闘の音が聞こえてくる。走って音の方向に行く。

巨大なロボットが戦っている。1つは見覚えのある姿だった。

デルタカイ…

それは確かにデルタカイだ。それがその2倍もある巨大なロボットと戦っていた。それも2機

デルタカイの味方は既に戦えない。デルタカイだけが辛うじて交戦出来ているが、相手は2機。それも、両方の関節から蒼炎が吹き出ている。ナイトロ搭載機か。

「む、無茶をして!」

そんな中、デルタカイの後方から損傷した機体が現れ、加勢した。

「兄貴の言うことを黙って聞くような弟じゃないってわかってんだろ?」

デルタカイと合わせるように同時にハイメガキャノンを放つ。

「ったく嫉妬するぜ。俺とは仲良くなれなかったくせに、あいつの言うことは聞くんだな。けどすごい兄貴だろ?俺の自慢なんだ…。守ってやってくれよ、ガンダム」

加勢に入った方の機体のハイメガキャノンの出力が上がる。

2機の大型はハイメガキャノンでボロボロになり止まる。

そして、加勢に入った機体は自身のハイメガキャノンの熱でコックピットを焼失、動かなくなる。

デルタカイから蒼炎が吹き出る。まるで慟哭の咆哮のようだ。

「これが…ナイトロのもたらすもの」

振り返ると女性が立っている。顔は後光でよく見えない。

「あの機体、量産型ZZのパイロットはナイトロでボロボロだった。だから最後に残された時間でデルタカイに乗った兄を助けた」

「……………」

「ナイトロを駆るものはいずれこのようになる。それでもあなたはナイトロを駆るのですか?」

「…当たり前だ。守るべき者のために命をかける、それが上に立つ者の責務だ」

「例え死ぬとわかっていてもですか?」

「そんな覚悟はとうの昔にできているさ」

「そうですか…。なら行きなさい、和也。あなたを待っている人がいるわ」

後光が消える。

「…母さん…」

その女性は4年前に病気で死んだ母親だった。

「あなたのこと、見守っているわ」

「ああ、行ってくるよ。母さん」

世界が光に飲まれていく。そして、俺は目を醒ました。

―――――――――――――――――――――

「ん……ここは…」

天井が白い。

「…和也…くん…」

右を向くと、簪がいた。目が真っ赤になっている。泣いていたのだろう。

「…簪、心配させたな」

「和也くん…」

簪は俺に抱き付いてくる。そんな簪の頭を撫でてやる。

「…もう…目を醒まさないかと思った…」

簪が泣き出す。

「安心しろ。俺はちゃんとこうしているだろ」

右腕で簪を抱き締めた。

 
 

 
後書き
補足
和也が目を醒ますまで1週間かかりました。

それと、福音の搭乗者であるナターシャ・ファイルスはIS学園教員が発見、保護しました。 
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