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転生者の珍妙な冒険

作者:yasao
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初めてだ・・・・こんなに疲れたのは・・・・・・

 
前書き
修行の話です。 

 
「しぇあっ!!!!」
ベキッ!!!!
「ぐほっ!?」
森の中に、骨が折れたかのような痛々しい音と、呻くような悲鳴が響く。
ジークの一蹴りで肋骨を砕かれ吹き飛ばされた聖斗は、5mも飛んで木に叩きつけられた。
「チッチッチッ、甘いな~聖斗は。そんなんじゃあいつまでたってもマトモな飯は食えんぜ?」
そう言って笑うジークの手にあるのは、温かいシチューの入った皿。ジークはそれを目の前で平らた。
それを見てるだけの聖斗の腹が音を立てる。
彼はもう3ヶ月、マトモな飯が食べられていなかった。
修行を始めてから4ヶ月、最初の1ヶ月で漢武夷(カムイ)流柔術の型を粗方覚えた聖斗に告げられた驚愕の言葉。

「じゃ、今後飯を食いたかったら俺に攻撃をして隙でも作って、俺の飯を奪いな。出来ない内は森で適当に食ってろ。」
「・・・・・・・は?」

初めは聖斗も聞き違いかと思ったが、次の日からその言葉は現実になった。
用意されない飯、挑んでは返り討ちにされる強敵(ジーク)、空いていく腹、誰か(ジーク)に狩り尽くされたせいで全くいない動物、そんな中でもずっと続いてる普通の修行。
3ヶ月の間に聖斗が口にできたのは木の実と野草と水だけ、そろそろ限界だった。
「ジーク・・・、お前効率って言葉知ってる?」
「何も出来ん奴が実りが遅い時に言い訳に使う言葉だよな?」
修行に異を唱えようにも、サラッと手痛い言葉を返されて何ともならない。
オマケに、1度スタンドを使って取ったら「体捌きも出来てねぇのに楽するんじゃねぇ!!!」と激怒されて1週間マトモに動けない程の大怪我を負わせられた。
まぁ、それはともかく・・・。

「はぁ、仕方ない。飯でも探すか・・・。」
既に食事の時間は終わっている。シチューは全部ジークの胃の中へ消え、追加で彼が作ることも有り得ない。
その事を分かってる聖斗は、空きっ腹を抱えて立ち上がり、今日も適当な木の実を探しに森の中へ去っていくのだった。
「明日の朝飯はピザトーストだ、楽しみにしてろよ~。」
そんな小馬鹿にしたようなジークの言葉を背中で受けながら・・・・・。





















「だ~畜生!! 何なんだよあの野郎、俺を飢え死にでもさせたいってのか!!?」
喚きながら取り敢えず森の中を探す。そろそろこの周辺の木の実も減ってきたな・・・・・。
・・・・・。
「俺、なにやってんだ・・・?」
思わず口から漏れる声。
ちゃんと毎日修行はしてる。だが、強くなった実感が一切湧かない。
毎日毎日、ジークは俺をキッチリ吹っ飛ばして俺に見せつけるように飯を食う。
俺はやられっぱなしだ。
「・・・ん?」
その時、森に違和感を感じた。
今までの森と何かが違う・・・・・、侵入者か。
「まぁ・・・いい。ジークじゃあ分からん俺の成長具合を確かめてやる!!」
「GYAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺の言葉を待ってたかのように茂みから飛び出してきたのは、ランクAの魔物、大鬼(オーガ)
この森の魔物は狩り尽くされてるハズ、つまり誰かが外から持ち込んだって訳だ。
「やれやれ、このデカブツ殺した後に黒幕も潰さにゃならんのか・・・。」
ゲンナリしようが大鬼(オーガ)はお構いなしでその岩のような拳を叩きつけてくる。
・・・・・遅い・・・・!!
冷静に軌道を読み取り、攻撃の流れに添ってスッと回避。それが出来るほどに大鬼(オーガ)の拳は遅く感じた。
「以前の俺なら、慌てて跳ぶしか出来んかっただろうに・・・・。」
今ので分かった。
俺は間違いなく強くなってる!!
「そうと決まれば・・・・・オラァッ!!!!」
俺の眼前を通り過ぎた大鬼(オーガ)の腕を掴み、足を払って投げる。漢武夷(カムイ)流柔術の投げ技の型そのままだ。実戦化できるようになってる!
そのまま振りかぶった右腕に波紋を込め、
波紋疾走(オーバードライブ)!!!」
ガラ空きの胴に叩き込んで大鬼(オーガ)を吹き飛ばす。力試しに全力で殴ったらオーガは胸部を弾けさせて声もなく絶命した。
「予想以上だな。ジークの教えはちゃんと俺の体に染み付いてたんだ。」
その事は嬉しいが、まだ油断は出来ない。
大鬼(オーガ)なんて今までこの森に現れたことすらない魔物だ。ランクAっていう厄介な強さもあるから生半可な奴じゃあ使役なんて出来ない。
「・・・・まてよ? 確か子鬼(ゴブリン)大鬼(オーガ)の幼体だったよな?」
子鬼(ゴブリン)はランクEの雑魚魔物だ。その程度だったらある程度の冒険者なら持ち運びが出来る。
子鬼(ゴブリン)を持ち運び、一気に成長させる。
普通なら有り得ないことだ。
だが、俺は少なくとも「逆」なら出来る能力を知ってる。
「そうか・・・・大鬼(オーガ)の黒幕はディノの刺客か・・・。」
「あの」スタンドなら気配を消して大鬼(オーガ)に近づく事ができたら子鬼(ゴブリン)に戻すことも出来、森まで子鬼(ゴブリン)を運んだらスタンドの能力を解除したらいい。

「エジプト九栄神の邪神『セト』が暗示するスタンド、セト神だな? 答えろ!!」

言いながら手に皇帝(エンペラー)を出し茂みを撃つ。
どうせ宣言すらしてないから弾丸撃つだけだろうが、まぁ威嚇のつも【スキル「スタンド『タロット大アルカナ』」のレベルアップ確認。性能が向上します】・・・・ん?
謎のアナウンスに困惑してる間に、放たれた弾丸はキッチリと隠れてた敵を追尾して命中した。
「そこか!! クラッカーボレイ!!」
命中音がした場所に投げ込んだクラッカー。
だがそれは当たらず潜んでる何かに切り裂かれた。
そのまま敵は隠れるのを止めて俺に飛びかかってくる。
「チッ、洒落臭い!!」
自分から踏み込んで波紋を込めた蹴りを敵に放つ。だが敵は空中で方向転換して上空へ跳び蹴りを避けた。
空中ジャンプが出来るレベルの身体能力か・・・。
「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」
もう隠れる気すら失せたのか、敵は雄叫びを上げながら空中ジャンプで俺に飛びかかり、手に装備した長い爪のような武器で斬りかかってくる。
「早いな、大した身体能力だ・・・!!」
それを躱しても地面を蹴って距離を詰めどこまでも斬りかかってくる。鬱陶し・・・・ッ!!
悪寒とともに体が縮むような感覚。
「マズイッ!!」
回避は出来たが、少し若返らされたか・・・・今は15歳かな・・・?
「今のを察知出来るたぁ、中々やるじゃねぇか。」
「そりゃどうも・・・。お前の身体能力も高いな、中々のもんだ。」
悠長に会話をしてはいるが、正直ヤバイ。セト神の力を今度使われたら流石に戦えない年齢になるし、距離を詰めん攻撃はあの爪で切り裂かれる。
さて、どうするか・・・・。
「ま、やるってもあくまで『中々』だ。セト神でガキにすりゃあ終わりだしな。血を吸うのが楽しみだぜ・・・・・・。」
俺を動揺でもさせたかったのか奴が口走った台詞。その中にあった単語が俺の頭の中で反響した。

血を吸う・・・・・・。
つまり、吸血鬼か屍生人(ゾンビ)!!

「だったら、対処出来るな・・・。」
一先何の疑問も持たずに追いかけてきやがった。
「無駄だ無駄ぁぁぁぁ!!!! さっさと切り裂かれて血を噴出せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「お断りだ!! 生命磁気の波紋疾走(オーバードライブ)!!!!!」
全身に波紋を纏って体内磁気を強化し、茂みの葉っぱを体に貼り付かせる。そのまま茂みを抜け・・・・・。
「反発しろ!!!」
ヒュンヒュンヒュン!!!!
「あぁ!?」
反発する磁気で弾かれた葉っぱが一斉に奴の方へ飛びかかる。
多分このままでは斬られて終わり、何の意味もなさない。
案の定アイツは「時間稼ぎかぁ!!?」とか言って葉っぱを爪で切り裂いてる。
「よし、それでいい・・・・・。」
奴は気づいていない。葉っぱに紛れて一緒に飛ばされた蔦に。その先端が俺に握られてる事に!
蔦が葉っぱの1枚に触れた瞬間、蔦に波紋を流して葉っぱ全てに伝わらせる。水分もある植物の伝導は早い。アッと言う間に奴の周りの葉っぱ全てに行き渡った。
「な、なんだ!? 俺をこの波紋で殺そうってのか!? 無駄だぜ、この程度なら俺の速度で脱出出来る!!!」
そうだろうな、俺だってこの波紋で倒す気は更々無い。より確実な手段を取る。

「タロット、大アルカナは9番『隠者』の暗示するスタンド、隠者の紫(ハーミッドパープル)!!」

波紋の流れた蔓と葉っぱが、紫色のイバラに変わって屍生人に絡みつく。
「ぐおっ!!?」
「これも修行の成果、かな? 今までだったらこんな物伝いで波紋流してスタンドに、とかは無理だった。」
何はともあれ、これで敵の捕縛は終わりだ。サッサと仕留めよう。
「この隠者の紫(ハーミッドパープル)の能力は念写だ。お前の脳内から情報を抜き出してやる!」
そのまま隠者の紫(ハーミットパープル)を地面にも伸ばし、奴の脳内の情報を砂に書き込んでいく。
「チッ、コイツは下っ端か。何も持ってねぇな。」
あったのはディノの名前だけ、雑魚め。
「まぁいい、死にな。波紋を流し込んでやるぜ!!!!」
「やっ止め・・・・・アァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
スタンド越しに流し込まれた波紋によって、屍生人はドロドロに溶けて消滅した。

「ふぅ、疲れた・・・・。」
「強くなってただろ?」
「ッ!!?」
いきなり後ろからかかった声にビビって振り向いたら、後ろにはジークがいた。
「何だ、アンタいたのかよ・・・・。」
「俺が敵の気配に気づかない訳ないだろ? お前より長くこの森に住んでんのに。」
確かに、言われてみたらそうだ。
ってことは、コイツ俺が倒すのずっと待ってやがったな・・・・・。
「不満そうな顔だな~・・・、お前だって自分の実力が付いてきてるの分かっただろ?」
そう言って笑うジークの面を見てたら、怒るのも面倒になった。
それに、実際実力は付いてる。
このまま頑張ったら、いつか普通の飯にありつけるってことだ!!
「やっと分かったみたいね。じゃあ頑張れよ~。」
「おぅ、見てろ!!」
俺の返事に手を振り、そのまま家の方へ歩き出すジーク。
その家の方角からは美味そうな匂いと共に煙が・・・・・・・・って!!
「朝飯作ってるんだったら言えやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」



こうして、今日もジークvs聖斗の飯争奪戦から1日が始まる・・・・・・。




















そして、1年後
























「準備出来たか、聖斗。」
「あぁ、行こうか、仲間探しに。」 
 

 
後書き
ここで所謂第一部みたいなのが完結です。
2週間休むとか言いましたが、前回の投稿から結構時間経ってるので書き終わったらすぐ投稿します。 
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