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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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入学編〈上〉
  入学式(1)

学校施設を使うにはIDカードが必要不可欠。そのカードは入学式終了後に配布されるので、俺らはベンチに座りながら時間を潰している訳だが、式運営に駆り出されているのか在校生が通り過ぎる。それも距離を取って横切っていくが、彼ら彼女達の左胸には一様に八枚花弁のエンブレム。通り過ぎて行った背中から聞こえるのは、無邪気な悪意と共に恐れていた。

「あの子、ウィードじゃない?」

「こんなに早くから・・・・補欠なのに、張り切っちゃって」

「所詮、スペアなのにな」

「おいおい見ろよ。ウィードの隣にいる人がこちらを見ているから早く立ち去ろうぜ。今年度の一年生は、護衛付きが入学してくると聞いた事があるからさ」

まあそう何だが、今年度の一年である俺と深雪は護衛が付いている事は、この学内には知れ渡っていると聞いた。それと蒼太が睨んでいたのは本当だ。サングラスしているから見えないけど、少々殺気を込めているからな。

「蒼太、落ち着け。俺らが何しようとも行動すれば何とかなるさ」

「申し訳ありません。ついウィードと聞いたので」

二科生だろうと身体的技術で何とかすればいい事。ちなみにウィードとは、二科生に対する差別用語。一科生の制服には八枚花弁のエンブレムが刺繍されている為、花冠としブルーム(bloom)であり、 二科生の制服にはこれが無いから花の咲かない雑草を揶揄してウィード(weed)と呼ぶ。

一学年の定員は二百名で、その内魔法力の高い百名を一科生、残りの百名を二科生としている。一科生4クラス、二科生4クラスの8クラス体制である。この学校は国立だから日本政府から予算が与えられている代わりに、一定の成果が義務付けられている。学校ノルマとしては魔法科大学・魔法技能専門高等訓練機関に、毎年百名以上の卒業生を供給する事。

そう言うのは日本政府がやっている事であり、俺ら蒼い翼も予算という資金提供をしてるが別にノルマ無しでやっている。二科生は魔法教育で事故により退学する生徒がいるが、そいつらは事故で魔法が使えなくなったという理由で退学する。

退学後を我ら蒼い翼が、事故後に魔法を使えるようにと施設を建てた。それについては日本政府も知らない事だったが、つい最近ニュース化になった程だ。俺ら二科生は、その退学生徒の穴埋め要員に過ぎない。二科生は学校に在籍・授業に参加・施設・資料を使用する事が許可されているが、重要な魔法実技の個別指導を受ける権利がない事だ。所謂独学で学べと言っているような事。自力で結果を出せなければ普通科高校の卒業資格しか与えられない。

「あとは魔法を教えられる者が圧倒的に不足している現状、才能がある者を優先せざるを得ないから。二科生は最初から教えられない事を前提に入学許可された事であり、二科生をウィードと呼ぶ事は禁止されてますが、二科生自身も定着しておりますからね」

「そう言う事だ。俺ら二科生はただのスペアとしか見ていないし、一科生は二科生を侮辱する面があるからな。それを解決する為に俺が二科生となり深雪が一科生となった。今年度だけは、護衛付きの生徒がいる事はもう知れているからな」

と俺らはそう話しながらも、俺はこの時代では珍しい紙製の本を取り出して読んでいた。蒼太も自由に時間を潰していたけど、入学式が始まる三十分前に俺らの知り合いが現れるまで本に集中していた。

「こんな所にいましたか。織斑君」

「ん?ああ七草先輩でしたか、それとも会長と呼んだ方がいいですかな?」

「私としては会長の方がしっくり来ますが、開場時間なので呼びに来たのですよ。それとしっかりと装備しているようですね」

「これはどうも。もうこんな時間ですか。では俺達は行きますよ、七草会長」

一礼してから会場に向かったが、装備の事について聞かれた。制服のズボン付近に分かるような装備をしている生徒は俺くらいだろうし、あとは護衛である蒼太と沙紀ぐらいだな。本来CADは、生徒会の人間しか持たないが俺らは特例で持っている。

会長のは、ブレスレッド型で普及型より薄型化された最新型。まあ俺らの技術であればあれよりもっと薄型できるが、この国では法機(ホウキ)という呼称も使われる。魔法を発動する為の起動式を、呪文や呪符・印契・魔法陣などの伝統的な手法・道具に代わり新たな道具で、現代魔法師にとって必須ツール。俺には必要ない事だが、CADが出るまで数十秒経過する所をこれが出てから一秒くらいらしい。

俺らが入った時は、既に席の半分以上が埋まっていた。座席指定がないから、どこへ座ろうが普通は問題ない。現代も学校によっては、入学式前のクラス分けを発表させてからクラス別に並ばせられるというのもあるが、この学校はIDカード交付時に判明する仕組みになっている。

なので今はどこに座ろうとも関係ない事だが、新入生の分布には明らかに規則性があった。前半分は一科生。左胸に八枚花弁のエンブレムを持つ生徒は、学校のカリキュラムをフル活動できる新入生。後ろ半分が二科生で左胸ポケットが無地で補欠扱いで入学を許された生徒。

「一真様。あちらの席が空いてますが?」

「そうか」

最も差別意識があるのは差別を受けている者のみか、まあ俺は気にしない方だ。後ろ盾は、蒼い翼と織斑家は零家・四葉家・七草家と繋がりを持っている事となっている。まあそれについては後程公表するから問題はないが、俺は蒼太が指定した後ろの右端に座る。

蒼太は護衛なので、命令がない限り座らない。表では護衛となり、身辺を守る事が仕事だが裏では俺の部下でもある。腕にはめている時計を見るとあと二十分か。ここは通信制限をかかっているが、生憎俺らはそういう制限はないがここで端末をやるのはマナー違反だろう。深雪は今頃最後のリハでもしていると思うと、沙紀からの定時通信兼脳量子波だと慌てずに落ちついているそうだ。緊張をほぐそうと沙紀は色々している。

「あの、お隣は空いていますか?」

脳量子波での定時通信を受けた後に声がかかった。声の方向を見ると女子生徒だった。

「ああ、どうぞ」

空席はまだあるはずなのに、何故俺の隣に来たのだろうか?俺と蒼太は同じ考えをしていたが、見知らぬ男子との隣に座りたがる何て度胸があるなと思った。まあここの椅子はサイズが細見でも大丈夫なよう設計されているし、声をかけてきた女子生徒でも座れるだろう。

「ありがとうございます」

頷いたと同時にそう言ってきた後、三人の女子生徒が座る。どうやら四人一並びで座れる場所を探していたらしい。

「私、柴田美月って言います。よろしくお願いします」

俺は予想外な自己紹介をされたがすぐに解釈をした。まあ二科生だから、お互い助け合いで頑張ろうという意味で教えられてきたのかもしれないな。

「俺は織斑一真という。よろしくな」

自己紹介返しをすると柴田さんはホッとしていた。ふむ、メガネか。西暦2014年はかなりいたが、この時代では珍しいな。21世紀中盤になって、視力矯正治療普及したお蔭で近視という言葉は死語である。ここにいる蒼太はただサングラスかけているだけだが、余程重度な先天性視力異常でもない限り、視力端正具は必要ない。

俺の部下は視力矯正治療をしないで、そのまま度入りのメガネをかけている者もいるしファッションとして付けている者もいるが、この子の場合は『霊子放射光過敏症』だと思うな。レンズを見た時に度は入っていない。

「あたしは千葉エリカ。よろしくね、織斑君。ところで隣に立っているのは誰?制服着てないようだけど」

「よろしくな。学内では慌ただしいと思うが、今年度の一年生は護衛付きが二人入学するとの事は聞いた事ないか?コイツが俺の護衛者だ」

「あの噂ってホントだったんだ。護衛の人の名前は?」

「蒼太」

「はい。私の名は蒼太と言いますが、残念ながら本名は言えずコードネームとして名乗っています。よろしくお願いします」

にしても千葉、ねえ。確か千葉家当主とその愛人だったアンナ・ローゼン・鹿取の間に出来た娘と聞いた事があるがもしかしてこの子なのか?千葉さんの向こう側に座ってきた女子からも自己紹介終了した所で、千葉さんが俺の装備について質問してきた。

「ねえねえ、それってもしかして・・・・」

「ん?ああこれね。これはちゃんと許可貰って装備をしているよ」

「じゃあそれは実銃なんですか?」

「まあね。他にも反対側には特殊警棒もあるが、蒼太も同様にね。ところで4人は同じ中学なの?」

千葉さんの答えは、意外だった。

「違うよ、全員さっき初対面」

意表を突かれた俺の表情が可笑しかったのか、千葉さんは説明を続けた。蒼太もクスクス気味だったから、千葉さんが気付かないで蒼太の後ろからハリセンで軽く叩いた。

「場所が分からなくてさ、案内板と睨めっこしていた所に、美月が声をかけてくれたのがきっかけ」

「・・・・案内板?そんなのあったか、蒼太」

蒼太に聞いてみてもさあ?と言う感じだったが。入学式のデータは、会場の場所も含めて入学者全員に配信されている。携帯端末に標準装備されているLPS(ローカル・ポジショニング・システム、英名:Local Positioning System)を使えば来れるはずだが。

ちなみに俺の携帯端末は、この時代では珍しいスマホとケータイを持っている。両方ともトレミーとの連絡手段となってるが、一応この時代に合せて改造したスマホ。あとは隊員との通信機とかも持っているが、LPSは俺らでいうならGPS機能とでも言うのかな。

「あたし達、三人共端末持って来ていなくて」

「だって、仮想型は禁止だって入学案内に書いてあるんだもん」

「折角滑り込めたのに、入学式早々目を付けられたくなかったし」

「あたしは単純に忘れたんだけどね」

「なるほど・・・・そう言う事ならしょうがないな」

端末を忘れた時点でそう言う事なら迷うはずだと思った。まあ俺らは、例え離れても耳に付ける通信機で位置特定してくれるトレミーがいるからな。入学式が始まったがやはりと言うか、来賓祝辞と来賓紹介が大きな歓声が上がった。

それは蒼い翼の副社長をしている青木が来ていた事だ。蒼い翼は世界一有名な大企業であり、卒業者が就職するならナンバー1だからである。あとはFLTの社長や各企業の社長で、どれも俺らの傘下のだ。 
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