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告白させて

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第四章


第四章

「そんなことはよ。とにかくな」
「とにかく?」
「どうしたの?」
「飯食うんだろ」
 話をそこにしたのだった。昼食のだ。
「そうじゃないのかよ」
「ああ、まあな」
「お昼の時間だし」
 だからだと返す面々だった。
「それじゃあ食うか」
「美人を見ながらね」
「美人って誰なんだよ」
 真彦はシラを切り続けていた。しかしその目はクラスの中にいる茶色の髪を伸ばして薄い眉をしたたれ目の小柄な少女に釘付けとなっていた。
 見ればそのたれ目はきらきらとしており肌は白い。あえて意識せずに彼の視線を気にはしていないようである。しかし何処か恥ずかしそうな顔をしていた。
 真彦はとにかくそのクラスに入り浸りである。このことは職員室の話題にもなっていた。教頭ですらこんなことを言う始末であった。
「雨宮君はなあ」
「ああ、あいつですね」
「相変わらずですよ」
「言わないのかい?」
 その痩せた顔を傾かせて教師達に話す。
「もういい加減」
「その話はないですね」
「あれで勇気はないですから」
 教師達も知っていて言っている。
「もう誰でも知っているのに」
「自分だけそうは思っていませんし」
「わかるよ」
 教頭はあっさりと話した。
「あれはね」
「もう表情で」
「それに態度で」
「全くだよ。あれはないよ」
 教頭はさらに言った。
「一年の時からだしね」
「岡村も大変だけれどな」
「全くですよね」
 ごちゃごちゃとした職員室の中で場違いな話が為されていた。
「あそこまでいつも見られていたら」
「かなり」
「告白すればいいんじゃないのか?」
 教頭はかなりダイレクトに話した。
「もうあそこまでいったら」
「そう思うんですけれどね」
「私も」
 教師達ですらこう言う程だった。
「絶対に成功しますし」
「雨宮君ってあれで格好いいですしね」
 少なくともルックスはいい真彦だった。それはいいのである。
「性格も悪くないし」
「そうですよね」
「成績もそれなり」
「大学も行けますよ」
 学園生活自体はそつなくこなしている彼なのである。
「あれさえなければなあ」
「いいんですけれどね」
「まあ相手がある話だからな」
 教頭の今度の言葉は素っ気無いものだった。
「岡村さんがね」
「問題はあの娘がどうするか」
「それですね」
「そう、それだよ」
 教頭が指摘するポイントはまさにそこであった。
「岡村さんがどうするかな」
「雨宮は多分ずっとあのままですしね」
「告白とかはしないで見ているだけですか」
「見るのが精一杯だね」
 教頭はまた言った。
「あれじゃあね」
「やれやれ、早く言えばいいのに」
「全くですよ」
 教師達の間でもそんな話がされていた。しかし真彦は相変わらずその理佐を見ているだけであった。周りはそんな彼を見て遂に言った。
「もう見ていられないな」
「全くよね」
「早く言えよ」
「そうそう」
 こんな話をしていた。
 
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