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告白させて

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第三章


第三章

「いるしな」
「折角だしな」
「美人を見ながら食べるのもいいだろ」
「だから美人って何なんだよ」
 まだしらばっくれる真彦だった。しかしその手には弁当がしっかりとある。
「俺は別にな」
「ああ、わかったからな」
「食おうぜ」
「それでいいよな」
「何かわからないけれどな」
 まだ言うがそれでもだった。彼は結局そのクラスに入ってそのうえで用意された席に着く。そのクラスでは皆あえて何も言わない。ただし彼ともう一人を見て密かにくすくすと笑っていたりもしていた。
「あれで誰も気付いてないってね」
「思えるのが凄いし」
「ばればれだし」
「全く」
 女の子達がとりわけくすくすと笑っている。
「ほら、見てよ。ずっと見てるし」
「もう見る目が違うし」
「ガン見じゃない」
 真彦は食べている間中ずっと一点を見ている。その先には茶色の癖のある髪を長く伸ばした小柄な女の子がいた。
 肌は白く眉は薄い。そしてその目はかなりの垂れ目である。にこやかな表情が実に眩しい。その娘をずっと見ているのである。
「入学して一ヵ月後にはああだからねえ」
「二年になってもね」
「そんなのだしな」
「先生だって皆気付いてるし」
 学園の誰もが知っていることなのは確かだった。
「早く言えばいいのにね」
「こんな状況で断ることなんてできないし」
「里沙だってそんな娘じゃないし」
 こう話す。ひそひそと話しているがそれ以上にもう皆わかっているので聞いても特に何も思わずそれぞれ弁当やパンを食べながら真彦を見ていた。
 そしてだ。真彦と一緒に食べている面々はだ。わかっていて言うのだった。
「なあ、雨宮よ」
「御前今彼女とかいるのか?」
「どうなんだよ」
「いないよ」
 こう答える彼だった。
「それがどうしたんだよ」
「いないのか、そういえばな」
「そうそう」
「岡村さんもそうだしな」
 わざとその名前を出してみせた。
「あの娘いないってな」
「募集中ってか?」
「そうらしいな」
「おい」
 そう聞いてだった。真彦は目を座らせて問い返した。
「何でそう言うんだよ」
「いや、別にな」
「ただ聞いただけだよ」
「なあ」
「いないってな」
「岡村さんに彼氏いないのは事実だぜ」
 そして一人がこう言った。
「どうよ、それでな」
「御前も彼女いないしな」
「何がどうなんだよ」
 ここでまたムキになる真彦だった。
「それがよ」
「あれっ、それが一番気になるんじゃないの?」
「違うの?」
 今度は女の子達がからかってきた。
「理佐に彼氏がいるかどうか」
「それじゃないの?」
「何でそんな話になるんだよ」
 真彦はまだしらばっくれていた。
「そんなことによ」
「まあシラを切るのならいいけれどな」
「皆わかってるしね」
「勝手な憶測するなよ」
 まだこう言う彼だった。
 
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