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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  11話

「よし、今日からお前達も晴れて下忍となった。お前達の目指すものを聞いてみたいぞ」
……忍具が届いてしばらくし、私は順当に卒業試験をこなして下忍となったものの、相変わらずネジの監視が必要なようで強制的にネジと同じ班になった。付け加えるなら、私の班だけは例外として三人一組ではなくリー、テンテン、ネジ、私の四人一組となったということだろう。
だが、私にとってはそんな事は極めてどうでもいい。私の興味は今、目の前の男に向けられているのだ。
私達の担当上忍のマイト ガイ、この人は本当に人間か?
どれほど状況を私に有利に持ち込もうが、如何なる手段を持ってしても勝ち筋が全く見えないというのは初めてだ。
それ程までにこの人の身体能力は規格外であり、圧倒的なのだ。その上で八門遁甲も使用可能となると、この人が命を捨てる気で戦えば勝てる相手などいないのではないだろうか?
そも、それに至るまでの厳しいどころの騒ぎではない鍛錬を考慮すると、精神面と肉体面両方が規格外という文字通り人類種としての頂点にすら立っているのではないだろうか?
「ヒジリ様、どうかしましたか?」
「ん?ああ、済まない。私としたことが別の事に気を取られてしまったようだ」
「ヒジリにもそんな時があるなんて意外ね……」
「君は私を何だと思っているのだ、テンテン」
「えっと、僕の夢は体術だけでも立派な忍者になれると証明する事です!!」
「ふっ」
「あー!!今、笑いましたねネジ!!」
「いや、馬鹿にしたわけではない。ただ、ヒジリ様を前にして体術だけで立派な忍者になると言える奴がいるというのが意外すぎてな」
「だね……忍具の投擲ですら平気で予測されるし、忍術でしか対処できないっていうね。本当にあなた下忍なのヒジリ?」
「君達には一度私をどう見ているのか、話し合う必要性がありそうだな……まぁ、それはいいとして私はリーのその夢を笑いはしない。
それが如何に厳しい道かを知った上で言っているのだろうし、そのための努力は惜しまんだろうからそれを目指して頑張りたまえ」
「は、はい!!頑張りますよ、ヒジリさん!!」
「そう、叫ぶな煩くて敵わん。それとネジでもないのにさん付けはやめろ、歳も同じだろうに」
「ど、努力はしてみますヒジリ……さん」
治ってないぞ、リー……気長に待つしかないか。
「そういうお前の夢は何だ、ヒジリ?」
「そうですね、まだ決まっていないのでまずは目標を見つけるために忍者になろうといった所でしょう」
「そうか、その為の手助けなら俺はおしま。その目標を見つけたら、教えて貰えるか?」
「はい、分かりました……君達は何故鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべているのだ?」
「ひ、ヒジリ様が…………」
「け、敬語を…………」
「つ、使いましたね…………」
「よし、リーも加えて君達には説教が必要なようだな」
私とて敬意を払うに値する人物であれば敬語くらい使うのだ。




「それじゃあお前達の今の実力を見せて貰うぞ」
ガイ先生に連れられ、近くの実戦演習場にやって来た私達は彼と一対一での手合わせをすることとなった。確かにこの人相手に私がどこまで戦えるのか知りたくはあったので、これは願ってもない機会だ。
「それでは誰からだ?」
「はい!!僕からお願いします!!」
「よし、ではリーからかかって来い!!」
リーは馬鹿正直に正拳突きや回し蹴りを正面から放つが、ガイ先生はそれを全て防御することで防いでいる。本来ならリーの攻撃は全て回避することが可能だが、私達の実力を知るという意味で敢えて受けているのだろう。
「ヒジリ様、リーのやつをどう見ますか?」
「ん?リーか……ネジ、君は?」
「俺には極々一般的な取り立てて才能の無い、ただの落ちこぼれに見えます。確かに八門遁甲の素質はありますが、それだけと言ったところですね」
「ふむ、大方その通りだが、一箇所君は見落としている。彼の筋肉量や体力の成長は中々と言える、身体能力だけで言えば私よりは上だからな」
「そうですか?」
「ああ、無駄な動きなどでそれらは損なわれているが、その辺りは動き方を覚えればどうとでもなる。当然それは並大抵の労苦ではないだろうが、それをこなすだけの克己心は彼には備わっている。
ネジ、侮ることなく注意しておきたまえ。気を抜けばリーに追い抜かれるやもしれんぞ?」
「……分かりました、ヒジリ様の仰る事ですから事実その可能性が多いにあるのでしょう」
「それは結構、精進したまえよ」
「それにしても、ネジって本当にヒジリの事を信じてるよね」
隣に立っていたテンテンがネジを見て呆れるようにそう言った。
「それはそうだろう。観察眼や戦力を把握する事においてはヒジリ様は異常と言ってもいい程に優れている、それはテンテンも分かっているだろう?」
「そりゃそうだけど、それ以外でもネジってヒジリの言うことは大抵聞くでしょ?」
「それに関しては少々家庭の事情というべきか、ネジの癖に近いものがあってな」
「ひ、ヒジリ様!?」
「へーどんなのか聞かせてよ」
「私が日向の家を勘当されているのは以前教えたな?」
「うん」
「私が勘当される前はネジは私の付き人として教育を受けてな、事情は宗家と分家やら色々あるので省略させてもらおう。
で、幼少期をそうやって過ごした結果、私が勘当されて以降も何かに付けて私を宗家に戻そうとしたり、付き人めいた事を色々とやっているのだ
私としてはその忠誠心めいた物の方向性を、妹達にも向けてもらいたいんだがな」
「ヒナタ様かハナビ様が貴女を超えられればそうしますよ」
「と、この通りだ」
「ふーん、ますますヒジリがお嬢様だって分かったよ」
「だから、お嬢様というのは語弊が……む、そろそろリーの方も終わりそうだな」
「せめて、そういうのはリーの方を向いて言ってもらえる?真後ろの光景をさも普通に言い当てられると、白眼を知ってても割と怖いから」
「む、善処しよう」
私の眼は普通の白眼より燃費がいいのか、ほぼ常に能力を使っていられるのでつい普通の視界というのを忘れてしまうのだ。今後はもう少し使用を控えた方がいいのかもしれんな。




「ありがとうございました!!」
「うむ、次は誰だ?」
「それじゃあ、次は俺が」
ネジはリーと交代してガイ先生と相対する。さて、日向の柔拳の正当後継者とも言える技量の持ち主のネジが、一体どこまで通用するか見ものだ。
とはいえ前情報を得ての戦いというのはこういった手合わせに関して、あまり好みではないのだが今回ばかりは諦めるとしよう。
「じゃあさ、ヒジリはネジとガイ先生の戦いはどう見るの?」
「そうだな……ネジは私達の世代においては最も正しく日向の柔拳を極めていると言ってもいい男だ。ガイ先生が高速での移動を行わない限り、恐らくはそれなりに戦えるだろう」
「……最もですか?ヒジリさん、ネジはあなたの方が強いと言っていましたが……」
「確かに、戦えば私の方が強い。だが、私の柔拳はある意味で邪道とも言えるものでな。端的に言えば私の柔拳は人体破壊にのみ特化した物で、ネジの扱う柔拳と違い完全な手抜きか即死かしか選べないのだ。
そういう意味ではネジの柔拳の方が有用ではあるな」
そもそも私が覚えたのが既に完成された親父殿の動きで、そこから発展させるとなると威力を上げて殺傷力を高める方向性に変えるしかないないだろう?
「そうなんだ……ヒジリと手合わせは控えとこ」
「だから君は私をどんな扱いにしたいんだ?」
「そ、それでは今の僕とネジはどちらが強いと「ネジだ」……そ、即答ですか」
「当然だ、あれは俗に言われる天才なのだ。その上であれは才に胡座をかくことなく、一切の努力を怠っていない。
君の努力には敬意を払うがネジも並以上の努力を払い続けている、君はそれを忘れてはならない。そもそも、世に言う天才とは才を努力で磨いた者を言うのだからな。
私は君に才があるとは言ったが、その才は並の才よりも磨かなければ輝かない物だ。ネジに勝ちたくば年単位の努力を払い続け、その才を輝かせたまえよ」
「は、はい……僕が甘かったです」
「ふむ、とはいえ以前同様こうして君にこのような言い方で終わらせるのは問題だろう。なので、君に心が挫けそうな時に心を奮い立たせる言葉を送るとしよう。努力が報われぬと感じた時は心の中で呟きたまえよ」
そこで私は一旦言葉を切って、リーの瞳を見る。
「凡庸であるのならば数をこなせ、才能が無いのなら自信をつけろ、それが天才に勝利するたった一つの道だ」
「はい、ありがとうございます!!」
リーは元気良く返事をすると、黙々と腕立て伏せを始めた。思い立ったら吉日、そういう態度は中々結構だぞ。
「ふーん、ヒジリって天才側に立って努力なんて無駄、とか言うタイプかと思ってたから意外」
「私はどちらかと言えば才ある人間ではないからな」
「それ、ネジが聞いたら泣くよ?」
「おいおい、私は単純にこの眼があるから人の動きが読めるのであって、それは私の力ではなくこの眼の性能だ。
仮にこの眼を君が生まれ持ったとしたら、私と同じ事が出来ただろう……最もこんな眼は誰も欲しがらんだろうがな」
「あのさ、時々そうやって自分の眼の事を嫌がってるけど、それって何かに理由があるの?私には便利な物だなって思うんだけど」
「そうだな……ネジはまだまだ終わりそうにないので、その間少し昔話をしてやろう」
「昔話?」
「ああ、つまらん話だがな」
















 
 

 
後書き
12話の後に別の誰かから見たヒジリの話を書こうと思うのですが、誰から視点がいいでしょうか?
ご意見頂ければ幸いです 
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