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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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ライト・シャドー:決勝戦

ライトSaibo
次の転送を経て瞼を開けると、何処までも一直線に伸びる高架道と、その先で今まさに沈まんとしてる血の色の夕日が眼に飛び込んだ。
<大陸間高速道>ステージと呼ばれるそこは、中央を東西に貫く幅百メートルのハイウェイから降りることが出来ない。事実上、ただ長いだけのステージだ。
しかし、路上には無数の乗用車や輸送車、墜落したヘリなどが遺棄され、また、あちこちで舗装面が斜めに飛び出しているので端から端までは見通せない。
ライトはさっと後ろを振り向き、自分がマップのほぼ東端の方にいることを確認した。
つまり、敵たるシャドーは西に伸びる高架道の、少なくとも五百メートルは放れた何処かに出現しているはずだ。
<……大丈夫、ライト?>
ロードがライトを心配し、話しかけてくる。ライトは無言で頷くと、周囲を見渡し、すぐに走り出す。目指したのは右斜めにある大型の観光バス。
半開きとなった後部ドアから内部へ駆け込み、二階席の階段を登る。
中央の床面に身体を投げ出すように腹這いとなり、肩から外したバレットM82の二脚を展開。バス前面のパノラマウインドウに銃口を向けて設置し、伏射姿勢を取ると、スコープ前後のフリップアップ・カバーを跳ね上げ、覗き込む。
<ライト……あいつが誰だか解るの?>
突然、ロードが言う。あいつとはつまり、一回戦後に会ったあのプレイヤーの事だろう。
「……あいつはラフィン・コフィンの生き残りだ。ずっと、黒鉄宮に幽閉されていた」
ライトはそう言うと、ロードが黙る。
いや、黙らざるを得なかったのだ。ロードは本当の意味でのライトの人格。融合してたダーク程ではないが、ライトの心境は解っているつもりだった。
だが、今の質問で、完璧に解ってしまった。
『ライトが元ラフィン・コフィンのメンバー』であることを、である。
本来ならば、ライト自身も黒鉄宮に幽閉されることはおろか、攻略組によって殺されるのを拒否出来ない身だからだ。
ロード達副人格に黙っていたのは、ライトがライト自身である彼らを、傷付けたくない、そう思っての事だと、ロードは知った。
事実、ライトの顔には何か焦りを感じられる。その心の中の心境も、焦っているような感じもするのだ。
何かを失った悲しみ、そして、あのプレイヤーを倒さなくてはならない焦り、怒り、憎しみ。
<ライト………>
ロードは心配そうに言うと、、ライトは指を立てた。ロードへの合図だ。
ロードは黙ってライトの目を通してスコープを覗くと、シャドーが見えた。
だが、彼は片手ずつ、武器を持ち、辺りを見回している。
ーーーーーーいつでもかわせる。そういう意味で取って良いと言うことか!!
ライトは思考を脳裏で弾かせると同時に、スコープの照準線をぴたりとシャドーの頭に重ねていた。
「ーーーーーー終わりだ」
ライトはそう言うと、トリガーを、引いた。



























シャドーSaibo
シャドーはMini Hecate 338とサブアーム、Bizonを持って西端から東端まで歩いてきた。
「……静かな物だ。まるで、あの日を思い出す………」
シャドーは辺りを見回しながら言う。
今更当たり前だが、今はPvP戦の最中。気を抜いたら幾ら俺でも負ける。
ーーーーーーその時だった。
近くの観光バスからガラスの割れる音がする。
「ーーーーーーッ!!」
シャドーに放たれた弾丸は、夕焼けの深紅を一直線に貫いて飛びーーーーーーシャドーの肩を抉った。
「イッーーーーーー!」
勿論、ペインアブソーバは低い。
しかし、射撃した本人の痛みが、弾丸を通じて、シャドーに伝わってくる。
すると、体勢を建て直す暇もなく二発目がすぐに飛んでくる。
それはすぐに転がり、回避する。
「……流石、と言った所か」
シャドーは小さく呟くと、すぐにその観光バスに接近する。
そこに、三発、四発目の弾丸が飛来。
シャドーは慌てることなくBizonの連射で弾丸を弾き飛ばす。
確か、バレットM82は弾丸装填数は10。先程ので残り6。
つまり、シャドーは全て避ける事が可能と言うことを意味していた。
残り二十メートル付近になると、流石のライトロードも狙撃場所を変える方向に考えを改め、ガラスの割れた所から飛び降り、牽制で二発の弾丸を足元に撃つ。
「えげつないことするな」
戦略的に間違ってはいない。事実、ライトロードを見失った。
シャドーはその場に立ち尽くすと、銃声音が後ろからなる。
後ろを向くと、そこにライトロードが現れ、銃を此方に向けていた。
「がっ!!」
シャドーは避ける暇なく弾丸をくらい、地に倒れる。しかし、すぐに立ち上がると、ライトロード目掛け走り出す。
ライトロードは再び足元に撃とうとするが、それよりも早く、銃にMini Hecate 338の銃口を向け、放っていた。
弾丸はライトロードの銃を吹き飛ばし、シャドーはBizonの銃口をライトロードの頭に構えた。















ライトSaibo
「……何故、止めを刺さない?」
ライトは目の前にいるシャドーに言う。シャドーは銃口を頭に構えた状態で、何もしていない。すると、シャドーは口を開く。
「………お前は、何のためにこの大会に出場している」
ライトはそれを聞くと、少しシャドーを見て、再び目を足元に向けた。
「俺は………明日の本選に出るために………」
「それだけじゃないはずだ」
すぐにシャドーが口を開き、ライトに言う。
「弾丸を通して、お前の悲しみ、怒り、憎しみが伝わってきた。……何か、思っていることがあるのだろう?」
シャドーはそう言うと、銃を降ろした。
「だがな、たかがVRゲームの、たかがワンマッチ。その思いを抱えて挑むのは相手に取っては失礼過ぎる」
「ならあんたは何で強く生きられる!?」
不意に、ライトの感情が爆発した。
「俺は昔に関係無い人を殺した!!この手を血で染めたんだ!!それだけじゃない、俺は、俺はーーーーーー」
止まらなかった。止められなかった。
ライトが抱えている闇ーーーーーーSAOの中での出来事は、想像を越えるほどに抱え込んでしまっていた。
茅場と共にSAOを作り、無関係な人達を巻き込み、助けられる命を自分の手で殺した。
それだけではない。アスナや残りの生還者達は須郷によりSAOサーバーからALOに囚われの身となったのだって、元を正せばライトのせいにだってなる。
そんなことで自分を責めて、勝手に、人の見られない所で死のうと思った時期もあった。
それらの感情が今、爆発したのだった。
すると、シャドーはライトの腹を蹴り飛ばした。
「かは………っ!!」
ライトは転がり、地に倒れる。
「なに………を………」
「君が何を思っているのかは俺も知らないし、知りたくもない」
シャドーはそう言うと、銃口をライトに向ける。
「君があの世界での生還者ならーーーーーーー君は、その人達の分まで生きるのが筋なんじゃ無いのか?最も、それで全ての罪が償われる物では無いけど」
シャドーはそう言うと、銃口を向けたままライトに近付く。
「………君はここから、どう戦うかな?見せてくれよ、真の強者と言うものを。ーーーーーーー雷狼と呼ばれた勇者よ」
すると、ライトは驚く。
ーーーーーーーこいつも、SAO生還者!?
だがしかし、敵意は無いように見える。何故だろう、フードを被っていてよくわからないが、雰囲気が誰かに似ている。誰かを試すような……そんな感じなものを。
「………後悔すんなよ」
ライトはそう言うと、バレットM82の銃口で銃口を叩き弾くと、シャドーの腕が動く前にFN F2000を頭に構えた。
「………フハハハハハハッ!!」
すると、シャドーは笑い始める。
「それでこそ雷狼!!それでこそ雷獣!!………その闘志、その熱意、その気持ち。二度と忘れるなよ」
すると、シャドーはライトのFN F2000の銃口を持ち、下げると、こう言った。
「再び会える事を楽しみにしている。明日の本選では俺に会うまで死ぬ事だけはするなよ」
そして、ライトに背を向けると、リザイン!と大声で叫んだ。
試合時間、十八分五十二秒。
第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントDブロック決勝戦、終了。 
 

 
後書き
ようやく予選が終わり、第五巻の終了です!!
ライト「ここまで長かったな………主に作者のスケジュールミスで」
うっ!
ダーク「長かったな……作者の設定変更やらで」
ううっ!
ライト&ダーク「長かったな………主に作者がバカのせいで」
………(返事がない、唯の屍の様だ
ライト「さて、次回からはいよいよ激化するファントム・バレット第六巻!!」
ダーク「いよいよあの人たちも登場するぜ!!」
ライト&ダーク「次回、桐ヶ谷家からのスタート。お楽しみに!!」 
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